公開日 2026.04.06更新日 2026.04.06

新リース会計基準の300万円とは?判定方法や少額リースの実務ポイントを解説

企業会計基準委員会が公表した新リース会計基準では、少額リースの処理において、300万円という金額の目安が注目されています。

新リース会計基準や300万円基準について、概要は理解しているものの、実務での変更点を理解できずにいるという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、新リース会計基準とは何なのかはもちろん、変更になった点、実務での注意点や300万円基準の判定のポイントをわかりやすく紹介します。

とくに、経理に関する業務に携わっている方は、参考にしてください。

新リース会計基準とは

新リース会計基準は、リース取引による資産と負債を財務諸表に明確に示すための新しい会計の基準として導入されました。

新リース会計基準の概要を以下の内容に沿って詳しく紹介します。

  • 改正された理由
  • 原則オンバランス化について
  • 適用時期や対象となる企業

新制度の背景やポイント、改正された理由を知ることで、企業の財務状況をより深く理解することができるでしょう。

新リース会計基準の概要について知識を深め、ぜひ経理関連の実務の効率化に活かしてください。

改正された理由

新リース会計基準が改正された主な理由は、企業の財務状況をより明瞭で正確にすることを目的としており、複雑化する実務に対応するため、社内マニュアルの見直しなどの工夫が必要です。

改正前の日本のルールでは、リース取引の中の短期リースは貸借対照表に計上しない、すなわちオフバランスとしての対応が認められていました。

そのため、実質的には資産を利用し、将来の支払い義務があるにもかかわらず、財務諸表に正確に反映されないという課題があったのです。

一方、国際的にはリースのオンバランス化が進んでおり、国際基準との整合性を図るためにも、新リース会計基準が導入されることになりました。

原則オンバランス化について

新リース会計基準の大きな特徴として、借手のリース取引を原則としてオンバランス化する点が挙げられます。

これまでオフバランス処理されていたリース契約も含め、多くのリース取引について使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上することが必要です。

使用権資産とは、リース期間中にその資産を使える権利のことであり、将来支払うリース料は負債として計上されます。

これにより、企業はリース契約での資産の利用や支払いの義務を、財務諸表でわかりやすく示せるようになる点がポイントです。

ただし、短期間の契約や金額が少ない資産については、手続きの負担を軽くするために、オンバランス化を免除する簡便的な扱いも認められています。

新リース会計基準の導入により、原則オンバランス化がルール化され、リースによる資産と負債を明瞭にすることが求められるようになりました。

適用時期や対象となる企業

新リース会計基準は、企業会計基準委員会(ASBJ)によって公表され、2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定です。

主な対象は、日本基準を用いて財務諸表を作成している上場企業や大企業などとされています。

これらの企業では、新リース会計基準に基づき、これまでオフバランスで処理されていた多くのリース契約について、貸借対照表に計上することが求められ、早期適用も認められているため、準備が整った企業は前倒しで導入することも可能です。

新リース会計基準の適用において、企業がリース契約の内容を整理したり、会計システムを見直したりするなど、事前の準備を進めていくことが重要になると考えられています。

会計システムの見直しを行なうタイミングや注意点については以下の記事で詳しく紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

関連記事:新しい会計システムに乗り換えるタイミングとポイント

300万円基準とは

300万円基準とは、リース会計において、リース資産の金額が300万円以下の場合は、その取引をリース資産として計上せず、通常の賃貸借取引として処理することが認められる簡便的な取扱いのことです。

本記事のポイントともいえる300万円基準について、以下の項目に沿って紹介します。

  • 少額リースの簡便処理とは
  • 300万円の判定対象となる金額
  • 対象になるリース契約の範囲
  • 少額リースと短期リースの違い

300万円基準の判定など、実務に大きく影響してくる内容のため、理解を深めておきましょう。

適用にあたっては、会計基準や社内規程の確認が必要といえます。

少額リースの簡便処理とは

少額リースの簡便処理とは、金額が小さいリース契約について、原則オンバランス化の処理を行なわず、従来と同様に費用として処理できる方法です。

新リース会計基準では、多くのリース取引を貸借対照表に計上する必要があることを紹介しましたが、すべての契約について詳細な計算や管理を行なってしまうと企業の実務負担が大きくなる可能性があります。

そのため、一定金額以下のリース契約については、使用権資産やリース負債を計上せず、リース料を支払った時点で費用として処理することが認められているのです。

このような取扱いを少額リースの簡便処理といい、企業の会計処理の負担を軽減する目的で設けられています。

300万円の判定対象となる金額

300万円基準は、少額リースの簡便処理を適用できるかどうかを判断するための目安となる金額であり、リース契約における対象資産の取得価額が300万円以下であるかどうかを基準として判定します。

つまり、通常その資産を購入した場合の価額が300万円以下であれば、少額リースとして簡便処理を適用できる可能性があるということです。

注意点として、リース料の総額ではなく、あくまで対象資産の価額を基準として判断する点に気をつけなければなりません。

企業は契約内容や資産の価格を確認しながら、300万円基準に該当するかどうかを判断する必要があります。

対象になるリース契約の範囲

少額リースとして簡便処理の対象となるのは、取得価額が300万円以下の資産を対象とするリース契約です。

パソコンや事務機器、小型の設備など比較的金額が小さい資産のリース契約が対象になるケースが多いと考えられます。

ただし、企業が保有する資産の種類や契約内容によっては判断が異なる場合もあるため、契約の内容を確認したうえで適用する必要があるでしょう。

また、企業は同じ種類の資産について継続的に同じ会計処理を行なうなど、会計処理の一貫性にも注意することが求められます。

これは、社内ルールにおいても統一を図るべきポイントです。

少額リースと短期リースの違い

少額リースと短期リースは、その判断基準が異なる点に注意が必要です。

少額リースは金額による基準、短期リースは契約期間による基準で判定を行ないます。

どちらも新リース会計基準においてオンバランス化を免除できる例外的な取扱いですが、少額リースは、少額リース資産に該当するかどうかで判断し、対象となる資産の取得価額が300万円以下であるかどうかという金額を基準にする点がポイントです。

一方、短期リースは資産の金額ではなく、リース期間が短いかどうかによって判断されます。

一般的にはリース期間が12か月以内の契約が短期リースです。

300万円以下なら必ず費用処理できる?

300万円以下なら必ず費用処理できるというわけではなく、例外要件や判断が必要なケースもあります。

例えば、簡便処理が認められないのは以下のようなパターンです。

  • 実質的に1つの契約と判断できる一括契約
  • 更新前提などにより実質的に長期契約と判断できる契約
  • 所有権移転オプションが付いている契約
  • リース契約とメンテナンス契約などのサービスが一体となっている契約
  • リース資産と付属設備を一体として契約している場合

簡便処理を行なった仕訳の判断が誤っており、後から修正することになれば、業務負担が大きくなってしまいます。

判定ミスが起こらないように、社内ルールの見直しや統一が必要です。

また、契約内容の確認や判断基準をあらかじめ明確にしておくことで、実務上のミスや対応コストの増加を防ぐことにもつながるでしょう。

300万円基準の判定ポイント

少額リースの300万円判定は、リース契約の対象となる資産が少額リース資産に該当するかどうかを判断するための基準であることを紹介しました。

実務において、300万円基準の判定で覚えておきたいポイントは大きく以下の5点です。

  1. 契約単位と資産単位
  2. リース料総額で判定
  3. 延長オプションを含めるか
  4. 変動リース料の扱い
  5. 契約変更時の再判定

以下でそれぞれ詳しく解説します。

ポイントを理解しておくことで、少額リース資産に該当するかどうかの判断をより適切に行なうことができ、実務上の判定ミスや会計処理の誤りを防ぐことにもつながるでしょう。

契約単位と資産単位

基本的に300万円基準の判定では、契約単位ではなく、資産単位で判断する点がポイントです。

例えば、1つのリース契約の中に複数の設備や機器が含まれている場合、それぞれの資産ごとに取得価額を算定し、300万円以下かどうかを判定します。

ただし、複数の機器が一体として機能する場合や、実質的に1つの設備として利用される場合は、個別ではなく一体の資産として判断することもある点に注意しなければなりません。

そのため、形式的な契約内容だけでなく、実際の利用状況や機能面を踏まえて資産単位を適切に判断することが重要です。

リース料総額で判定

300万円基準の判定では、月額のリース料ではなくリース料総額を基準として判断します。

つまり、リース期間全体で支払うリース料の合計をもとに、その資産の取得価額を見積もり、300万円以下かどうかを判定するということです。

月額の金額だけを見ると少額に見える場合でも、長期契約であれば総額が300万円を超えることもあります。

また、契約に含まれる費用の内訳を確認し、リース部分と保守やサービス部分が含まれている場合は適切に区分することもポイントです。

延長オプションを含めるか

リース契約に延長オプションが付いている場合、そのオプション期間を300万円判定に含めるかどうかも重要なポイントです。

一般的に、企業が延長オプションを利用する可能性が高いと判断される場合は、その延長期間もリース期間に含めて300万円判定を行ないます。

例えば、設備の継続利用が前提となっている場合や、延長しなければ業務に支障が出ると考えられる場合などが該当します。

一方で、延長するかどうかが現時点で決まっていない場合や、判断を保留する契約では、当初の契約期間のみをリース期間として判定するのが一般的です。

つまり、延長する可能性が高いかどうかが判断のポイントになります。

変動リース料の扱い

リース契約では、使用量や売上高などに応じて支払額が変動する変動リース料が設定されている場合があるため注意が必要です。

300万円基準の判定においては、基本的に固定的に支払う部分のリース料を基準として判断し、将来の利用状況によって変動する部分は含めません。

例えば、使用時間に応じて追加料金が発生する契約などでは、最低限支払う固定額のみを対象として判定します。

ただし、契約条件によって扱いが異なる場合もあるため、契約内容を十分に確認することが重要です。

契約変更時の再判定

もし、リース契約の条件が途中で変更された場合は、300万円基準の判定を改めて見直しましょう。

例えば、契約期間の延長やリース料の変更、対象資産の追加などが行なわれた場合には、変更後の契約内容に基づいて再度判定を行なうことになります。

当初は少額リース資産として処理していた場合でも、契約変更によって総額が300万円を超える可能性もあるため注意が必要です。

契約変更が発生した際には、会計処理への影響を確認し、必要に応じて処理方法を再判定してください。

実務で注意したいポイント

新リース会計基準の概要や判定基準について解説してきましたが、ここからは、実務に直結する内容です。

以下に新リース会計基準の導入に伴い、実務で注意したいポイントを紹介します。

  • 契約を分けることで基準回避は可能か
  • 延長オプションや変動リース料の取扱い
  • グループ会社間取引の取扱い
  • 税務上の取扱いとの整合性
  • 監査でチェックされるポイント

それぞれの項目を確認し、実務でのミスの削減や明瞭な会計、業務の効率化に役立ててください。

さらに、社内手続きや記録の整備を徹底することで、基準の適用ミスや監査指摘のリスクをさらに低減できるでしょう。

仕組みが変わるタイミングは、会計システムの見直しに適しているといえます。

経理システムや外注をうまく活用し、社内の体制を整えましょう。

企業規模ごとの会計システムの選び方は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:会計システムの選び方を企業規模ごとに徹底解説

契約を分けることで基準回避は可能か

リース契約を複数に分けて、会計処理を避ければ良いと考える方もいるでしょう。

しかし、実際は簡単にはできません。

新リース会計基準では、契約の見た目ではなく中身を重視します。

リース契約が複数に分かれていたとしても、実質的に同じ資産を長く使う場合は、まとめてリース資産・負債として計上する必要があるということです。

意図的な契約分割は、監査でも指摘される可能性が高く、正当な理由がない限りは認められない点に注意しなければなりません。

延長オプションや変動リース料の取扱い

新リース会計基準では、リースの期間や支払額をどう見積もるかが大切です。

延長オプションは、あとで延長できるかもしれない契約を意味し、利用者がほぼ確実に延長すると考えられる場合は、その期間も含めてリース負債を計上します。

変動リース料は、毎月の支払額が市場価格や物価指数に応じて変わる場合を指し、将来支払う可能性のある金額を合理的に見積もる必要がある点に注意が必要です。

見積もりを正しく行なわないと、財務諸表の負債や費用が本当より少なくなったり、多くなったりするリスクがある点に注意しましょう。

グループ会社間取引の取扱い

親会社と子会社などグループ会社間のリース取引では、取引の実質が外部取引と同様に評価されます。

つまり、単なる資金移動や内部管理目的の契約であっても、リースの識別基準に該当すれば、リース資産・負債の計上が必要です。

とくに複雑な設備共有契約や、契約書上の条件が曖昧な場合は、実質評価の検討を慎重に行なわなければなりません。

また、連結財務諸表では内部取引の相殺処理が必要で、グループ間でのリース料設定や契約内容の透明性が求められ、監査上も内部取引の実態が外部と同等に適切に処理されているかがチェックされます。

税務上の取扱いとの整合性

会計上のリース認識と税務上の取扱いは必ずしも一致しないことを覚えておきましょう。

リース資産・負債を計上しても、税務上は賃借料として経費処理される場合があります。

この差異は繰延税金資産・負債として認識されるため、税務・会計のズレを事前に把握して調整が必要です。

また、新基準導入に伴い、税務申告書や内部管理資料の更新が必要になるケースもあり、社内の会計・税務担当者間での情報共有が重要となります。

例えば、繰延税金資産の計上や減価償却費の調整など、会計上と税務上の差異が生じる項目を事前に整理しておくと良いでしょう。

監査でチェックされるポイント

監査では、リース契約の識別、リース期間の判定、将来リース料の見積もり、内部取引の適切な処理などが重点的に確認されます。

また、会計方針の開示や見積もりの合理性、システム上の計算ロジックもチェック対象です。

不適切な判断や誤計算があると指摘される可能性があるため、契約書の管理、計算の検証、内部統制の整備を進める必要があります。

あわせて、監査対応マニュアルやチェックリストを作成し、担当者が迅速に説明できる体制を整えておくと安心でしょう。

監査の際、指摘を受けた場合にすぐに回答できるよう、各取引の内容を確認しておけると安心です。

中小企業でも適用される?

新リース会計基準は、原則として上場企業などに適用することを前提としています。

したがって、すべての中小企業に直ちに適用が義務付けられるわけではありません。

中小企業における新リース会計基準の導入はあくまで任意です。

多くの中小企業は、中小企業の会計に関する指針などを採用しているため、従来の処理を継続できる場合が多いと考えて良いでしょう。

しかし、新リース会計基準では、リース取引を資産と負債として貸借対照表に計上する考え方が採られており、企業の財務状況がより明確に示されることが期待されています。

そのため、中小企業であっても金融機関や取引先からの要請、任意適用により新基準に準じた処理を求められる可能性は十分あるため、制度に関する概要の理解と将来的な対応準備が必要でしょう。

各取引の内容を確認し、間接的にでも影響がある取引がないかを確認しておけると安心です。

まとめ

本記事では、新リース会計基準の300万円について、判定方法や少額リースの実務ポイントを解説しました。

新リース会計基準は、複雑な判定ポイントなどに注意が必要ですが、会計の明瞭化につながる画期的な仕組みです。

新リース会計基準における少額リースの基準額となるのが300万円という数字です。

判定のポイントや実務での注意点を理解したうえで、社内ルールの統一化や会計システムの最適化が必要でしょう。

会計システムの導入に関するご相談は、オンライン経理のCASTER BIZ accountingにて承っております。

300万円基準の判定ミスや税務調査での指摘を避け、新リース会計基準に対応していくためにも、正確な会計処理につながる体制を整えておくと良いでしょう。