経理業務の外注費用の相場はいくら?外注先の選び方も紹介
近年、人手不足の解消や生産性の向上を目的として、経理業務を外注する企業が増えつつあります。
このような問題を解決する手立てとしては有効な経理業務の外注化ですが、実際にサービスを利用するとなるといくらかかるのか、気になりますよね。
そこで本記事では、経理業務を外注した際の費用相場と業者を探す際に注意する点をお伝えします。
「うちでもそろそろ、経理を外注してみるか」とお考えの事業者様は、ぜひご覧ください。
経理業務を外注する際の費用相場
ひと口に“経理”とはいっても、その業務内容は多岐にわたるため、何を外注するかによって費用の相場は異なります。
ここでは、経理の主要業務である以下の3つに分類して解説します。
【主な経理業務と外注費の相場】
- 記帳
- 給与計算
- 決算書の作成・法人税の申告
さっそく、業務ごとの費用相場を見ていきましょう。
記帳
記帳とは、日々の取引で発生した売上や経費の金額を、帳簿に記録する業務のことです。
記帳した数字をもとに財務諸表を作成し、納税額を確定させるための作業であり、会社法によって事業者には記帳と帳簿の保管が義務付けられています。
つまり、記帳は事業者にとってマストの経理業務というわけです。
記帳の外注費用は、1仕訳あたり50~100円程度が相場です。
月間の仕訳数に応じた費用相場は、以下の表を参考にしてください。
【記帳を外注した際の費用相場】
仕訳数 |
月額料金の相場 |
~100仕訳 |
10,000円 |
101~200仕訳 |
15,000円 |
201~300仕訳 |
20,000円 |
301~400仕訳 |
25,000円 |
401仕訳~ |
30,000円~ |
取引数の少ない小規模事業者であれば月額数千円程度で済む場合もありますし、大企業となると十数万円かかるケースもありえます。
給与計算
従業員を雇用している企業であれば、毎月の給与計算も欠かせない経理業務の一つです。
従業員一人ひとりの出退勤データを確認したうえで、残業代や保険料などを含めて算出しなければならず、非常に手間のかかる作業です。
給与計算を外注する場合、従業員1人あたり1,000~2,000円程度が費用の目安とされています。
従業員数ごとのおおよその外注費用を、以下の表にまとめました。
【給与計算を外注した際の費用相場】
従業員数 |
月額料金の相場 |
10人 |
15,000~20,000円 |
50人 |
40,000~60,000円 |
100人 |
80,000~100,000円 |
なお、上記の金額にくわえ、初期費用や基本料金がかかることもありますのでご留意ください。
代行業者によっては、年末調整もあわせて請け負ってくれる場合もありますが、その際は従業員1人につき500~2,000円程度加算されます。
決算書の作成・法人税の申告
法人・個人事業主にかかわらず、事業者は会社の一定期間の収益と費用をまとめ、決算日時点における資産と負債、純資産の額を確定する“決算”を行います。
その際、損益計算表や貸借対照表といった決算書を作成したうえで、事業者の所得に対して課される法人税を税務署に申告しなければなりません。
これらの一連の業務も、外部業者に委託することが可能です。
決算業務を外注する場合、その費用相場は50,000~200,000円程度といわれています。
なお、専門性の高い税理士事務所(法人)に依頼するとなると、税金に関する相談をしたり、アドバイスを受けたりできるぶん150,000~250,000円程度と、割高になります。
経理業務の外注先
それではいざ、経理業務を外注しようとなったら、どのような業者に依頼すればよいのでしょうか。
主な選択肢として、以下の3つが挙げられます。
【経理業務の外注を依頼できる業者】
- 経理代行業者
- 税理士事務所(法人)
- 公認会計士事務所
以下で、それぞれの特徴を解説します。
経理代行業者
経理代行業者とは、その名の通り、経理業務を専門で請け負っている業者です。
記帳や給与計算はもちろん、請求書の発行や決算申告、助成金の申請など、幅広い業務を引き受けてくれます。
【経理代行業者のサービス一例】
- 記帳
- 給与計算
- 入出金管理
- 請求書の発行
- 支払い・振り込み
- 買掛金・売掛金の管理
- 年末調整
- 決算書類の作成
- 税務申告書の作成
専門業者ということもあり、後述する業者よりも安価で利用できるのが特徴です。
ただし、確定申告の代行といった税理士の独占業務に該当する内容は引き受けてもらえない可能性もあるので、依頼する際には事前の確認が必要です。
税理士事務所(法人)
経理業務だけでなく、税務申告にも対応してもらいたいのであれば、税理士事務所(法人)も依頼先の選択肢に入ります。
税理士は、クライアントへの節税のアドバイスや、納税に必要な書類の代行作成を行う税の専門家です。
税務士事務所(法人)は、次のような業務を請け負ってくれます。
【税理士事務所(法人)のサービス一例】
- 記帳
- 給与計算
- 入出金管理
- 年末調整
- 決算書類の作成
- 税務申告書の作成
- 税務相談
- コンサルティング業務
記帳から税金の申告まで、ワンストップで依頼できるのが税理士の強みです。
社内の業務負担を軽くする目的に経理を外注するだけではなく、経営コンサルタントとしても税理士を活用する企業は少なくありません。
関連記事:税理士に依頼する際の費用相場は?費用が変動する要因も解説
公認会計士事務所
業務の執行や財務状況について、法令や社内規定の順守および有効性を評価・報告するための“監査”を求めるのであれば、公認会計士事務所への依頼を検討しましょう。
公認会計士は監査や会計の専門家であり、財務に関する専門的な知識を活かして、会計業務や税務業務、法定監査までもこなします。
わかりやすいよう、公認会計士の業務の一部を以下にまとめました。
【公認会計士事務所のサービス一例】
- 記帳
- 給与計算
- 入出金管理
- 年末調整
- 決算書類の作成
- 税務申告書の作成
- 税務相談
- コンサルティング業務
- 監査
監査は公認会計士の独占業務であり、資格を有する者でなければ業務を遂行することはできません。
また、公認会計士は税理士試験に合格しなくても税理士として登録することが認められているため、税務相談などの税理士の独占業務もあわせて依頼することができるわけです。
そのため、社内に会計監査人を設置しなければならないような大企業に適した外注先といえます。
経理業務を外注するメリット
ここで改めて、経理業務を外注したときに得られるメリットを確認しておきましょう。
【経理業務を外注することで得られるメリット】
- コストを削減できる
- コア業務に専念できる
- プロの知見を活用できる
順番に、詳しく解説します。
メリット①コストを削減できる
経理を外注すれば、そのぶん従業員を雇用する必要がなくなるため、月々の人件費の削減が叶います。
新規で従業員を雇用するとなると、少なくとも1人あたり200,000円程度の給与にくわえ、社会保険料やその他諸経費を負担しなければなりません。
しかし、経理業務を外注化してしまえば、1業務につき月々数万円程度の出費に抑えられます。
また、繁忙期と閑散期で依頼する業務量を調整すれば、不要な支出を防ぐことも可能です。
さらにいえば、採用コストや人材育成のコストもすべてカットできますので、自社の利益拡大を図りたい企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
関連記事:経理のアウトソーシングを使って企業成長を加速させる方法
メリット②コア業務に専念できる
社内の人的リソースを“コア業務”に集中させるための施策として、経理の外注化は有効な手段です。
経理のうち記帳や給与計算といった業務は、会社利益に直接結び付かない“ノンコア業務”に該当します。
こういった業務を外注し、自社の従業員をコア業務に注力させることで、企業は新たなサービスや商品の開発といった利益拡大のための取り組みに乗り出せるわけです。
企業の有する資源には限りがあるため、いかにノンコア業務を切り離し、人的リソースをコア業務に集中させられるかが、健全な企業経営を実現するための肝といえます。
メリット③プロの知見を活用できる
経理を代行してくれる業者は、経理業務のプロばかりです。
ゆえに、正確かつスピーディーに業務をこなしてくれるわけですが、それとあわせてこうした経理業務のプロから経理上のアドバイスをもらえる点もメリットといえます。
ミスや不正を未然に防ぐための業務フローの設計や改善、法改正に伴うルール変更がよい例でしょう。
経理業務全般に精通していなければ、こういった内容に対する的確なアドバイスはできません。
特に法改正に際しては、法律の施行前に対応しなければ罰則が科せられるリスクもあるため、プロの知見を活用できるのは大きなアドバンテージといえます。
経理業務を外注するデメリット
経理を外注することで、企業はさまざまなメリットを享受できるものの、その反面デメリットはないのでしょうか。
実はないとは言い切れません。
外注する際は、以下の3点に気をつけてください。
【経理業務を外注することで生じるデメリット】
- 自社にノウハウが蓄積されない
- 情報漏えいのリスクがある
- 対応できる業務に制限がある
どういったことなのか、順番に確認していきましょう。
デメリット①自社にノウハウが蓄積されない
経理業務を外部業者に委託する以上、経理業務に関するノウハウは自社内に蓄積されにくくなります。
永続的に経理を外注するのであれば大した問題にはなりませんが、業務を内製化しようとした際、経理をこなせる従業員が一人もいないのでは、動きのとりようがありません。
経理を外注する際はただ任せきりにするのではなく、将来的な内製化を視野に入れていることを伝え、業務の流れやノウハウを教えてもらえるよう努めましょう。
デメリット②情報漏えいのリスクがある
業務を外注するとなると、委託先に社内の機密情報を渡さなければなりません。
そうなると、渡した情報が何らかの要因で外部に流出してしまうリスクもゼロとは言えなくなります。
こういった情報漏えいを防ぐためにも、万全のセキュリティ対策を講じている業者を選ぶ必要があります。
業者の公式ホームページやパンフレットに記載されている情報セキュリティ規約を確認したうえで、秘密保持契約を締結することが大切です。
また、社内システムを外部の業者と共有する場合は、使用できる機能に制限を設けることも検討したいところです。
デメリット③対応できる業務に制限がある
経理代行の業者が担う業務は、契約書に記載された内容のみと決まっています。
そのため、イレギュラーやアクシデントによって生じた突発的な業務には、基本的に対応してもらえないと認識しておいたほうがよいでしょう。
また、業者の営業時間外には、質問を投げかけてもすぐに返答を得られないケースも起こりえます。
そのような事態に備えて、業者と契約を締結する前に、トラブルが起こった際のサポート体制があるのか確認しておく必要があります。
関連記事:経理アウトソーシングでよくある失敗例と対策法を解説
経理業務の外注先を選ぶポイント
経理業務を外注しようと決意されたら、次に考えることは「どんな業者に依頼したらよいのだろうか」ではないでしょうか?
外注先の業者を選ぶ際は、次の4点を基準にしてみてください。
【経理業務の外注先の業者を選ぶポイント】
- 費用対効果を得られるか
- 依頼したい業務をカバーしてくれるか
- 専門性が高いか
- セキュリティ対策が整っているか
以下で詳しく解説するので、この内容をもとに良い外注先を探しましょう。
ポイント①高い費用対効果を得られるか
先ほど“経理を外注することでコストカットが図れる”とお伝えしましたが、具体的な費用を算出したうえで、どれほどの費用対効果が得られるか考慮すべきでしょう。
単純にすべての経理業務を外注するのではなく、得られるメリットとかかるコストを鑑みて、依頼すべき業務範囲を見極める必要があります。
場合によっては、業務の一部だけを委託し、残りの業務を自社で担ったほうがより大きな恩恵を得られる可能性もあるわけです。
また、同じサービスを提供していたとしても、業者ごとに料金は異なります。
より高い費用対効果を得るためにも、業者を選ぶ際は相見積もりを取って料金を比較することをおすすめします。
関連記事:経理業務の外注費用の相場はいくら?外注先の選び方も紹介
ポイント②依頼したい業務をカバーしてくれるか
経理を外注するにあたって、業者がどの業務までカバーしてくれるのか、対応領域の確認は必須です。
経理代行の扱う範囲は広く、さまざまな業務があります。
そのため、自社で「この業務を依頼したい」と考えていたとしても、業者がそれに対応できなければ外注先の候補とはなりえません。
外注業者を選ぶ際には、業務棚卸を実施し経理を細分化したうえで、何を外注したいのかピックアップしておきましょう。
外注したい業務を具体的に把握できていれば、依頼すべき業者は自ずと絞られてくるはずです。
関連記事:経理の業務委託とは?委託できる業務内容を詳しく紹介!
ポイント③専門性が高いか
経理代行を依頼する業者がいかに経理業務に特化しているのかも、確認しておきたいポイントです。
その業者の専門性が高ければ、それだけ高品質なサービスを受けられる可能性が高まります。
とはいえ、どの業者も専門性や品質の高さをアピールしてきますから、実際にそのサービスを利用してみなければ、実力はわからないでしょう。
そこで、少しでも業者選びに成功する確率を上げるには、サービスの導入実績や利用者の口コミを事前に調べておくことです。
実際に導入している企業や良い口コミが多ければ、それだけサービスの品質が高く、利用者から信頼を獲得している証明になります。
ポイント④セキュリティ対策が整っているか
先述しましたが、経理代行の業者を選ぶにあたって、セキュリティ対策への取り組みは必ずチェックしておきたいポイントです。
情報漏えいを防ぐためにも、この点は妥協するわけにはいきません。
そこで、業者がセキュリティ対策に注力しているか見極める基準として覚えておきたいのが、“ISMS認証”です。
ISMS認証は、特定機関から情報セキュリティシステムの審査を受け、国際標準と同等の基準を満たしている場合にのみ与えられる認証制度です。
仮に、依頼しようとしている経理代行の業者がISMS認証を取得していたとすれば、それはセキュリティ対策に注力していることの証明になりえます。
こういった具体的な認証を取得しているか否かも、業者を選ぶ際には確認しておきましょう。
経理業務を外注する際の注意点
経理業務を外注するにあたってはこのほかにも、より費用対効果を高めるために注意しておきたいポイントがあります。
【経理業務を外注する際に注意すべきポイント】
- 提出書類を整理しておく
- 依頼する時期を見極める
コストを少しでも抑えたいとお考えの事業者様は、ぜひ以下の内容を押さえておいてください。
注意点①提出書類を整理しておく
経理代行を依頼する際は、領収書や請求書控えなど、業者に提出しなければならない書類はできるだけ整理しておきましょう。
仮にこれらの書類がきちんと整理されていなければ、“資料の振り分け”も追加で依頼する必要性が生じ、請求される料金が上がってしまうからです。
日頃から書類のファイリングに工夫を施しておけば、経理を外注する際に余計な費用を支払わなくて済みます。
注意点②依頼する時期を見極める
年末調整や決算書の作成といった期限が決まっている業務の代行は、日数に余裕をもって依頼することをおすすめします。
なぜなら、期日までの猶予が短くなるほど業務依頼が集中するため、そのぶん追加料金を請求されることがあるからです。
年末年始や決算期など、期日付きの業務が発生しがちな時期の駆け込み依頼は、極力避けたほうが無難です。
経理を外注する際の費用は業務の内容や量によって異なる
今回は、経理業務を外注した際にかかる費用の相場をお伝えしました。
仮に記帳を依頼する場合、一般的な単価は1仕訳につき50~100円程度が目安です。
依頼者の企業規模が大きくなれば、それだけ仕訳数も増えるので、月々の料金が膨らんでいきます。
なお、今回は一般的な費用相場をお伝えしましたが、業者ごとに価格が異なるため、相見積もりを取って料金を比較することをおすすめします。
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