公開日 2026.08.24更新日 2026.08.24

介護事業所の経理代行とは?区分経理への対応・料金相場・選び方を解説

「経理担当者が突然辞めてしまい、月次処理が止まっている」

「事業所ごとの区分経理が複雑で、税理士にどこまで任せられるか分からない」

——介護事業所の経営者や施設長からは、こうした経理に関する課題が頻繁に寄せられます。

介護事業の経理は、一般的な中小企業の経理とは異なり、サービス種類ごとの区分経理や介護報酬の入金管理など、介護特有のルールへの対応が求められます。

本記事では、以下の内容を解説します。

  • 介護事業所の経理業務が抱える課題
  • 介護事業の経理で押さえるべき特有ルール
  • 経理代行に依頼できる業務
  • 経理代行を活用する3つのメリット
  • 介護事業所向け経理代行の料金相場
  • 経理代行の選び方・注意点
  • 経理代行を導入する流れ

介護事業所の経理業務が抱える課題

介護事業所の経理には、一般的な企業の経理にはない特有の負担が存在します。

代表的な課題は次のとおりです。

  • 介護会計特有の「区分経理」の負担
  • 財務諸表の公表義務化(2024年度〜)への対応
  • 人手不足で経営者・管理者が経理を兼務しがち

介護会計特有の「区分経理」の負担

介護事業では、事業所やサービスの種類ごとに収支を区分して管理する「区分経理」が求められます。

訪問介護と通所介護を併設している場合など、同じ法人内でもサービスごとに会計処理を分けて記帳する必要があり、一般的な経理よりも仕訳や集計の手間が増える傾向にあります。

会計ソフトの部門設定や勘定科目の使い分けが煩雑になりやすく、担当者の経験や知識によって処理の精度にばらつきが出やすい点にも注意が必要です。

区分経理があいまいなままだと、サービスごとの収支実態が見えにくくなり、経営判断や行政への報告にも影響しかねません。

財務諸表の公表義務化(2024年度〜)への対応

2024年度の会計年度から、すべての介護サービス事業者を対象に財務諸表の公表が義務化されています。

区分経理にもとづいた様式に沿って正確な数値を報告する必要があり、日々の記帳があいまいなままでは対応が難しくなります。

対象となるのは貸借対照表や事業活動計算書などの財務諸表で、サービスごとの収支を反映した内容が求められます。

公表内容に誤りがあると、行政への提出書類の修正対応や、外部からの信頼低下につながる可能性もあるため、日頃からの正確な記帳がこれまで以上に重要になっています。

人手不足で経営者・管理者が経理を兼務しがち

中小規模の介護事業所では、経理専任の担当者を置く余裕がなく、経営者や施設長が本来の業務と経理を兼務しているケースが少なくありません。

日々のサービス提供や職員のマネジメントに追われる中での経理業務は、確認漏れやミスにつながりやすいという課題があります。

特定の担当者だけが経理の全体像を把握している状態が続くと、その担当者が体調を崩したり退職したりした際に、業務が滞ってしまうリスクも高まります。

経理業務が属人化しないよう、早い段階で外部への相談や役割分担を検討しておくことが望ましいといえます。

介護事業の経理で押さえるべき特有ルール

介護事業の経理を正しく行うには、一般的な簿記の知識だけでなく、介護保険制度にもとづく特有のルールを理解しておく必要があります。

代表的なポイントは次のとおりです。

  • 指定基準による会計の区分(事業所・サービス種類別)
  • 共通経費の按分処理
  • 介護報酬の入金サイクル(約2ヶ月遅れ)と未収金管理

指定基準による会計の区分(事業所・サービス種類別)

介護保険法の指定基準では、介護事業の会計を他の事業と明確に区分して経理することが求められています。

同一法人が複数のサービスを運営している場合も、事業所やサービス種類ごとに収支を把握できる体制が必要です。

訪問介護・通所介護・居宅介護支援など、提供するサービスの種類が増えるほど、区分の粒度も細かくなる傾向にあります。

会計ソフトの勘定科目や部門コードの設定段階で区分の考え方を整理しておかないと、後から集計方法を見直す手間が発生しやすくなる点にも注意が必要です。

共通経費の按分処理

家賃や本部人件費など、複数の事業所・サービスにまたがって発生する共通経費は、合理的な基準にもとづいて各事業所・サービスへ按分する必要があります。

按分基準があいまいなままだと、事業所別の収支実態を正しく把握できなくなる点に注意が必要です。

按分の基準としては、床面積や利用者数、職員の勤務時間割合などが用いられることが一般的ですが、事業所の実態に合わせて合理的な基準を選び、継続的に同じ考え方で運用することが求められます。

基準を都度変更すると、年度をまたいだ比較がしづらくなる点にも留意が必要です。

介護報酬の入金サイクル(約2ヶ月遅れ)と未収金管理

介護報酬はいつ入金されるのか、疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

介護報酬は、国民健康保険団体連合会(国保連)へ請求してから実際に入金されるまで、約2ヶ月のタイムラグが生じます。

このため、請求月と入金月のずれによって発生する未収金を正しく計上し、消込を行う資金繰り管理が欠かせません。

入金サイクルを前提とした資金計画を立てておくことが、資金繰りの悪化を防ぐポイントになります。

開設して間もない事業所や、利用者数が急増している事業所では、このタイムラグを見落として資金不足に陥るケースもあるため、月次の資金繰り表などで入金予定額を把握しておくことが有効です。

介護事業所が経理代行に依頼できる業務

介護事業の経理をアウトソーシングする場合、依頼できる業務範囲は代行会社によって異なりますが、一般的には以下のような業務を依頼できます。

  • 記帳・仕訳、月次処理(区分経理対応)
  • 請求・入金管理(国保連請求データとの突合)
  • 支払業務・経費精算
  • 決算補助・税理士連携

記帳・仕訳、月次処理(区分経理対応)

事業所・サービス別の区分経理を踏まえた仕訳の起票や、月次試算表・部門別損益計算書の作成を依頼できます。

区分経理に対応した経理代行会社であれば、サービス種類ごとの収支を整理した資料を、行政への提出資料や経営判断にそのまま活用しやすくなります。

日々の証憑整理から仕訳入力、月次での試算表作成までを一括して任せられるため、月末月初に集中しがちな業務負荷を平準化できる点もメリットです。

クラウド会計ソフトと連携している代行会社であれば、リアルタイムに近い形で数値を確認できる場合もあります。

請求・入金管理(国保連請求データとの突合)

国保連への介護報酬請求データと実際の入金額を突合する作業や、利用者負担分(自己負担分)の入金管理も、経理代行に依頼できる業務のひとつです。

請求と入金のズレを日常的にチェックする体制を外部に任せることで、未収金の把握漏れを防ぎやすくなります。

返戻(請求内容の不備による差し戻し)が発生した場合の内容確認や、再請求に向けた社内での情報共有をサポートしてもらえるケースもあります。

入金管理を仕組み化しておくことで、資金繰りの見通しも立てやすくなります。

支払業務・経費精算

取引先への支払データの作成や、職員が立て替えた経費精算のチェックなど、日常的に発生する支払関連業務も代行の対象です。

AIを活用した一次チェックの自動化など、業務効率化の観点から支援を受けられる場合もあります。

振込データの作成や支払期日の管理をあわせて依頼できれば、支払い漏れや二重払いといったミスを防ぎやすくなります。

職員数の多い事業所では経費精算の申請・承認フローが煩雑になりがちですが、ルールを整理したうえで代行に組み込むことで、経理担当者・職員双方の負担軽減につながります。

決算補助・税理士連携

決算に必要な資料の整備や、顧問税理士とのやり取りの代行を依頼できるケースもあります。

日々の記帳が整っていることで決算業務のスピードアップにもつながり、決算・報告業務にかかる負担を軽減できます。

試算表や証憑を月次で整理しておくことで、決算期に慌てて資料を集める必要がなくなり、税理士とのやり取りもスムーズになります。

介護報酬改定など制度変更があった際の対応についても、経理代行会社と顧問税理士が連携して確認できる体制の構築が推奨されます。

介護事業所が経理代行を活用する3つのメリット

経理代行を活用することで、介護事業所には主に次の3つのメリットが期待できます。

  • 経営者・管理者が本業(介護サービス)に集中できる
  • 介護会計の専門知識を採用せずに確保できる
  • 財務データの精度向上で加算取得・融資にも有利

1.経営者・管理者が本業(介護サービス)に集中できる

経理業務を外部に任せることで、経営者や施設長は経理事務から解放され、サービス品質の向上や職員のマネジメントなど、本来注力すべき業務に時間を使いやすくなります。

日々の記帳や請求確認に追われていた時間を、利用者対応やスタッフ教育に充てられるようになった、という声も少なくありません。

2.介護会計の専門知識を採用せずに確保できる

区分経理をはじめとする介護会計の知識を持つ人材の採用・育成は容易ではありません。

経理代行であれば、専門知識を持つチームに業務を任せられるうえ、担当者の退職によって経理が止まってしまうリスクも避けやすくなります。

採用市場で介護会計の経験者を見つけるのが難しい地域でも、外部のチームを活用することで一定の品質を確保しやすくなる点もメリットです。

3.財務データの精度向上で加算取得・融資にも有利

部門別損益を正確に把握できる体制が整うと、加算取得の要件確認や実績報告、金融機関への提出資料の基礎データとしても活用しやすくなります。

数値の裏付けがあることで、金融機関や行政への説明もスムーズになり、経営判断のスピードアップにもつながります。

介護事業所向け経理代行の料金相場

介護事業所向け経理代行の料金は、依頼する業務範囲や事業所数、仕訳件数によって変動します。

一般的な目安は以下のとおりです。

サービス範囲 月額料金の目安 主な変動要因
記帳代行のみ 月2万円前後〜 仕訳件数
月次処理を含む経理代行 月5万〜15万円程度 事業所数・区分経理の複雑さ
決算関連業務 別途10万円前後 決算書類の種類・税理士連携の有無

上記はあくまで目安であり、区分経理の複雑さや事業所数によって金額は変動します。

自社の場合の料金目安は、料金ページや見積もりであわせてご確認ください。

契約前に複数社から見積もりを取り、対応範囲と料金のバランスを比較検討することをおすすめします。

介護事業所向け経理代行の選び方・注意点

経理代行会社を選ぶ際は、料金の安さだけでなく、以下のポイントを確認しておくことが失敗を防ぐポイントです。

  • 介護会計・区分経理の対応実績があるか
  • 介護ソフト・クラウド会計への対応
  • 対応範囲と料金体系の明確さ

介護会計・区分経理の対応実績があるか

介護会計や区分経理への対応経験がない代行会社に依頼すると、後から資料を作り直すことになりかねません。

契約前に、介護事業所への支援実績や区分経理への理解度を確認しておくことが重要です。

訪問介護や通所介護、グループホームなど、自社と近いサービス形態での支援実績があるかを確認すると、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。

実地指導や監査の経験がある担当者が在籍しているかどうかも、確認しておきたいポイントのひとつです。

介護ソフト・クラウド会計への対応

利用中の介護ソフトや会計ソフトと連携できるか、クラウド会計でリアルタイムに数値を共有できるかも確認しておきたいポイントです。

介護ソフトから会計ソフトへのデータ連携がスムーズであれば、二重入力の手間を減らせるうえ、日々の数値をタイムリーに把握しやすくなります。

反対に、対応ソフトが限られている代行会社に依頼すると、既存の運用を変更する必要が生じる場合もあるため、事前の確認が欠かせません。

対応範囲と料金体系の明確さ

基本料金にどこまでの業務が含まれるのか、決算対応や年末調整などがスポット費用になるのかを、見積もり段階で明確にしておきましょう。

対応範囲があいまいなまま契約すると、想定外の追加費用が発生することがあります。

仕訳件数や事業所数が増えた場合の料金改定ルールについても、契約前に確認しておくと、事業拡大後のトラブルを防ぎやすくなります。

見積もり時には、複数のシナリオ(現状維持・事業所数増加など)で料金を試算してもらうのもひとつの方法です。

介護事業所が経理代行を導入する流れ

経理代行の導入は、一般的に次のようなステップで進みます。

それぞれの段階で何が行われるのかを把握しておくと、スムーズに導入を進めやすくなります。

  1. 問い合わせ:経理代行会社に問い合わせを行い、依頼したい業務の概要や困りごとを伝えます。
  2. 現状ヒアリング:事業所数や仕訳件数、利用中の会計ソフト・介護ソフト、現在の経理体制について詳しくヒアリングを受けます。
  3. 業務設計・見積もり:ヒアリング内容をもとに、依頼する業務範囲や進め方が設計され、具体的な見積もりが提示されます。
  4. 引き継ぎ:過去の帳簿データや運用ルール、使用しているソフトのアカウント情報などを共有し、業務の引き継ぎを行います。
  5. 運用開始:引き継ぎが完了すると、実際の運用がスタートします。運用開始後も、定期的な報告や相談の機会を設けている代行会社もあります。

導入までの期間や進め方は代行会社によって異なるため、問い合わせの際に具体的なスケジュールを確認しておくとスムーズです。

引き継ぎ期間中は、これまでの資料や運用ルールを共有する必要があるため、既存の担当者がいる場合は、引き継ぎに必要な時間もあらかじめ見込んでおく必要があります。

特に区分経理を導入している事業所では、過去の会計データをどこまで遡って引き継ぐかによって、準備にかかる期間も変わってくる点に留意しておきましょう。

介護・医療業界の経理に対応するCASTER BIZ accounting

CASTER BIZ accountingでは、2026年4月より、医療法人・介護事業者向けの専用プラン「CASTER BIZ accounting for 医療法人」の提供を開始しました。

診療報酬・介護報酬の入金管理や行政への提出書類対応など、医療・介護業界特有の経理業務に、実務経験を持つ専門チームがオンラインで対応します。

医療法人・介護事業所の経理は、事務長など特定の担当者に業務が集中しやすく、「担当者にしか分からない」「担当者が辞めたら経理が止まる」といった属人化・ブラックボックス化が起きやすいという課題があります。

本プランでは、医療法人会計基準にもとづく処理や、患者本人と振込名義人が異なるケースの入金突合など、専門性の高い業務にも対応しています。

料金は月額242,000円(税込)〜(契約時間の目安は月30時間〜、契約期間は6ヶ月または12ヶ月)で、支援内容に応じて変動します。

介護事業所の一般的な記帳代行・経理代行に加えて、より専門的な支援体制を求める場合の選択肢として検討できます。

介護事業所の経理は代行を活用して、本業に集中できる体制を作ろう

介護事業所の経理には、区分経理や介護報酬の入金サイクルなど、一般的な経理とは異なる特有のルールへの対応が求められます。

人手不足の中で経営者や管理者が経理を兼務している事業所も多く、業務の属人化によるリスクを抱えているケースも少なくありません。

経理代行を活用すれば、専門知識を持つチームに区分経理をはじめとする業務を任せられるうえ、担当者の退職による業務停止リスクも避けやすくなります。

料金相場や対応実績、介護ソフトとの連携可否などを比較しながら、自社の状況に合った経理代行会社を検討してみてはいかがでしょうか。

CASTER BIZ accountingでは、介護・医療業界の経理業務にも対応しています。