公開日 2025.01.08 更新日 2025.01.21

IPOコンサルティング会社への依頼に必要な費用はいくら?

IPO、すなわち株式公開の実現には、準備すべきことが多々あり、専門知識も求められます。
社内での対応を諦め、IPOコンサルティング会社に依頼しようにも、費用がどの程度かかるのかわからないと不安ですよね。

 

そこで本記事では、IPOコンサルティング会社の利用にかかる費用の目安をお伝えします。
この記事を参考に「依頼してよかった!」と思えるIPOコンサルティング会社を見つけてみてください。

IPOコンサルティング会社への依頼にかかる費用相場

さっそくですが、気になるIPOコンサルティング会社への依頼料については、年間500万~1,500万円程度が相場となっています。
自社の企業規模やコンサルティング会社の種類、依頼する業務内容などによって、この費用は変動します。

IPOを実現するには最低でも3年ほどの準備期間を要するため、トータルの費用は2,000万~5,000万円程度になる場合がほとんどです。

 

「まとまった資金が必要になるのか」と思われるかもしれませんが、IPOが実現すれば、企業の知名度が上がるほか、資金調達力が格段に向上するなどのメリットを得られます。
IPOによるさまざまなメリットを享受することで、その後のビジネスも有利に展開できるようになるため、コストとメリットを天秤にかけて判断するとよいでしょう。

 

なお、上記の年間の金額は、IPOの準備段階や株式公開後のコンサルティングに必要な費用の目安です。
IPOの申請直前の対応に関しては業務量が特に増えるので、費用がもっともかかるのもこの時期になります。

そもそもIPOコンサルティング会社とは

IPOコンサルティング会社の利用にかかる費用相場を押さえられたところで、実行してもらえる業務内容を具体的に確認しておきましょう。

IPOコンサルティング会社に依頼できる業務は、以下の通りです。

 

【IPOコンサルティングの業務内容】

  • 提出書類の作成や指導
  • 上場審査への対応
  • 証券会社や証券印刷会社、監査法人など各種関係機関の紹介
  • 社内の規定の見直しや作成
  • 内部管理体制の構築支援
  • 経営計画の作成支援
  • 資本政策の作成支援
  • 予算管理体制の作成支援

IPOを実現するには、内部管理体制を整備して運用を行い、投資家が安心して取引できるよう、証券取引所による厳しい審査基準・要件をクリアしなければなりません。
さらに、IPOの手続きに必要な書類を作成し、監査法人や証券会社、証券印刷会社など各種関係機関とのやり取りも円滑に行う必要があります。

これらの業務に要する作業量は膨大で、専門知識も求められるため、自社の人的リソースのみで対応するのは非常に困難です。
そこで、IPOのプロであるIPOコンサルティング会社に依頼することで、上記の業務を幅広くサポートしてもらおうというわけです。

IPOコンサルティング会社への依頼が必要な理由

IPOを進めるにあたって、IPOコンサルティング会社への依頼が必要になるのは、依頼しない場合のリスクが大きいからです。

すでにお伝えしたように、IPOを成功させるには専門的な手続きをクリアすることが必須条件です。
IPOコンサルティング会社の利用以外としては、外部からIPOの経験がある人材を新たに雇用する、社内研修で既存の社員に知識を身につけさせるという2つの方法があります。

前者の場合、前項で挙げた業務をこなせる人材を雇用することになるため、相応の人件費がかかるうえ、期待していた能力を発揮してもらえないリスクもはらんでいます。
後者では、社内教育にはかなりの時間を要するうえに、教育がうまくいかなければIPOの計画自体が頓挫する事態にもなりかねません。

こうしたリスクを考えると、IPOの実現に向けては、IPOコンサルティング会社に依頼するのが、現実的かつ効率的であり、安全策といえるのではないでしょうか。

 

関連記事:IPOを目指すには内部統制が必須?その理由や目的を解説

IPOコンサルティング会社の種類

ここまでの説明を受けて、「IPOコンサルティング会社に依頼することは決めた。ただ、どこに依頼しても構わないのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

 

IPOコンサルティング会社とひと口にいっても、いくつかの種類があり特徴も異なります。
自社に適した会社を選ぶことができれば、IPOの成功につながるため、それぞれの特徴を把握することが極めて重要です。

IPOコンサルティング会社には、以下の3種類があります。

 

【IPOコンサルティング会社の種類】

  • 証券系
  • 会計士系
  • ベンチャー・スタートアップ系

自社でIPOコンサルティング会社を選定する際は、まずこれを念頭に置いておきましょう。

証券系

証券会社の引受審査や証券取引所の審査など、IPOで重視される項目を網羅しているのが、証券系のコンサルティング会社です

 

審査の実務経験が豊富なIPOコンサルタントが在籍しているので、審査側がどのような内容を求めているのかという視点をもって、審査に必要な書類を作成することができます。
証券会社や証券取引所の目線で行ってくれる貴重なアドバイスは、IPOを目指している事業者様の心強い味方になるはずです。

会計士系

会計士系のコンサルティング会社には、監査法人出身のコンサルタントが在籍しています。
そのため、内部統制や決済開示体制などの整備について、元・監査法人ならではのアドバイスが期待できます。

 

監査法人は中立性を保つ必要があるため、監査は実行できてもIPOに関する実務を行うことはできません。
その点、監査法人出身のIPOコンサルタントであれば、監査法人の経験を踏まえたアドバイスと実務を行ってもらえます。

 

なお、会計士系のコンサルティング会社は、“実務を代行してくれる会社”と“企業の自立を支援する会社”の2つに大きく分かれます。
単純に業務を代行してもらいたいなら前者を、IPOの実現後に自立して運営できるシステムを構築したい場合は後者を選択するとよいでしょう。

ベンチャー・スタートアップ系

ベンチャー・スタートアップ系のコンサルティング会社では、CFO(最高財務責任者)を経験したコンサルタントが業務を行っています。

 

CFOとは、企業の財務・経理部門を統括し、財務戦略の立案や執行を担う責任者のことです。
IPOを指揮した企業側での実務経験があるので、IPOの流れや現場での動きなどを熟知しているのが強みです。

 

自らの経験上、IPOに取り組んでいる企業側の大変さを理解しているため、IPOの準備に関するさまざまな相談に乗ってくれるでしょう。
IPOの実務に関しても、リアルな情報に基づく的確なアドバイスが期待できます。

IPOコンサルティング会社を利用するメリット

IPOコンサルティング会社の種類を押さえたところで、ここからはそれを利用することで得られる2つのメリットを挙げていきます。

 

【IPOコンサルティング会社を利用するメリット】

  • プロに任せられる
  • 費用と時間を削減できる

この、専門性と効率性という2つの観点からメリットを紹介します。

メリット①プロに任せられる

IPOコンサルティング会社に依頼する最大のメリットは、プロのコンサルタントにIPOに関する業務を任せることができ、手続きを適切に進められる点です。

 

ここまでにお伝えしたように、IPOの実現には内部統制の整備をはじめ、証券取引所による厳しい審査や手続きに必要な書類の作成など、多くのハードルが待ち受けています。
いずれも専門知識が求められ、各種関係機関との連絡や事務作業も膨大になります。

 

すべての準備を自社で行うとなれば、確認に多くの時間を要したり、ミスが発生したりするのは避けられないでしょう。
無駄や作業漏れが生じると、計画していたスケジュールが崩れて、IPOの成功は遠のいてしまいます。

 

そうした難題も、IPOのプロ集団であるIPOコンサルティング会社に依頼すれば、スケジュールの全体像を把握したうえで、手続きを適切に進めてもらえるので安心です。

メリット②費用と時間を削減できる

IPOコンサルティング会社を利用すれば、トータルでかかる費用と時間の削減も期待できます。

 

IPOを進めるにあたって、IPOの経験がある人材を新たに雇用する、または既存の社員に研修を行い教育する場合、いずれにも費用と時間がかかり、高い成功率も見込めません。
前者には高額な人件費が発生し、後者では知識とスキルを身につけるまでに長い時間を要するため、社内の人的リソースを圧迫する事態に陥る可能性もあります。

その点、IPOコンサルティング会社に依頼すれば、契約料は支払う必要があるものの、採用や社員教育にかかる費用は不要になります。

契約後は、すぐにIPOを進められるので、必要な費用と時間を結果的に減らせるでしょう。
IPOをすべてコンサルティング会社に任せることで、重要度の高いほかの業務に人的リソースを割くことも可能です。

IPOコンサルティング会社を選ぶ際のポイント

予算を投じてIPOの業務を依頼することになるわけですから、自社に適した会社を選びたいものです。
ここからは、IPOコンサルティング会社の選定時に重視したいポイントを紹介していきます。

【IPOコンサルティング会社を選ぶ際のポイント】

  • 豊富な実績を有しているか
  • 得意分野が自社のニーズと合っているか
  • サポート体制が整っているか
  • 価格設定が適正か
  • 各種関連機関と連携できるか

費用対効果を高めるためにも、これら5つのポイントを押さえておきましょう。

ポイント①豊富な実績を有しているか

IPOコンサルティング会社を選ぶ際は、これまでの実績をまずチェックしてください。

 

繰り返しにはなりますが、IPOには専門知識が求められるうえに、企業の状況によって実行する業務内容が変わります。
IPOの実績が豊富な会社なら、これまでの経験やノウハウをもとに、企業ごとに適切なサポートを行ってくれる可能性が高いといえます。

ポイント②得意分野が自社のニーズと合っているか

IPOコンサルティング会社にはそれぞれ得意な分野と業界があるため、自社のニーズとの適否も確認したいところです。
自社の業界へのサポートに強みをもつIPOコンサルティング会社を公式ホームページで探し、これまでの実績の有無を調べてみましょう。

 

すでにお伝えした通り、IPOコンサルティング会社は、証券系と会計士系、ベンチャー・スタートアップ系の3種類に分類されます。
証券系はIPOの審査に、会計士系なら内部統制の構築に、そしてベンチャー・スタートアップ系はIPOの流れに特に詳しいといった具合に、それぞれ得意分野があります。

 

そのため、自社のニーズを精査したうえで、その分野を得意とするIPOコンサルティング会社を選ぶことがIPOを成功に導く鍵です。

ポイント③サポート体制が整っているか

IPOの実現後、自社での運用を見越したサポートの可否も、IPOコンサルティング会社を選ぶうえでは重要です。

 

IPOコンサルティング会社を通じて内部統制の構築を行っても、最終的に自社で運用できるようにならなければ、いつまでも依頼しつづける必要があります。
費用を払いつづけるのを避けたいなら、IPOの実現後に自社で運用ができるような体制の構築を、事前にサポートしてもらえるのかを確認しておくことをおすすめします。

ポイント④価格設定が適正か

費用対効果を高めるには、IPOコンサルティング会社の価格設定が適正な範囲内かどうかも見極めましょう。

 

IPOコンサルティング会社に依頼する場合、トータルの費用が2,000万~5,000万円程度になるのは先述した通りです。
費用を削減したいからといって、相場よりも極端に安い会社に依頼すると、サポートの質が悪い、あるいは必要なサポートが含まれていないなどの危険に遭遇するかもしれません。

適正価格の判断が難しい場合は、複数社の見積もりをとって比較検討してみるとよいでしょう。

ポイント⑤各種関連機関と連携できるか

IPOコンサルティング会社を選ぶ際は、各種関連機関との連携のスムーズさを確かめることも欠かせません。

 

IPOへの取り組みは、証券会社や証券印刷会社、監査法人などの各種関係機関とやり取りしながら進める必要があります。
それぞれの機関に連絡事項や意見を伝え、円滑に作業を進めるにはIPOコンサルタントの経験や知識が重要になってきます。
そのため、選定時には連携の巧拙も含めてチェックしましょう。

IPOコンサルティング会社以外で上場準備段階に必要な費用

ここまでは、IPOコンサルティング会社への依頼にかかる費用相場を中心に、会社の種類や選定時のポイントをお伝えしました。

 

しかし、IPOの実現にかかるコストはそれだけではありません。
準備段階と上場時、そして上場後にも費用がかかります。
そこでここからは、それぞれの段階で必要な費用を紹介します。

 

【IPOコンサルティング会社以外で上場準備段階に必要な費用】

  • 証券会社や監査法人に支払う費用
  • 証券印刷会社に支払う費用
  • 証券代行機関に支払う費用

まずは、上場準備段階に必要な上記3種類の費用を見ていきましょう。

証券会社や監査法人に支払う費用

証券会社や監査法人に対しては、年間5,000万円程度を支払います。
依頼する会社によるものの、費用の内訳は以下の通りです。

証券会社や監査法人に支払う費用の内訳

  • 監査費用:1,000万~2,200万円程度
  • 主幹事証券会社成功報酬:600万円程度
  • 株式事務代行手数料:500万円程度
  • その他諸費用

証券会社や監査法人は、企業の財務状況がIPOの審査基準を満たしているのか確認し、内部統制をはじめとするIPOの準備に関する指導を行います。

証券印刷会社に支払う費用

証券印刷会社に支払う費用は、合計200万〜500万円程度です。
IPOの審査に必要な書類には、機密保持や作成方法などにさまざまなルールが設けられており、特定の知識も求められるため、専門の印刷会社に依頼する必要があります。

証券代行機関に支払う費用

証券代行機関への依頼には、年間1,000万~8,000万円程度かかります。
証券代行機関では、株主名簿管理人が議決権行使や株主総会運営のサポート、株券の名義書換事務などを代行してくれます。

上場時にかかる費用

続けてIPOを実現し、上場する際にかかる主な費用を紹介します。

【上場時にかかる費用】

  • 上場審査料および新規上場料
  • 株式の公募や売出しにかかる費用
  • 登録免許税

これら3項目にかかる費用と詳細を確認していきましょう。

上場審査料および新規上場料

上場審査料はIPOの申請日の翌月末、新規上場料はIPOの審査に通過後、上場日の翌月末までに支払う費用です。
これらにかかる費用は、上場先の市場ごとに異なります。

上場審査料と新規上場料

株式市場

上場審査料 新規上場料
プライム市場 400万円

1,500万円

スタンダード市場 300万円

800万円

グロース市場 200万円

100万円

上記の金額には、消費税および地方消費税額は含まれていません。
なお上場審査料は、審査に通過しなかった場合であっても支払う必要があります。

株式の公募や売出しにかかる費用

IPOでは、株式の公募や売出しを行い、その際に証券会社に手数料を支払います。

手数料は発行する株数に応じて変動し、公募は「公募株式数×公募価格×9/10,000」、売出しは「売出し株式数×売出し価格×1/10,000」で計算します。
いずれも、支払期日は上場日の翌月末です。

登録免許税

IPOを行う際は登録免許税も必要となり、計算方法は、「資本組入額×7/1,000」です。
資本組入は、企業に損失が出た際の備えとして、資本準備金の一部を資本金に組み入れる仕組みで、この額に応じて登録免許税が変動します。

上場後にかかる費用

最後に、IPOの実現後にかかる費用を確認しましょう。

 

【上場後にかかる費用】

    • 年間上場料
    • 監査費用
    • 顧問弁護士に支払う費用
    • 株式事務代行費用
    • 法廷開示書類の作成にかかる費用

これら5項目の費用は、上場後に毎年支払うことになります。

年間上場料

年間上場料は、上場時価総額と上場先の市場に応じて変動します。

 

年間上場料

上場時価総額

プライム市場

スタンダード市場

グロース市場

50億円以下

96万円 72万円 48万円

50億円を超え250億円以下

168万円 144万円 120万円

250億円を超え500億円以下

240万円 216万円

192万円

500億円を超え2,500億円以下 312万円 288万円

264万円

2,500億円を超え5,000億円以下

384万円 360万円

336万円

5,000億円以上 456万円 432万円

408万円

上場審査料と新規上場料と同様に、上記の金額には消費税および地方消費税額は含まれていません。

 

参照元:日本取引所グループ

監査費用

監査費用は企業規模によって異なりますが、年間1,000万円以上はかかります。
毎年監査を実施することは、金融商品取引法によって定められています。

顧問弁護士に支払う費用

顧問弁護士には、企業規模や相談の頻度によって変わるものの、年間300万~500万円程度を支払うと想定しておくとよいでしょう。

IPOの実現後は、金融庁や証券取引所に提出する書類の確認や取引企業からのクレーム対応など、法的な判断が求められる場面が増えます。
そのため、顧問弁護士との契約は必須になります。

株式事務代行費用

株式事務代行費用は、年間300万~400万円程度必要です。

IPOのあとは、株主総会招集通知をはじめ、株式事務業務を代行機関へ委託する義務が発生します。
そのため、証券取引所が承認している代行機関に支払う費用がどうしてもかかってきます。

法廷開示書類の作成にかかる費用

法定開示書類の作成には、年間数百万~数千万円程度かかると見込んでおきましょう。

IPOの実現後は、金融商品取引法24条に基づき、法定開示書類を金融庁に毎年提出しなければなりません。
その際、法定開示書類を外部委託する場合には外注費用がかかります。

IPOコンサルティング会社への依頼には、2,000万~5,000万円程度は必要

本記事では、「IPOコンサルティング会社への依頼にかかる費用は?」という疑問にお答えしました。

IPOコンサルティング会社に依頼する場合、年間500万~1,500万円程度の費用がかかります。
少なくとも3年ほどの準備期間を要するので、トータルの費用は2,000万~5,000万円程度は必要です。

これほどの大金を払っても、IPOコンサルティング会社に依頼するのにはわけがあります。
IPOの実現には、それだけ膨大な準備と専門知識が求められるからです。

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