新リース会計基準の注記要件を解説!企業に与える影響や対応すべきポイントも紹介

新リース会計基準への対応を進める中で、
「どのような注記事項が必要になるのか」
「現行基準と何が変わるのか」
と不安を感じている経理担当者も多いのではないでしょうか。
新リース会計基準では、これまでオフバランス処理が認められていたオペレーティング・リースも原則オンバランスとなり、開示する注記事項も大きく拡大します。
そのため、従来とは異なるデータ管理や業務フローの整備が必要です。
本記事では、新リース会計基準における注記事項の内容や現行基準との違いを整理するとともに、実務担当者が対応を進めるための具体的な手順やポイントを解説します。
新基準への準備をスムーズに進めるためにも、ぜひ最後までお読みください。
新リース会計基準について
新リース会計基準は、企業のリース取引に関する会計処理を大きく見直す改正です。
まずは改正の背景と、いつ・どの企業に適用されるのかを整理しましょう。
新リース会計基準が導入された背景
新リース会計基準が導入された最大の理由は、国際会計基準(IFRS)との整合性を確保するためです。
これまでの日本基準では、リース取引をファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区分し、オペレーティング・リースはバランスシートに計上しないオフバランス処理が認められていました。
しかし、国際会計基準では原則としてすべてのリースをオンバランス処理(資産・負債として計上)する基準が導入されており、日本基準との乖離が問題視されていました。
処理方法が異なる場合、同じリース契約を結んでいても日本基準と国際会計基準では財務諸表上の見え方が異なってしまいます。
新リース会計基準への改正は、国際的な整合性の確保と、財務情報の透明性向上が主な目的です。
新リース会計基準の適用時期と対象企業
新リース会計基準は、2027年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。
主な対象は、金融商品取引法に基づく上場企業と、会社法で定められた大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)です。
一方、中小企業については現時点で義務化はされていません。
ただし、取引先や金融機関から財務情報の透明性を求められるケースや、将来的に基準が拡大適用される可能性も考えられます。
適用まで一定の準備期間はありますが、リース契約の洗い出しやシステム対応には相応の時間がかかるため、対象企業は早めに動き出すことが重要です。
新リース会計基準で変わる注記事項
新リース会計基準の適用により、注記事項は借手・貸手それぞれで大きく変わります。
本章では、立場ごとに求められる注記の内容と、短期リース・少額リースの取り扱いを整理します。
借手に求められる注記事項の内容
新リース会計基準において、借手は以下の3つの区分で注記事項を開示することが求められます。
| 区分 | 開示する内容 |
|---|---|
| 会計方針に関する情報 |
|
| リース特有の取引に関する情報 |
|
| 当期および翌期以降のリース金額を理解するための情報 |
|
現行基準と比べて開示項目が大幅に増加するため、必要なデータを事前に整理しておくことが重要です。
貸手に求められる注記事項の内容
新リース会計基準において、貸手は以下の2つの区分で注記事項を開示することが求められます。
- リース特有の取引に関する情報
- 当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報
まず、リース特有の取引に関する情報では、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースのそれぞれについて、リース債権の残高やリース資産の帳簿価額などを説明する情報を記載します。
リースの金額を理解するための情報では、当期のリース収益の内訳と、翌期以降に受け取る見込みのリース料を残存期間別に示した情報(満期分析)を開示します。
貸手側も借手と同様に、開示情報の範囲が広がります。
リース契約ごとのデータを正確に管理できる体制を整えておくことが、スムーズな注記対応につながります。
短期リース・少額リースの注記
短期リースと少額リースでは、注記の取り扱いが異なります。
それぞれの対応方針を事前に把握しておきましょう。
| 区分 | 対応 |
|---|---|
| 短期リース | 簡便処理を適用したもの(リース期間が12ヶ月以内)については、年間費用発生額を注記 |
| 少額リース | 簡便処理を適用した場合、注記は不要 |
短期リースで注意すべきことは、子会社からのデータ収集も必要になる点です。
グループ全体で情報の取得方法やフォーマットを事前に統一し、データ管理方法を整えておくことが求められます。
また、少額リース(原資産の価値が低いリース)に簡便処理を適用した場合の注記は不要です。
ただし、オンバランス処理へ切り替わる可能性のある契約は、管理対象として別途把握しておく必要があります。
新リース会計基準による注記対応の手順
注記対応を確実に進めるには、正しい順序で準備を進めることが重要です。
本章では、契約の洗い出しからデータ収集、システム整備まで、実務で取り組むべき手順を解説します。
社内のリース契約を洗い出す
注記対応で最初に行なうべきことは、社内に存在するリース契約を把握することです。
新リース会計基準では、従来オフバランスだったオペレーティング・リースも含めてオンバランス処理が原則となります。
よって、これまで注記対象として管理していなかった契約も、対象に含まれる可能性があります。
なお、棚卸しの際は以下の点に注意して進めるとスムーズです。
- 経理部門だけでなく契約を締結している部門(総務・営業・情報システムなど)にも照会をかける
- 「リース」の名称がついていない契約(業務委託やサービス契約など)も、リースの定義に該当する場合がある
- 契約ごとにリース期間・リース料・解約条件などの基本情報をまとめる
契約の全体像を把握できていないと、その後のデータ収集や注記作成に漏れが生じます。
まずは対象になる契約を正確に洗い出すことが大切です。
注記に必要なデータを収集・整理する
注記作成に必要なデータは、契約書や支払情報など複数の情報源から収集する必要があります。
収集漏れや誤りを防ぐために、事前にデータ項目と収集先を整理しておくことが重要です。
収集すべき主なデータ項目は以下のとおりです。
| データ項目 | 主な収集先 |
|---|---|
| リース期間の開始日・終了日 | 契約書 |
| リース料の金額と支払スケジュール | 契約書または請求書 |
| 変動リース料の有無や算定条件 | 契約書 |
| 残価保証や購入オプションの有無 | 契約書 |
| 使用権資産の種類と用途 | 社内管理台帳 |
収集したデータは、注記項目ごとに紐づけて管理することが求められます。
また、子会社や関連会社が締結しているリース契約も対象となるため、グループ全体でデータ収集のフォーマットと提出ルールを統一しておくことが不可欠です。
会計システム・業務フローを見直す
新リース会計基準への対応には、会計システムの更新と業務フローの見直しが不可欠です。
現行システムのままでは、使用権資産やリース負債の計上・管理に対応できないケースがあります。
システム面では、以下の対応が必要です。
- 使用権資産の償却管理機能の追加または改修
- リース負債の残高管理と利息計算の自動化
- 注記に必要なデータの出力や集計機能の整備
業務フローでは、新たな会計処理が加わることで、月次・年次の経理業務の工数が増加します。
誰がどのタイミングでどの処理を行なうかを明確にし、担当者間での役割分担を再設計することが求められます。
システム改修には一定の期間とコストがかかるため、早期に対応方針を固め、計画的に準備を進めましょう。
注記対応の遅れが招く財務リスク
新リース会計基準への対応が遅れると、財務指標への影響や業務負担が増加します。
どのような影響が生じるのかを事前に把握しておき、対策を練っておきましょう。
自己資本比率・財務指標への影響
新リース会計基準の適用により、これまでオフバランスだったリース契約が負債として計上されるため、主要な財務指標が悪化する可能性があります。
影響を受ける主な財務指標は以下のとおりです。
| 財務指標 | 概要 | 影響の内容 |
|---|---|---|
| 自己資本比率(純資産 ÷ 総資産) | 会社の安定性を表し、比率が高いほど倒産しにくい健全な経営であることを示す | リース負債の計上で総資産が増加し、比率が低下する |
| DEレシオ(有利子負債 ÷ 自己資本) | 数値が低いほど、借金に頼っていない安定した経営であることを示す | 負債が増加することで、レバレッジが高まったように見える |
| EBITDA | 会社の稼ぐ力を示す | リース費用が減価償却費と支払利息に組み替えられるため、数値が改善する場合がある |
財務指標への影響は企業ごとに異なるため、早めに試算を行ない、関係各所への説明準備を進めておくことが求められます。
リース関連の会計処理が複雑化
新リース会計基準の適用後、リース契約に変更が生じた際にはリース負債の再計算が都度必要となるため、経理担当者の業務負担は大きく増加します。
新基準では、以下のような変更が生じるたびに再計算が必要となります。
| 変更内容 | 対応 |
|---|---|
| リース期間の変更 | 延長オプションの行使や解約による期間変更 |
| リース料の変更 | 変動リース料の見直しや契約条件の改定 |
契約件数が多い企業ほど再計算作業が積み重なり、月次・年次の経理業務を圧迫します。
早めに管理体制を整備し、処理の自動化や標準化を進めることが業務負担の軽減につながります。
新リース会計基準への対応ロードマップ
新リース会計基準への対応は、現状把握から方針決定、システム整備、本番適用まで段階的に進めることが重要です。
本章では、新リース会計基準への対応手順を解説します。
各フェーズでやるべきことを整理し、計画的に準備を進めましょう。
現状把握と影響分析
対応の第一歩は、自社のリース契約の全体像を正確に把握し、財務への影響を試算することです。
社内に存在するリース契約を一覧化し、内容を整理しましょう。
注意が必要な点は、「リース」という名称がついていない契約も、リースに該当する場合があることです。
契約の名称ではなく、実態に基づいて判断することが求められます。
契約内容の整理が完了したら、少額リースや短期リースに該当するものを選別し、簡便処理の適用可否を検討しましょう。
方針決定とシステム整備
現状分析の結果を踏まえて、自社のリース会計における適用方針を決定しましょう。
リース期間の算定方法やリース料の現在価値を算定するための割引率(追加借入利子率)の設定方法、契約変更時の再計算フローなど、実務上の運用ルールを明確にします。
方針が固まったら、既存の会計システムで新基準に対応できるかを確認してください。
現行システムでの対応が難しい場合は、リース管理専用システムの導入やベンダー選定を進める必要があります。
システム整備には要件定義・開発・テストと一定の期間が必要になるため、早めに着手しましょう。
適用準備と本番対応
方針とシステムの整備が完了したら、実際の適用に向けた最終準備を進めます。
子会社・関連会社へ適用方針を共有し、契約データや注記情報を収集するためのルートと提出フォーマットを統一しましょう。
次に、月次・年次の経理業務フローを新基準に合わせて再設計します。
契約変更が生じた際の再計算フローや、リース負債の残高管理方法を明文化し、担当者ごとの役割分担を明確にしておくことが重要です。
また、業務フローの整備と並行して、システムの本番環境へのデータ移行とテストの実施も必要です。
本番適用の直前に問題が発覚すると、修正する時間的余裕がなくなります。
テスト期間を十分に確保し、運用体制を整えたうえで適用日を迎えられるよう、計画的に準備を進めてください。
リソース不足の場合はアウトソーシングも検討すべき
新リース会計基準への対応は、社内の経理リソースだけでは対応しきれないケースも少なくありません。
本章では、経理アウトソーシングの概要と活用メリット、自社に合うかどうかの判断基準を解説します。
経理アウトソーシングの概要
経理アウトソーシングとは、自社の経理業務の一部または全部を、外部の専門会社へ委託するサービスです。
仕訳入力や請求書処理といった日常業務から、月次決算・年次決算の補助、税理士との連携対応まで、委託できる業務の範囲はサービスによって異なります。
自社の状況に応じて、任せる範囲を柔軟に設定できる点が特徴です。
近年はクラウド会計ソフトの普及により、オンライン上で経理業務を完結できる環境が整っています。
そのため、常駐スタッフを置かずにリモートで経理業務を委託するサービスも増えているのが現状です。
経理アウトソーシングは単なる人手不足解消の手段ではなく、専門知識を持つ外部チームを活用することで、経理業務の質と効率を同時に高める手段として注目されています。
関連記事:経理代行とは?サービス内容や料金相場、メリットや選び方も解説
経理アウトソーシングで解決できること
経理アウトソーシングを活用することで、社内経理が抱える複数の課題を同時に解決できます。
主な解決効果は以下のとおりです。
| 課題 | アウトソーシング導入による効果 |
|---|---|
| 業務効率の低下 | 専門チームへの委託により、処理スピードと正確性が向上する |
| 経理人材の不足 | 採用・育成コストをかけずに、即戦力の専門人材を確保できる |
| 経理不正のリスク | 外部の第三者が業務に関与することで、不正の抑止力になる |
特に新リース会計基準への対応のように、一時的に業務量が増加する局面では、社内リソースを増やさずに対応できるアウトソーシングは有効な選択肢です。
必要なタイミングで必要な分だけ活用できる柔軟性が、経理アウトソーシングの大きな強みといえます。
アウトソーシングを検討すべき企業の特徴
経理アウトソーシングを検討すべき企業の特徴や主な理由は以下のとおりです。
| 特徴 | 理由 |
|---|---|
| 経理担当者が不足している企業 | 新基準対応が加わることで、キャパオーバーになるリスクを防げる |
| 業務が特定の担当者に属人化している企業 | 担当者の退職や異動で業務が停止するリスクを防げる |
| 事業拡大により経理業務が増加している企業 | 業務量の増加に対し、採用よりも迅速かつ低コストで対応できる |
| 採用や人件費を抑えつつ経理体制を強化したい企業 | 正社員採用と比べて初期コストを抑えながら、専門性の高い人材を活用できる |
自社の状況と照らし合わせ、上記の項目が当てはまる場合は、アウトソーシングの活用を前向きに検討することをおすすめします。
まとめ
新リース会計基準への対応において、注記対応の準備は早く始めるほど有利です。
注記事項の範囲は現行基準と比べて大幅に拡大し、借手・貸手それぞれに詳細な開示が求められます。
対応には、リース契約の全社的な洗い出し、データ収集・整理、会計システムの改修など、複数のプロセスを順番に進める必要があります。
これらを適用期限直前にまとめて対応しようとすると、現場の混乱や開示漏れのリスクが高まります。
また、対応の遅れは注記の不備にとどまらず、財務指標の悪化や関係先への説明責任という形でも影響を受けます。
早い段階から準備を進めることが、リスクの最小化につながります。
一方で、「社内の経理リソースだけでは対応しきれない」と感じている場合は、経理業務のアウトソーシングという選択肢もあります。
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新リース会計基準への対応に不安を感じている方は、まずはお気軽に相談してみてください。






