IPO前に会計システムのリプレイスが必要な理由
IPO、つまり株式市場に上場するには、財務報告の信頼性を保証する内部統制が整備されているか確認するための審査を受けなければなりません。
そのため、会計システムも内部統制の要件に対応できている必要があるのです。
本記事では、IPOに向けて会計システムのリプレイスを考えている事業者様に向けて、リプレイスが推奨される理由を解説します。
記事後半では、会計システムの選び方も解説していますので、ぜひご覧ください。
IPO前に会計システムのリプレイスは必要なのか?
結論、IPO(新規公開株式)において、会計システムのリプレイスは必須ではありません。
しかしながら、企業の多くが上場準備を機に会計システムをリプレイス、つまり乗り換えているのが実状です。
ではなぜリプレイスする企業が多いのか、その理由を次項で詳しくお伝えします。
関連記事:上場準備に要する期間はどのくらい?経理業務の重要性も解説
IPO準備段階で会計システムをリプレイスする理由
IPOを控える企業が会計システムをリプレイスするのは、以下の理由にあります。
【会計システムをリプレイスする理由】
- 監査対象となる財務諸表を作成するため
- IT統制を行うため
- 監査難民問題に対応するため
詳しく解説します。
理由①監査対象となる財務諸表を作成するため
財務諸表は、企業の財務状況を外部に示す重要資料です。
IPOを目指す企業にとって、財務諸表の正確性や迅速性を担保しながら作成・公開できれば、各関係者から信頼を得ることにつながります。
財務諸表のほか、監査の対象には、株式市場に上場するために必要な株式数や株主数、時価総額、事業年数、利益額、成長性などがあります。
このような厳しい基準をクリアするには、財務諸表の作成を含む内部統制の要件をカバーした、会計システムを導入する必要があるのです。
関連記事:新しい会計システムに乗り換えるタイミングとポイント
理由②IT統制を行うため
IPOを実現するには、社内のIT統制も欠かせません。
特にIPOを意識しない段階では、内部統制を想定していないような安価で簡易的なパッケージシステムを利用している企業も数多くあるでしょう。
しかし、上場を目指す企業には内部統制の基本的要素の1つとして、ITへの対応が求められています。
ITに関するリスクを管理し、適切にコントロールできる仕組みを構築するためにも、会計システムのIT統制への対応は必須です。
理由③監査難民問題に対応するため
近年の監査難民問題も、企業が会計システムをリプレイスする理由です。
監査難民問題とは、監査法人の人手不足により企業の選別が行われることで、監査法人との監査契約ができない企業が増えていることを指します。
つまり企業が監査法人に選ばれるには、内部統制が整備できた、いわゆる手間がかからない企業であることが欠かせません。
したがって、監査法人から信頼される会計システムを導入することは、監査難民問題を解決するための第一歩になりえるのです。
関連記事:IPOを目指すには内部統制が必須?その理由や目的を解説
IPOに向けて会計システムをリプレイスするタイミング
会計システムをリプレイスすれば、企業はさまざまなメリットを得られることがおわかりいただけたかと思いますが、乗り換えるタイミングはいつが望ましいのでしょうか?
まず、IPO準備のプロセスにおいて、上場の申請を行う時期を“N期(申請期)”、申請前の2期前を“N-2期(直前々期)”、3期前を“N-3期(直前々々期)”といいます。
従来はリプレイスの検討をN-3期、実際のリプレイスをN-2期にするのが一般的でした。
N-3期で受ける監査法人のレビューの結果で、リプレイスを社内で検討し始め、内部統制を構築するN-2期でリプレイスする流れです。
しかし近年では、N-3期やIPO準備前からリプレイスする企業が増えています。
これは、先述した監査難民問題への対応によって、内部統制の整備を今までより早く開始する企業が増え、その結果リプレイス時期も比例して早くなったからです。
ほかにも、上場日が4月以降になる期越え上場や、経済の先行きを不安視する観点から、IPO時期が後ろ倒しになったことも理由として挙げられます。
システムのリプレイスを実施したのはN-2期であっても、IPOそのものが延期されたことで、結果的にリプレイスが早まったケースもあります。
会計システムをリプレイスするスケジュール策定のコツ
会計システムをリプレイスする大まかな時期がつかめたら、次に具体的なスケジュールを策定します。
自社の業務スケジュールと調整しながら、綿密に計画を立てなければなりません。
たとえば現在のシステムを分析して、既存のデータ形式や業務プロセスを見直したら、新たなシステムへの移行時に必要な変更箇所を特定します。
また、乗り換え時期を決める段階で、関係者と密なコミュニケーションを行い、部署間のニーズも反映させます。
会計システムの乗り換えは、この先滅多にあることではないので、手を抜かずに行いましょう。
このようなスケジューリングによって、スムーズな移行と新システムの効果的な運用が可能になります。
関連記事:スタートアップ企業がIPO準備期間に行うべきことを解説!
リプレイスする会計システムの選び方
会計システムを新しくする際は、以下の選び方を参考にしてください。
【リプレイスする会計システムの選び方】
- 新旧システムの並行運用ができるか
- 旧システムからのデータ移行ができるか
- 機能が充実しているか
- カスタマイズ性が高いか
- システム間で連携できるか
- セキュリティ対策が万全か
- 使い勝手が良いか
- サポート体制が整っているか
これらを基準に新しいシステムを選ぶことができれば、運用後に後悔することはないでしょう。
選び方①新旧システムの並行運用ができるか
これまで使用していた旧システムと、新システムを同時に使うことができるかどうかは、非常に重要です。
なぜなら、旧システムからいきなり新システムへ移行するには、大きなリスクが伴うからです。
たとえば、新システムを使いこなせず業務効率が著しく悪化するといった、想定外のことも起こりえます。
そのような場合に備えて、導入初期は、新システムを試験的に使用しながら旧システムを使いつづけるのが安全だといえます。
並行運用せずに新システムを使い始めることもできますが、リスクが高いので、あまりおすすめはできません。
選び方②旧システムからのデータ移行ができるか
経理業務では、前年のデータから残高や取引高を比べることが多いので、旧システムのデータを新システムに移行して、それぞれのデータを比較できる必要があります。
このように設定するとなると、双方のシステムで、異なる形式のデータを合わせなければならないケースも頻発します。
そのため、新システムでは、過去のデータが移行できなくなるリスクも考慮して、リプレイスを検討する段階で、データの互換性について十分に確認しておくことが鉄則です。
また、移行時にかかる作業負担も、導入スケジュールを遅延させないためにも把握しておきましょう。
選び方③機能が充実しているか
IPOを目指す企業であれば、基本的な仕訳入力や財務諸表作成にくわえ、予算管理や複数通貨対応、多言語対応など、さまざまな機能を備えた会計システムが必要になります。
これらの機能は、企業の成長をサポートするだけでなく、監査法人や投資家に対して信頼性の高い情報を提供する際に役立ちます。
さらに、業務を自動化・最適化する機能があれば、社内の業務効率が向上し、ミスなく財務管理を行えるでしょう。
その結果、内部統制の整備にもつながり、上場への準備をスムーズに進めることが可能になるのです。
選び方④カスタマイズ性が高いか
システムを柔軟にカスタマイズできるかどうかも、IPOを目指す企業にとっては必要不可欠です。
これは、企業の成長に伴って、会計処理の複雑さや要求される情報が変化していくためです。
システムのカスタマイズ性が高ければ、その企業独自のニーズに合わせた機能を追加・拡張できるので、上場準備段階の財務分析や、上場後の複雑な会計処理も問題ありません。
また、将来的な事業拡大や新規事業を展開する際も柔軟な対応が可能になるため、長期的な視点で見ても、カスタマイズ性の高さは重要といえます。
選び方⑤システム間で連携できるか
会計システムは、経費精算システムや給与計算システム、購買管理システム、販売管理システムなど、部署の垣根を超えた多くのシステムと連携できます。
複数のシステムを併用する場合は、API連携機能といったシステム間でデータを連携し、利用機能を拡張できるものを選ぶとよいでしょう。
できるだけ自動化されたシステムを導入し、人の手を介さない方法を採用するのがベターです。
選び方⑥セキュリティ対策が万全か
企業の財務データは最機密情報ですから、セキュリティの高さは蔑ろにできません。
財務データの漏洩や改ざんは、ときに企業価値に大きな悪影響を与えます。
クラウド上の会計システムを導入・検討している場合は、以下のセキュリティ機能を備えているかどうかを確認してください。
【セキュリティ対策で見るべき点】
- データの暗号化
- アクセス制限
- 詳細な監査ログの管理
これらの機能によってデータの安全性が確保され、監査法人や投資家からの信頼を得られやすくなります。
また、定期的なセキュリティ監査やテストを実施していれば、より一層安心できるでしょう。
選び方⑦使い勝手が良いか
経理の担当者だけでなく、誰もが使いやすいシステムであることは、非常に大切です。
なぜなら、使いやすさに優れているシステムは、従業員の業務効率を向上させ、人的ミスを減らすことが期待できるからです。
これは、IPO準備における正確な財務報告や内部統制の強化にも直結します。
新しいシステムを導入する際は、デモ版を試用したり、実際に使用したユーザーの口コミを確認したりして精査するのがよいでしょう。
選び方⑧サポート体制が整っているか
新しく導入する会計システムのサポートデスクの充実度も調べておくと、運用後も安心できます。
IPOによるシステムの入れ替えは、そう頻繁にあることではないので、新システムの導入直後は、使い勝手がわからず戸惑ってしまう場合もあるでしょう。
サポートデスクに相談しても、対応がひどければ、日常業務に支障をきたす可能性も否めません。
そのため、知識が豊富なサポートによる、きめ細かな支援や操作の指導は欠かせないのです。
関連記事:IPO準備企業が外注できるバックオフィス業務8種類を解説!
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会計システムのリプレイスは、財務諸表作成や監査難民問題に対応するために推奨されている
本記事では、IPOで会計システムのリプレイスが重要視されている理由を解説しました。
株式上場を控えている企業の会計システムの乗り換えは、財務諸表の作成や、監査難民問題への対応から推奨されています。
乗り換えるタイミングは、申請3期前であるN-3期、実際にリプレイスするのは、2期前であるN-2期が理想であるものの、それより早くても問題はありません。
会計システムの乗り換えを決めたら、綿密に計画を立てる必要があるため、システム選定に自信がなければ、自社に合うものを選んでくれる業者に相談するのがよいでしょう。
オンライン経理のCASTER BIZ accountingでは、IPOに向けたシステムの選定から導入までをサポートしていますので、お気軽にご相談ください。