公開日 2026.08.24更新日 2026.08.24

病院の経理代行とは?依頼できる業務・料金相場・失敗しない選び方を解説

「経理を任せていた事務長が急に退職してしまったら、業務が回らなくなるかもしれない」 「診療報酬の入金と医事会計システムのデータがなかなか合わず、月次の締めに時間がかかっている」

病院やクリニックの経営に携わる方の中には、こうした悩みを抱えている方も少なくないでしょう。

医療機関の経理業務は、一般企業とは異なる会計基準や独特の入金サイクルがあり、限られた人員では対応しきれずに属人化してしまうケースが目立ちます。

本記事では、病院の経理代行について、以下の内容を解説します。

  • 病院・クリニックの経理業務が抱える課題
  • 経理代行に依頼できる業務範囲
  • 経理代行を活用する4つのメリット
  • 料金相場
  • 失敗しない選び方のポイント
  • 導入までの流れ

自院に合った経理代行を検討する際の判断材料としてお役立てください。

病院・クリニックの経理業務が抱える課題

病院やクリニックの経理には、一般企業とは異なる次のような課題が共通して見られます。

  • 経理人材の採用難と属人化
  • 病院会計特有の複雑さ(病院会計準則・医事会計との連携)
  • 診療報酬の入金サイクルと未収金管理の負担

それぞれの課題について、詳しく見ていきましょう。

経理人材の採用難と属人化

医療業界は医師・看護師をはじめとする専門職の比率が高い労働集約型の業界であり、人件費比率が高くなりやすい一方で、事務部門の採用や定着は思うように進まないのが実情です。

独立行政法人福祉医療機構(WAM)が公表した「2025年度 病院の人材確保に関する調査について」(2025年10月15日)によると、全国の病院の74.7%が「職員が不足している」と回答しており、不足している職種として事務職を挙げた病院も約3割にのぼります。

また、退職理由としては「他の医療機関への転職」が75.6%を占めており、医療事務の人手不足と人材の流動性の高さがうかがえます。

こうした背景から、経理業務が事務長や特定の担当者一人に集中しやすく、属人化した経理が招くリスクとして、その担当者が退職・休職した途端に業務が滞ってしまうケースが後を絶ちません。

経理担当者が一人しかいないことのリスクは、多くの病院にとって他人事ではないといえるでしょう。

病院会計特有の複雑さ(病院会計準則・医事会計との連携)

病院の経理は、一般企業の会計とは前提となるルールそのものが異なります。

医療法人には「医療法人会計基準」、病院には「病院会計準則」という専門の会計ルールが定められており、一般企業のような製造原価の概念がなく、材料費・給与費・委託費・設備関係費といった医業費用特有の科目区分で処理を行う必要があります。

さらに、レセプトコンピュータ(レセコン)などの医事会計システムのデータと会計帳簿の数字を突合させる作業も欠かせません。

一般企業の経理経験だけでは対応が難しい、病院会計ならではの特徴といえるでしょう。

診療報酬の入金サイクルと未収金管理の負担

病院の収益の柱となる診療報酬は、窓口での患者負担分を除き、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会を経由して入金されるため、診療から実際の入金までに約2ヶ月ほどのタイムラグが生じます。

そのため月次の試算表を作成する時点では診療報酬がまだ入金されておらず、未収金として計上・管理しなければなりません。

診療報酬の未収金管理を正確に行える体制がなければ、消込の手間が増えるだけでなく、資金繰りの見通しを誤るリスクも高まります。

病院の経理代行とは?依頼できる業務範囲

経理代行とはどのようなサービスかを簡単に説明すると、記帳や仕訳、月次処理、決算補助といった経理業務の一部または全部を、外部の専門会社に委託するサービスのことです。

人材採用による解決が難しい病院やクリニックにとって、病院の経理をアウトソーシングすることは、必要な業務量に応じて専門知識を持つ人材を確保できる現実的な選択肢となっています。

医療法人の経理代行として依頼できる業務範囲は事業者によって異なりますが、代表的な業務は次のとおりです。

記帳・仕訳、月次処理

通帳の入出金明細、請求書、給与データなどをもとにした仕訳の起票から、月次試算表の作成まで、日々発生する記帳代行業務を依頼できます。

材料費や給与費、委託費といった病院会計特有の科目区分にも対応してもらえるため、仕訳のルールを一から社内で整備する手間を省けます。

日常的な入力業務を任せることで、月次決算の締め作業をスピーディに進められるようになります。

経費精算・支払業務

職員から提出される経費精算の内容チェックや、取引先への支払データの作成・振込準備など、経理担当者の工数がかかりやすい業務も代行の対象です。

医薬品や医療消耗品の仕入れ先への支払いなど、件数が多く煩雑になりやすい業務も任せられるため、二重払いや処理漏れといったヒューマンエラーの防止にもつながります。

請求・入金管理(窓口収入・診療報酬の突合)

窓口収入や診療報酬について、医事会計システム側のデータと会計帳簿の数字を突合し、未収金の管理・請求業務を行います。

診療科ごとの入金状況を一覧化し、入金の遅れや差異が生じている箇所を早期に把握できるようにする点も、経理代行に期待される役割です。

病院特有の入金管理は専門知識が求められる領域であり、経理代行会社のノウハウが特に活きる部分といえます。

決算補助・税理士/会計士との連携

決算に必要な資料の準備や、顧問税理士・公認会計士とのやり取りの窓口を代行することで、決算業務の負担軽減につながります。

医療法人であれば、都道府県への提出が必要な事業報告書など、決算関連書類の準備をサポートしてもらえる場合もあります。

日頃の記帳が整っていれば決算業務そのものもスムーズに進みやすく、外部リソースを上手に活用することで決算期の負担を大きく減らせます。

病院が経理代行を活用する4つのメリット

病院が経理代行を活用するメリットは、単なる作業の効率化だけではありません。

経営面・リスク管理の観点からも、次のようなメリットが期待できます。

  • 採用・人件費コストの削減
  • 退職・休職による業務停止リスクの解消
  • 専門知識による業務品質の安定
  • 院長・事務長が本来業務に集中できる

それぞれ詳しく解説します。

1.採用・人件費コストの削減

経理担当者を1名新たに採用・育成しようとすると、求人広告費や紹介手数料などの採用コストに加え、教育期間中の人件費や指導する側の負担も発生します。

一方、経理代行であれば、記帳のみ、月次処理まで、といった必要な業務量に応じて依頼範囲を選べるため、常勤スタッフを1人雇用するよりもトータルコストを抑えられるケースが少なくありません。

繁忙期・閑散期で業務量に波がある場合も、依頼内容を柔軟に見直せる点はメリットといえます。

2.退職・休職による業務停止リスクの解消

社内に経理担当者が1人しかいない体制では、その担当者が急に退職・休職してしまうと、引き継ぎが間に合わないまま経理業務そのものが止まってしまう恐れがあります。

経理代行サービスの多くはチーム体制で対応するため、特定の個人に依存せず、担当者の入れ替わりが発生しても業務を継続しやすい点は、慢性的な人手不足に悩む病院にとって大きな安心材料です。

3.専門知識による業務品質の安定

医療法人会計基準や診療報酬に関する仕訳など、医療機関特有の会計処理に精通した専門スタッフが対応することで、処理品質が安定します。

消費税の非課税売上の扱いやインボイス制度への対応など、複雑化する税務要件や頻繁に発生する制度変更にも対応しやすくなるほか、第三者の目が入ることで、現金管理のブラックボックス化や不正の抑止といった内部統制の強化にもつながります。

4.院長・事務長が本来業務に集中できる

日々の経理事務から解放されることで、院長や事務長は、診療や経営改善、職員のマネジメント、地域の医療・介護機関との連携強化など、医療機関としての本来の業務により多くの時間を割けるようになります。

細かな入力作業にかける時間を減らしつつ、経営判断に必要な数値はきちんと受け取れる体制を整えられる点も魅力です。

病院の経理代行の料金相場

病院の経理代行にかかる費用は、依頼する業務範囲やボリュームによって大きく変動します。

料金相場の目安は、次のとおりです。

依頼内容 料金相場の目安
記帳代行のみ 月2万円前後〜
月次処理を含む経理代行 月5万円〜20万円程度(業務量による)
決算関連業務 別途10万円前後

料金体系は、依頼できる作業量の上限を決めた「月額固定制」と、実際にかかった工数に応じて費用が変動する「従量制」の大きく2種類に分かれます。

経理アウトソーシングの費用相場や記帳代行の料金体系を踏まえたうえで、院内の業務量や繁閑差に合った料金体系のサービスを選ぶことが重要です。

病院向け経理代行の選び方・比較ポイント

経理代行の選び方を誤ると、期待していた効果が得られなかったり、かえって業務の手間が増えてしまったりすることもあります。

経理代行会社を比較する際のポイントや、導入に失敗しがちなケースも踏まえると、契約前に確認しておきたい比較ポイントは次の4点です。

  • 医療機関の経理実績・専門知識があるか
  • 依頼できる業務範囲と医事会計との切り分け
  • クラウド会計対応・セキュリティ体制
  • 税理士・社労士など専門家との連携体制

それぞれのポイントを詳しく解説します。

医療機関の経理実績・専門知識があるか

病院会計準則や医療法人特有の税務ルールへの理解があるか、病院・クリニックへの支援実績が豊富かどうかを確認しましょう。

導入事例や支援先の病床規模、対応してきた医療法人の数などを尋ねてみると、実績の有無を具体的に判断しやすくなります。

一般企業向けと医療機関特化型の違いだけでなく、小規模なクリニック向けの記帳代行と、大規模な病院向けの経理BPOとでは、求められる内部統制の質や業務ボリュームが異なります。

自院の規模に適合した支援実績があるかどうかも確認しましょう。

依頼できる業務範囲と医事会計との切り分け

レセプト請求などの医事業務は対応範囲外としている経理代行会社も多いため、どこからどこまでを任せられるか、医事会計システムとの連携範囲も含めて事前に明確にしておく必要があります。

見積もり時に対応業務を一覧化してもらい、範囲外の業務がないかを書面で確認しておくと、契約後の認識のズレを防ぎやすくなります。

クラウド会計対応・セキュリティ体制

クラウド会計に対応したサービスであれば、経営数値をリアルタイムに近い形で共有でき、意思決定のスピードも上がります。

診療科別・部門別の収支を可視化しやすくなる点も、複数の診療科を抱える病院にとってはメリットです。

患者情報など、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当し得るデータを扱う業務であるため、委託先には厳格な安全管理措置が求められます。

クラウド会計導入時のセキュリティ体制や、プライバシーマーク・ISMSといった認証の有無も確認しておきたいポイントです。

税理士・社労士など専門家との連携体制

顧問税理士と直接やり取りしながら業務を進められる体制かどうか、また給与計算など経理周辺の業務まで含めて専門家とうまく連携しながら任せられるか、税理士法との関係も含めて確認しておくと安心です。

月次でどの程度の頻度・粒度で報告を受けられるかも、導入前にすり合わせておくとよいでしょう。

病院が経理代行を導入する流れ

実際に経理代行サービスを導入する際は、一般的に次のようなステップで進みます。

  1. 問い合わせ:サービス提供会社へ相談・資料請求を行う
  2. 現状ヒアリング・業務整理:現在の経理業務の内容や課題感をヒアリングし、依頼したい業務範囲を整理する
  3. 業務設計・見積もり:ヒアリング内容をもとに、担当チームの体制や料金プランの見積もりが提示される
  4. 引き継ぎ:既存の帳簿や運用ルール、使用中のシステムなどの引き継ぎを行う
  5. 運用開始:合意した業務範囲・体制で運用がスタートする

サービスによって細かい流れは異なりますが、契約前のヒアリングで自院の課題や依頼したい範囲をどれだけ具体的に伝えられるかが、導入後のミスマッチを防ぐポイントになります。

医療法人の経理に対応するCASTER BIZ accounting

医療法人・介護事業者の経理を任せられる専門チームをお探しなら、「CASTER BIZ accounting for 医療法人」もご検討ください。

2026年4月に提供を開始した医療法人・介護事業者向けの専用プランで、医療法人会計基準や、診療報酬・介護報酬特有の入金管理まで対応できる専門チームが、事務長依存になりがちな経理体制を可視化し、担当者が不在になっても止まらない運用体制の構築を支援します。

患者本人と振込名義人が異なるといった、医療機関ならではの複雑な入金突合業務にも対応できる点が特徴です。

実務経験5年以上、採用率1%という選考を突破したスタッフによるチーム対応のため、属人化や退職リスクの解消にもつながります。

また、患者情報を含む機微な個人情報を取り扱う業務であることを踏まえ、プライバシーマークやISMSといったセキュリティ認証を取得したうえで運用されており、安心して任せられる体制が整っています。

料金は月30時間からの契約時間制で、契約期間は6ヶ月または12ヶ月から選択可能です。

新たに経理体制を立ち上げたい病院・クリニックから、既存の経理担当者の退職をきっかけに体制そのものを見直したい医療法人まで、幅広いニーズに対応しています。

医療法人の経理をブラックボックスにしたくない、属人化を解消したいとお考えの事務長・経営者の方は、サービス内容や料金プランもあわせてご確認ください。

病院の経理は代行を活用して、属人化しない体制を作ろう

病院の経理は、病院会計準則という専門的な会計ルールや、診療報酬の入金サイクルによる未収金管理など、一般企業にはない特有の複雑さを抱えています。

加えて、慢性的な人材不足によって特定の担当者に業務が集中しやすく、属人化・ブラックボックス化のリスクとも常に隣り合わせです。

経理代行サービスを活用すれば、採用・育成コストを抑えながら、専門知識を持つチーム体制で経理業務を安定的に運用できます。

担当者の退職によって経理が止まってしまう事態を防ぐためにも、自院の業務範囲や予算に合ったサービスを比較検討し、早めに体制づくりを進めていきましょう。

医療法人特有の経理課題に対応したCASTER BIZ accounting for 医療法人も、体制構築の選択肢の一つとしてぜひご検討ください。