公開日 2025.01.08 更新日 2025.01.21

起業するなら押さえておきたい経理の基本を解説!

起業して会社を運営するうえで、経費精算や入出金の管理などの経理業務は避けては通れません。
経理業務に不慣れな方は「経理業務に必要な知識ってなんだろう?」と、起業当初からつまずくことは避けたいですよね。

 

そこで本記事では、起業に先立って押さえておくべき経理の基礎知識を紹介します。
「経理の知識を身につけて、円滑に会社を運営したい!」とお考えのご担当者様は、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも経理とは

経理とは、企業のお金や日々の取引の流れを記録することです。
売上管理や決算書作成、請求書の発行などが含まれ、その業務領域は多岐にわたります。
また、伝票の整理や会計ソフトへの入力といった、細かい業務も遂行する必要があります。

 

これらを疎かにすると、企業のお金の流れを把握できずに、適正な判断が下せなくなってしまうかもしれません。
したがって、経理業務は企業活動のうえで、重要な役割を担っているのです。

起業後に発生する経理業務

起業後、会社を運営していくなかで必須となる経理業務は、以下の3つに大別できます。

 

【起業後に発生する経理業務】

  • 日次業務
  • 月次業務
  • 年次業務

 

それぞれ詳しく解説するので、起業後の経理業務を滞りなく進めるために参考にしてください。

日次業務

経理の日次業務は、毎日行う必要がある業務です。
業務内容には、入出金管理や経費精算、記帳業務などが該当します。

 

入出金管理では、現金出納帳や預金出納帳を作成し、帳簿での残高と実際の残高に相違がないかといった点を確認します。
さらに請求書と見比べて、取引金額に間違いがないことを確認する作業も必要です。

 

これらの業務は、事務作業が不慣れな方にとっては負担となるかもしれませんが、決算書の作成で必要なデータとなるので、間違いが発生しないよう慎重に行いましょう。

月次業務

月次業務では、主に取引先の入金確認や社会保険料の納付、月次決算書の作成などを行います。
月次業務では、月の前半と後半で遂行する業務が分かれます。

以下の表に、それぞれの業務内容をまとめたので、ご覧ください。

 

月の前半

月の後半

  • 取引先からの入金確認
  • 月次決算書の作成
  • 予算管理
  • 住民税・源泉徴収税の納付

 

※源泉徴収税の納付に関しては、毎月10日までに行う

  • 従業員の給与計算
  • 取引先への支払いや請求書発行
  • 社会保険料の納付

 

上記の表を踏まえると、月次業務には税金の納付も含まれることがおわかりになるはずです。
源泉徴収税の納付は、国税庁によって毎月10日までと期限が設定されているため、滞納してしまうことのないよう早めの対応が必要です。

 

参照元:国税庁 

年次業務

年次業務は、事業年度内に一度行う業務のことで、一年間の集大成ともいえます。

 

年次業務のなかで特に大切なのは、“年次決算”です。
年次決算とは一年に一度、事業実績を集計して決算を行い、財務諸表を作成する業務のことを指します。

 

財務諸表を作成する際は、事業年度末時点での資産状況の確定が必須です。
そのためには、帳簿残高の修正や未払い金の確認など、さまざまな業務を行わなければなりません。
これらの業務が完了したあと、決算整理仕訳に移行し、財務諸表を作成します。

 

起業したばかりで経理担当者の方が在籍していない場合、経営者が本来のコア業務と経理業務を兼任しているケースがあります。
ですので、経理業務によってコア業務がひっ迫されないよう、効率よく進めておくことが大切です。

起業家が知っておくべき経理の基礎知識

ここまでで、起業したあとに実施する経理業務の内容は把握できましたか?

 

続いては、起業家が経理業務に従事する際に押さえておくべき、経理の基礎知識を紹介します。

 

【起業家が知っておくべき経理の基礎知識】

  • 経費にできる支出には制限がある
  • 経費に換算するには証憑が必要となる
  • 税金は自分から申告する
  • 黒字でも倒産するおそれがある

 

これらは、経営業務を遂行する際に非常に大切な項目となります。
経理業務に関して不安があるご担当者様は、ぜひご確認ください。

経費にできる支出には制限がある

経理業務に精通していない方は、「あれもこれも経費で落とせるんじゃないの?」とお考えになるかもしれません。
しかし、以下のように経費として認められないものも存在します。

 

【経費として計上できないもの】

  • 余剰在庫
  • 福利厚生費
  • 健康診断費
  • 休憩中の飲食代
  • 事業と関係のない費用
  • 所得税や住民税などの税金

上記の内容から、経費にできる支出は、“事業を運営するうえで必要な費用のみ”であることがわかります。
そのため、企業の経費と個人で支払う私費はきちんと区別しなければなりません。

 

また税金に関しては、本来の税額よりも少ない額で申告した場合、過少申告加算税といったペナルティが課されます。
そうなると、もともとの税金額よりも多く支払うこととなります。

 

起業後のトラブルを避けるためにも、経費に計上できるものとできないものはきちんと理解しておきましょう。

経費に換算するには証憑が必要となる

経理業務を行う際、“証憑”といわれる資料を保存しておく必要があります。
証憑とは、取引の真実性や正当性を証明する書類のことで、主に請求書や契約書が含まれます。

 

なかでも、特に無くしやすいのがレシートです。
レシートは、お店側に商品やサービスへの代金を支払った商取引の証拠となります。
事業に関連するものを購入した場合はレシートを受け取り、必ず保管しておきましょう。

 

なお、レシートは感熱紙に印刷されているため、強い光に長時間当たったり、水に濡れたりすると文字が消えてしまう可能性があります。
そのため、あらかじめスキャナ保存や、スマートフォンでの撮影を行って、電子保存しておくといった工夫が必要です。

 

レシートがないと適切な会計処理ができなくなるため、日頃から保管する習慣を身につけるようにしてください。

税金は自分から申告する

起業したあとに経理担当者の方がいなかった場合、税金はご自身で申告して納めなければなりません。

 

起業する前、会社に在籍していた方は、経理担当者の方が毎月税金を納めていたのではないでしょうか?
しかし、起業するとご自身の会社の税金は、自ら申告して支払う必要があります。

 

なお、税務申告は非常に複雑であり、専門的な知識も要するため、アウトソーシング会社に依頼するのも一つの方法です。

黒字でも倒産するおそれがある

事業で毎月利益が出ており、常に黒字経営だとしても、油断すれば倒産してしまう可能性があります。
黒字倒産とは、帳簿上では利益が出ているにもかかわらず、手元の決済資金が不足して経営が困難となり、倒産してしまうことです。

 

企業間の取引では、買掛金や売掛金を用いてやり取りすることが多く、帳簿上では売上が計上されても、代金を受け取れるのは数ヶ月後となる場合も珍しくありません。
そのあいだに、仕入代金や借入返済などの支出が続くと資金が不足してしまい、黒字倒産へとつながってしまうのです。

 

黒字倒産を防ぐためには、会計上の利益だけではなく、手元の運転資金の確保を重視した“キャッシュフロー経営”を心がけましょう。
そうすれば、手元の運転資金が潤沢になるため、経営の自由度も格段に上がります。

起業にあたって知っておきたい経理の用語

起業する方が経理業務を遂行するにあたっては、いくつかの用語とそれに関する知識を身につける必要があります。

 

【起業にあたって知っておきたい経理の用語】

  • 複式簿記と仕訳
  • 勘定科目
  • 決算書
  • 会計ソフト

そこでここからは、起業後の経理業務をスムーズに遂行するために知っておきたい、経理に関する用語を紹介します。

複式簿記と仕訳

確定申告の一つである青色申告を行う場合、“複式簿記”による記帳が必要です。

 

複式簿記では、取引における原因と結果という2つの側面から、金銭の流れを捉えて記帳します。
たとえば以下の表のように、資産増加を表す“借方(かりかた)”を左側に、資産減少を表す“貸方(かしかた)”を右側に記載します。

 

複式簿記の記載方法

日付 借方 貸方

適要

令和6年〇月△日 消耗品費:1,200円 現金:1,200円

文房具代

このように複式簿記では、“消耗品費として1,200円使用した(原因)ので、現金が1,200円減少した(結果)”という2つの側面から、お金の流れを記録しなければなりません。

 

このように一つひとつの取引を記帳する作業を、仕訳といいます。

勘定科目

勘定科目は、取引の内容をひと目で把握するために使われる簿記の科目です。
“お金や取引内容の見出し”のことだと捉えると、具体的にイメージできるかもしれません。

 

勘定科目は、主に以下の5つのグループに分けられます。

勘定科目のグループ

資産 企業が所有している経済的資源のこと

▽例

  • 現金
  • 預金
  • 建物
  • 備品
  • 売掛金
負債 企業が所有するマイナスの財産のこと

▽例

  • 社債
  • 買掛金
  • 借入金
  • 支払手形
純資産 資産から負債を差し引いた財産のこと

▽例

  • 資本金
  • 新株予約権
  • 資本余剰金
  • 利益余剰金
収益 取引に対して企業が獲得した、または獲得が確定している収入のこと

▽例

  • 売上
  • 雑収入
  • 受取利息
  • 売上手数料
  • 有価証券売却益
費用 事業活動を行ううえで支払った経費のこと

▽例

  • 給与
  • 仕入
  • 通信費
  • 水道光熱費
  • 広告宣伝費

以上の勘定科目のすみ分けを把握できれば、スムーズに決算書を作成できるでしょう。

 

また、勘定科目は金融機関といった外部の方に見られる可能性があるので、ご自身が設定する際は、簡潔でわかりやすい用語に設定してください。

決算書

決算書は、企業の事業年度ごとの経営状態や財政状態を示す書類のことで、複式簿記を用いて作成されます。

 

代表的な決算書は、以下の5つです。

 

【決算書の主な種類】

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表

 

なかでも貸借対照表は、企業の資産や負債などを数値的に理解するために重要な書類です。
この書類を参照すれば、企業が保有している財産がひと目で把握できます。

 

また、貸借対照表から自己資本比率や流動比率を割り出せば、現在の資金繰りが安全かどうかも確認することが可能です。

会計ソフト

経理業務を一人あるいは少人数で行うことに不安を感じている方は、会計ソフトがおすすめです。

 

会計ソフトには主に、仕訳入力から財務情報の一元管理、企業の財政分析などの機能が搭載されています。
仕訳入力では預金や売上の数字を、取引内容や顧客情報と共にシステムに入力するだけで、適切な勘定科目に分類してくれるため、面倒な入力業務を省略することが可能です。

 

また、銀行やクレジットカードと連携できる機能を活用すれば、日々の取引も自動で更新されます。

 

さらに、会計ソフトにはパソコンにインストールして使うインストール型と、クラウド上にあるソフトを使うクラウド型の2種類があります。
起業したばかりの会社に適しているのは、クラウド型の会計ソフトです。

 

クラウド型の会計ソフトは、インターネットに接続できる環境さえあればどこからでもアクセスできます。
会計ソフトに対応している端末であれば、IDとパスワードを入力するだけでログインできるため、スマートフォンからでも操作が可能です。
出先からでも操作できるので、起業したてで忙しい時期でも、経理業務を効率的に進められます。

 

ただし会計ソフトはあくまでも、経理業務の負担を軽減するためのツールなので、使用に際して最低限の知識が必要となります。
したがって、上記で紹介した基本的な経理の用語だけでも、意味を理解しておくことが重要です。

 

関連記事:クラウド会計ソフトとは?おすすめの会計ソフトを4本紹介

経理業務は自社で行うべき?

ここまで、必要な経理業務や基本的な経理の用語に目を通して、「自分にできるかな……」と不安が拭えないご担当者様もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合、経理業務そのものをアウトソーシングするのも一案です。

 

経理業務を行う本来の理由は、企業の経営状況を把握するためです。
経理の知識に自信がない方が経理業務をそのまま進めてしまうと、経営状況を把握できず、黒字倒産に陥ってしまう可能性があります。

 

ですので、設立直後は本業に集中するためにも、アウトソーシング業者や税理士などの専門家に任せるといった方法も選択肢に入れましょう。

 

経理業務はアウトソーシングすることで、さまざまな恩恵が得られます。
詳しい内容は、次項で紹介します。

 

関連記事:経理の業務委託とは?委託できる業務内容を詳しく紹介!

経理業務をアウトソーシングするメリット

では、経理業務をアウトソーシングすることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?

 

【経理業務をアウトソーシングするメリット】

  • コア業務に集中できる
  • 法改正にも迅速に対応してくれる
  • 専門知識に基づいたサービスが受けられる

 

以下で詳しく紹介するので、順に確認していきましょう。

コア業務に集中できる

経理業務をアウトソーシングすることのメリットとして、まず本来集中すべきコア業務に専念できるという点が挙げられます。

 

起業したてで経理担当者がいない場合、ご自身で経理業務を遂行することとなります。
そうなると、本業に時間を割けず、経営に支障をきたしてしまうかもしれません。

 

しかし、経理業務をアウトソーシングすれば、慣れない作業に時間を割く必要がなくなります。
ほとんどの委託先企業では、請求書発行やレポート作成などすべての業務を委託できます。

 

記帳や経費精算といったノンコア業務を、戦略的に外部に依頼することで、売上や利益を獲得するための業務に集中できるでしょう。

法改正にも迅速に対応してくれる

経理業務を専門とする委託先企業には、経理に関する専門家が多く在籍しています。
経理のプロだからこそ、頻繁に改正される法改正に対しても常にアンテナを張っているので、迅速に対応してくれます。

 

経理業務では、税制改正をはじめとする法改正に、その都度対応しなければなりません。
経理業務に慣れていない方であれば、どうすればよいのかわからず、対応が後手に回る可能性があります。

 

その点、経理業務をアウトソーシングすると、ご自身で法改正に関する対応を行う必要がなくなるほか、業務上の細かいルール変更にも対処してもらえます。

専門知識に基づいたサービスが受けられる

経理業務に関する知識が乏しい状態では、節税対策などを考慮しながら会計処理や税務処理を行うのは困難でしょう。

 

しかし経理業務をアウトソーシングしてプロの手に任せれば、その豊富な知識と経験から、節税対策のアドバイスを受けられる可能性があります。
また、サービスによっては、以下のコンサルティングを受けられます。

 

【委託先企業にアドバイスしてもらえる項目】

  • 経理業務の最適化
  • 法改正に関するアドバイスやシステム対応
  • 現状の課題に合わせた税理士の紹介

 

このように、さまざまなサポートを提供している委託先企業は多く存在するので、ご自身が今後運営していく会社に合ったサービスを選ぶことが大切です。

 

関連記事:経理アウトソーシングの概要やおすすめのサービスを紹介!

起業したてで経理業務に不安がある場合は、アウトソーシングを活用するのがおすすめ!

今回は、起業後に発生する経理業務と、知っておきたい経理の用語を紹介しました。

 

経理業務は日次業務と月次業務、年次業務の3つに分かれており、具体的な内容はそれぞれ異なります。
また、税金の納付といった期限が定められている業務もあるため、遅れが生じないよう早めに進めておくことが大切です。

 

とはいえ本業のほうが忙しく、経理業務に時間を割けないこともあるでしょう。

そのような場合、オンライン経理のCASTER BIZ accountingなら、日次業務の仕訳のほか、時間がかかる経費精算をリモートで対応いたします。
また、クラウド会計ソフトの選定や導入支援などのサポートも行っています。

起業したばかりで経理業務に不安をお抱えのご担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。