公開日 2025.01.06 更新日 2025.01.21

スタートアップ企業がIPOするメリットとデメリットとは?準備期間に行うべきことを解説!

IPOを目指すスタートアップ企業の経営者様のなかには「準備が大変……」という情報を見聞きし、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

もちろん、上場するためには相応の時間と労力が必要になりますが、そこで諦める必要はありま

せん。

 

本記事では、スタートアップ企業がIPOを叶えるために必要な対応を解説します。

IPOによって自社を発展させたい経営者様は、ぜひ参考にしてみてください。

スタートアップ企業におけるIPO準備の課題

スタートアップ企業が抱える、IPO準備の代表的な課題には、以下の4つが挙げられます。

 

【スタートアップ企業におけるIPO準備の課題】

  • IPO準備にかかるタスクが多い
  • タスクを管理できる人材がいない
  • IPO経験がある人材の確保が難しい
  • 事業推進にリソースを割いてしまう

スタートアップ企業では、マネージャー陣もプレイヤーとして活躍するほど、人的リソースが不足している傾向にあります。

 

このような状況では、自社内の限られた人材や情報、時間は、既存の事業の推進に優先的にあてられるので、IPOの準備にまで手が回りません。

 

しかし、課題が見えているということは、それに対する適切な解決策を立てられるともいえます。

 

準備期間中に自社でやるべきことを把握し、より具体的な計画を立案して実行に移せば、スタートアップ企業でもIPOは決して実現できないものではないのです。

IPOを実現するための要件

まずはここで、上場するための要件を押さえておきましょう。

上場審査には、“形式要件”と“実質要件”の2種類があります。

 

形式要件とは、資本金の額や公開予定の株式数など、IPOを目指すにあたって最低限満たさなければならない定量的な要件のことを指します。

一方、実質要件は、以下の5つの観点から審査される定性的な基準です。

 

【実質要件】

  • 企業の継続性及び収益性
  • 企業経営の健全性
  • 企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
  • 企業内容等の開示の適正性
  • その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項

上場申請する際には、これらの要件を満たす資料の作成や、社内の体制構築といった準備が求められます。

 

参照元:日本取引所グループ

 

スタートアップ企業のIPO準備で必要な対応

上場審査の、2種類の要件をお伝えしました。

ここからは、この審査をクリアするために、スタートアップ企業に必要なIPO準備期間中の対応を紹介します。

 

【スタートアップ企業におけるIPO準備に必要な対応】

  • 組織の編成
  • 人材採用
  • 予実管理
  • バックオフィスの体制構築

自社の状況と比較しながら、ご覧ください。

 

組織の編成

スタートアップ企業がIPOを目指すにあたっては、まず組織の編成を行うことが大切です。

 

【スタートアップ企業が設置すべき機関】

  • 株主総会
  • 取締役会
  • 監査役会

大企業では、すでに十分な組織が構成されている状況ですが、ほとんどのスタートアップ企業では、これから整備しなくてはならないでしょう。

それでは以下で、IPOの準備期間中に設置すべき機関を一つずつ解説します。

 

■株主総会

自社が、合同・合資・合名会社のいずれかである場合、上場申請するにあたって“株式会社”へ変更しなければなりません。

そして、それに伴い株主総会の設置が必要になります。

 

株主総会には、定時株主総会と臨時株主総会の2種類があります。

 

定時株主総会の開催時期について、法律上の明確なルールはありませんが、事業年度の終了から3ヶ月以内に行われることがほとんどです。

 

一方、臨時株主総会は、必要に応じていつでも招集できます。

 

■取締役会

IPO準備の過程では、取締役会の設置も必要です。

取締役会とは業務方針や経営方針といった、企業の今後を左右する重要事項について、意思決定を行う機関です。

 

株主総会にて、取締役3名以上、監査役1名以上の構成メンバーが選任されます。

 

取締役会においては、議案にかかる検討資料や月次業績資料などに基づいた、議論・検討と、その過程を経た組織的な意思決定が求められます。

 

■監査役会

前述の取締役会では、監査役の選任は1名以上と説明しましたが、上場時には“監査役会”として、計3名以上からなる機関を設置しなければなりません。

 

監査役会の設置において、確認していただきたいのは以下の3点です。

 

【監査役会設置においての条件】

  • 上場時には3名の監査役を選任し、監査役会を設置する
  • 上場時には社外監査役を最低1名以上必要とする
  • 監査役会の設置に代わる、監査等委員会を設置する

監査役には、常勤性が重要視されています。

 

たとえば、選任した3名全員が社外監査役であったとしても、そのうちの1名が常勤監査役であれば、上場時の要件と監査役会の要件をどちらも満たせているというわけです。

 

また、監査等委員会の構成メンバーは、3名以上の取締役である必要があります。

このうち過半数が、社外取締役である必要がありますので、その点は念頭に置いておきたいところです。

人材採用

IPOの準備を取り仕切ることのできる人材の採用も、企業によっては必要になるでしょう。

その際は経理やファイナンス、法務などの知識をもった人材を採用するのが理想です。

 

しかし現状、こうした人材が市場に現れるのは非常に稀であるため、早めに採用活動に取り掛かるのをおすすめします。

 

IPO準備を総括するには、各部署の責任者や役員陣と適切なコミュニケーションをとれることが大前提です。

ときには、内部統制の整備のために、これまでの経営方針をガラッと変えるような話をしなければなりません。

 

それだけ重要な役割を担うからこそ、責任者や役員陣を納得させられるだけのコミュニケーション能力が必要なのです。

 

なお経営者は、人材を確保したあとにIPOを取りやめる事態にならないよう、採用活動を始める前にIPOのデメリットをきちんと理解しておく必要があります。

 

対策として、IPO関連の経理業務をサポートしてくれる外注業務もあります。
人材の確保に悩む企業様は是非ご検討してみるとよいでしょう。

 

関連記事:IPO準備企業が外注できるバックオフィス業務8種類を解説!

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予実管理

上場企業には業績予想の開示が義務づけられているため、準備の段階から、計画的な予算の策定は不可欠です。

業績予想を公表するにあたっては、その予想に至った根拠や前提条件の適切な開示、また正確性などが求められます。

 

そのためIPO準備の際には、単なる目標ではなく、法令や市場環境、想定できるリスクなども加味したうえで予算を決定しなければなりません。

 

また、月次や四半期ごとに予算と実績を比較したうえで、大きく乖離している場合には、その差異が発生した原因を分析し、合理的に説明できるようにしておく必要があります。

 

予算と実績の差異を把握するために、適時かつ正確な会計記帳が求められるので、経理体制の構築も予実分析には重要な要素となります。

バックオフィスの体制構築

IPOの準備期間では、内部統制の整備もしなければならないため、総務・法務・労務を担うバックオフィスの体制を構築しておくことも大切です。

 

企業内容の開示における会計情報では、正確さだけが求められるわけではないため、内部統制といった組織全体の体制構築が必要になります。

 

したがって、内部統制の整備を進めるための、さらに一歩手前の段階として、バックオフィスの体制構築が必要になるわけです。

 

 

関連記事:IPO準備は内部統制が必須?その理由や目的を解説

スタートアップ企業がIPOする際のスケジュール

ここまでで、自社の課題や準備期間中に行うべきことが、少しずつ見えてきたのではないでしょうか。

それらを踏まえて、以下では、IPOに向けたスケジュールを説明します。

 

【上場申請するまでのスケジュール】

  • 直前々期以前(N-3期)
  • 直前々期(N-2期)
  • 直前期(N-1期)

今後の具体的な計画の立案に、お役立てください。

直前々期以前(N-3期)

上場申請を実施する直前々期以前には、自社外のチェック機関である監査法人や、IPOを行う際の証券業務をサポートしてくれる主幹事証券会社の選定を済ませておきましょう。

 

早い段階で監査法人を選定しておけば、監査法人によるショートレビューを受け、IPOの準備時点での課題を事前に洗い出しておくことができます。

 

ショートレビューによって見えてきた自社の課題をもとに、今後のスケジュールや対策を立てることをおすすめします。

直前々期(N-2期)

直前々期には、自社内の管理体制の構築や、資本政策の策定を行います。

管理体制の構築では、ショートレビューで浮き彫りになった課題を優先的に解決しましょう。

 

特に会計体制の構築は、申請までの2期分の監査が行われるため、きちんと整備しておきたいところです。

また資本政策では、発行する株式の数や種類を、財務状況を考慮しながら策定することになります。

 

株式に関する内容は、IPO後の経営に影響を及ぼす可能性があるため、専門家の意見を取り入れながら策定していくとよいでしょう。

直前期(N-1期)

直前期を迎えると、直前々期で定めた社内体制を運用する段階に入ります。

この時期に、申請書類の作成や証券会社による審査も行われます。

 

その後さらに、主幹事証券会社の最終審査や、証券取引所の審査を無事にクリアできれば、晴れて上場という流れです。

 

上場審査を無事に通過するには、年度ごとの重要な業務を押さえつつ、何よりも早めに準備に取り掛かることが大切です。

 

関連記事:上場準備に要する期間はどのくらい?経理業務の重要性も解説

スタートアップ企業がIPOを行うメリット

IPOに向けた大まかなスケジュールも把握し、よりイメージが湧いてきたのではないでしょうか。

 

ここからは少し方向性を変えて、スタートアップ企業がIPOを行うメリットを紹介します。

 

【IPOによって得られるメリット】

  • 会社を成長させるための資金調達ができる
  • 会社の知名度を向上させることができる
  • 採用力の向上につながる

すでに把握されている経営者様も、目的の再確認としてご覧ください。

メリット①会社を成長させるための資金調達ができる

IPOを実現すれば、株式の売買をはじめとした、さまざまな方法での資金調達が叶います。

どの企業においても、IPOを行う時期には、メインとなる事業の経営が安定しているはずです。

 

そこからさらなる成長を目指すには、既存事業の拡大や新規事業の開発、海外への展開、M&Aなどを検討することとなるでしょう。

 

しかし、これらを行うには多額の資金が必要になります。

 

上場することで、幅広い選択肢からの資金調達が可能になるため、これまで行えなかった施策に挑戦する機会が生まれ、企業の成長につながります。

メリット②会社の知名度を向上させることができる

上場によって、自社の知名度や信用力の向上が図れます。

 

知名度や社会的信用力が向上すると、金融機関からの評価も上がり、借り入れ時の条件が見直されたり、取引先との契約交渉に優位に立てたりすることがあります。

 

結果、企業活動がこれまでよりも効率的に進められるようになるのです。

メリット③採用力の向上につながる

IPOによって知名度がアップすれば、採用活動において、優れた人材に出会える可能性も高まります。

 

“上場した”という事実は、企業として一定の安定性があることを社会に示すことができ、自社の採用力の大幅な向上につながるでしょう。

 

さらに、新たな人材の入社によって、既存社員のモチベーションアップの効果も期待できます。

スタートアップ企業がIPOを行うデメリット

多くのメリットがあるIPOですが、少なからずデメリットも存在します。

 

【IPOによって生じるデメリット】

  • コストがかかる
  • 株主対応が必要となる
  • ライバル会社に買収されるおそれがある

自社の将来を見据え、デメリットもきちんと把握しておきましょう。

デメリット①コストがかかる

IPOでは、監査法人や主幹事証券会社への報酬、上場審査料など、さまざまな費用が発生します。

そのため、管理体制の構築の計画はもちろんのこと、資金計画についてもきちんと定めておく必要があります。

 

以下に、上場前と上場時、そして上場後それぞれのタイミングで発生する費用の目安をまとめましたので、参考にご覧ください。

 

上場前

費用の概要  目安金額 
監査法人  5,000,000~20,000,000 
証券会社にかかる費用  2,000,0005,000,000 
株式事務代行機関の費用  4,000,000 
証券印刷会社の費用  5,000,000 
コンサルティング費用  5,000,00015,000,000 
管理体制拡充のための人件費  状況により異なる 

 

上場時

費用の概要  目安金額 
上場審査料  2,000,000 
登録免許料  資本組入額×7/1,000(最低30,000円) 
証券会社への成功報酬  5,000,000円程度 

 

上場後

費用の概要  目安金額 
年間上場料  480,000~4,080,000円(上場時価総額による) 
監査法人の費用  10,000,000~20,000,000円 
株式事務代行機関の費用  4,000,000円 
証券印刷会社の費用  5,000,000円 
株主総会運営費用   

上記の金額は、時価や状況によって変動する場合がありますので、あくまでも参考程度にご確認ください。

 

関連記事:IPOの実現にかかる費用はいくら?3段階に分けて紹介

デメリット②株主対応が必要となる

IPO後は、既存の業務にくわえて、株主への対応が必要となり、そこにリソースが割かれてしまう点もデメリットとして挙げられます。

IPOを行うと、不特定多数の株主を集められますが、事業内容や経営方針を株主へ開示する必要があり、そのための総会の開催や資料作成の対応を行わなければなりません。

こうした、株主への適切な対応に、人的・時間的コストが必要になることも覚えておきたいところです。

 

デメリット③競合に買収されるおそれがある

上場すると、他社に買収される可能性があることも念頭に置いておきましょう。

IPOには、多くの株主を集められるというメリットを得られると同時に、買収されるリスクも生じてしまいます。

このリスクを回避するには、“買収防衛策”が必要です。

 

買収防衛策とは、敵対買収といった“経営陣の同意を得ずに強引に進められる買収や、不利益な買収などに対する防衛策”を指します。

 

防衛策には、買収の標的にならないようにするための“予防策”と、万が一標的にされてしまったときの“対抗策”があります。

 

各内容は、以下をご覧ください。

 

【予防策】

  • 従業員持ち株会に自社の株式を保有してもらう
  • 友好的な株主へ黄金株(拒否権付株式)を付与する

 

【対抗策】

  • 友好的な第三者に有利となる条件で買収してもらう
  • 敵対的買収者以外の株主に、大量の新規株の発行を行うことで買収者の持株比率を低下させる
  • あえて負債を背負い、企業価値を下げて買収意欲を失わせる

IPOが実現した際には、上記の買収防衛策を実施し、買収されるリスクに備えておくことが重要です。

スタートアップ企業はIPO準備期間中に、自社内の管理体制を構築しましょう

今回は、スタートアップ企業が行うべきIPOの準備や、上場申請に向けたスケジュールなどを解説しました。

 

スタートアップ企業はIPOの準備期間中に、株主総会や取締役会、監査役会などの機関を設置し、適切な組織編成を行う必要があります。

 

そのほか、IPO準備を取りまとめる人材の採用、予実管理、バックオフィスの体制構築もあわせて行いましょう。

 

「やるべきことはわかったけれど、適切な計画になっているのか……」とご不安に感じられている経営者様は、ぜひオンライン経理のCASTER BIZ accountingにご相談ください。

 

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