公開日 2025.01.06 更新日 2025.01.20

IPOの実現にかかる費用はいくら?3段階に分けて紹介

IPO(株式公開)の実現においては、準備時と実施時、そして完了後にそれぞれ多額の費用が発生します。

資金不足に陥ることがないよう、各段階にかかる費用を事前に把握し、資金調達の計画を立てることが大切です。

 

本記事では、IPOの実現に必要な費用を、準備時・実施時・完了後の3段階に分けて紹介します。

費用面に関する疑問を解消したうえで、IPOの準備を円滑かつ着実に進めたい事業者様は、ぜひ最後までご覧ください。

IPOの実現にかかる費用の目安

IPOでは、準備時と実施時だけでなく、IPOの実現後にも継続的な費用が必要です。

具体的な費用は、以下の通りです。

 

IPOの実現にかかる費用の目安

  項目  費用 
IPOの準備時  主幹事証券会社への報酬  年間5,000,000~20,000,000円程度 
IPOコンサルティング会社への費用  年間5,000,000~15,000,000円程度 
監査関連の費用  1,500,000~4,000,000円程度(ショートレビュー)/10,000,000~数千万円程度(準金商法監査) 
上場申請書類の印刷費用  合計2,000,000~5,000,000円程度 
内部統制に関連する費用  年間5,000,000~10,000,000円程度 
弁護士への報酬  年間5,000,000~20,000,000円程度 
IPOの実施時  上場審査料および新規上場料  上場先の市場ごとに異なる 
株式の公募や売出しにかかる費用  ・公募:公募株式数×公募価格×9/10,000 

・売出し:売出し株式数×売出し価格×1/10,000 

で計算する 

証券会社の引受手数料  公募総額の59%程度 
登録免許税  「資本組入額×7/1,000」で計算する 
IPOの完了後  年間上場料(上場維持費)  上場先の市場ならびに上場時価総額によって異なる 
法定開示書類・適時開示書類の作成にかかる費用  年間数百万~数千万円程度 
新株の発行や上場などにかかる費用  それぞれ計算式があるので後述する 
監査費用  年間5,000,000~15,000,000円程度 
株式事務代行機関への委託費用  年間4,000,000~20,000,000円程度 
リーガルチェックにかかる弁護士費用  年間3,000,000~5,000,000円程度 

なお、上記の金額は時価や状況によって変動する可能性があるため、あくまでも参考程度にご確認ください。

「こんなに膨大な費用がかかるのか」と驚かれるかもしれませんが、IPOが実現すれば、資金調達力が格段に向上するだけでなく、社会的信用度や知名度も上がります。

 

その結果、よりスキルの高い人材を確保することにもつながります。

IPOの実現によって、その後のビジネスも有利に展開できるようになるため、コスト面のデメリットとそれによって得られるメリットを天びんにかけて判断するとよいでしょう。

 

いよいよ次項からは、IPOの実現に必要な費用とその詳細をそれぞれの段階ごとにお伝えしていきます。

IPOの準備時にかかる費用

IPOを実現するには、最短で2年、平均3~5年ほどの準備期間を要します。

この準備期間にかかる費用はどのくらいで、その内容はどのようなものなのでしょうか。

 

【IPOの準備時にかかる費用】

  • 主幹事証券会社への報酬
  • IPOコンサルティング会社への費用
  • 監査関連の費用
  • 上場申請書類の印刷費用
  • 内部統制に関連する費用
  • 弁護士への報酬

まずは、IPOの準備時に必要なこれら6種類の費用を見ていきましょう。

主幹事証券会社への報酬

主幹事証券会社に支払う報酬は、年間5,000,000~20,000,000円程度です。

一般的に、IPOを行う際は複数の証券会社が株式を引き受け、販売を担当します。

 

そのなかで、中心となって株式を引き受けるのが主幹事証券会社です。

 

主幹事証券会社は、IPOのスケジュール管理や公開価格の決定のほか、投資家への説明会の開催や市場調査など、IPO手続き全般のアドバイザーとして重要な役割を果たします。

IPOコンサルティング会社への費用

主幹事証券会社とは別にIPOに向けたサポートを希望する場合は、IPOコンサルティング会社に依頼します。

その際の費用は企業の規模や依頼内容によるものの、一般的に年間5,000,000~15,000,000円程度です。

 

IPOコンサルティング会社を利用すると、審査に必要な書類作成や決算開示体制の整備などを、専門知識に基づいて代行してもらえます。

 

関連記事:IPOコンサルティング会社への依頼に必要な費用はいくら?

監査関連の費用

IPOの準備時には、監査法人による“ショートレビュー”と“準金商法監査”が必要になります。

 

企業の規模によって費用は異なりますが、ショートレビューには1,500,000~4,000,000円程度、準金商法監査には10,000,000~数千万円程度の費用がかかります。

 

なおショートレビューとは、IPOを目指す企業が財務やガバナンスに関して、アドバイスをもらったり、改善点の指摘を受けたりするプロセスのことです。

 

そして準金商法監査は、IPO直前の2期に係る財務諸表に対して行われる監査のことで、上場企業と同じ基準で実施されます。

上場申請書類の印刷費用

上場申請書類を作成する証券印刷には、通常、合計2,000,000~5,000,000円程度の費用が発生します。

 

IPOの審査に必要な書類には、作成方法のルールが設けられており、機密保持についても十分留意する必要があります。

 

そのため、専門の印刷会社に依頼するのが一般的です。

内部統制に関連する費用

IPOを行ううえでは、内部統制を構築して評価することが求められるため、J-SOXコンサルティングという内部統制構築の専門家に依頼する場合があります。

 

内部統制の構築を目的に、J-SOXコンサルティングを利用する場合、年間5,000,000~10,000,000円程度必要です。

J-SOXコンサルティングでは、全社・業務処理・決算・ITといった統制システムを見直したうえで、内部統制を構築していきます。

 

関連記事: IPOを目指すには内部統制が必須?その理由や目的を解説

弁護士への報酬

IPOを進めるにあたっては、会社法や金融商品取引法などの法令順守が求められるため、弁護士と顧問契約を結ぶのが一般的です。

 

その報酬には、年間5,000,000~20,000,000円程度がかかり、実際の費用は弁護士の稼働時間や契約内容によって変動します。

IPOの実施時にかかる費用

続けて、IPOを実施する際にかかる主な費用と内容を紹介します。

 

【IPOの実施時にかかる費用】

  • 上場審査料および新規上場料
  • 株式の公募や売出しにかかる費用
  • 証券会社の引受手数料
  • 登録免許税

これら4種類の費用を理解することが、IPO全体のスケジュールの把握にもつながるため、しっかりと押さえておきましょう。

上場審査料および新規上場料

IPOの申請時には上場審査料を、審査通過後には新規上場料を支払います。

これらの金額は、市場区分ごとに異なります。

 

市場区分ごとの上場審査料と新規上場料

株式市場  上場審査料  新規上場料 
プライム市場  4,000,000  15,000,000円 
スタンダード市場  3,000,000  8,000,000 
グロース市場  2,000,000  1,000,000 

なお上記の金額には、消費税および地方消費税額は含まれていません。

上場審査料はIPOの申請日の翌月末、新規上場料は審査通過後、上場日の翌月末までに支払う必要があると定められています。

 

参照元:日本取引所グループ 

株式の公募や売出しにかかる費用

IPOでは、株式の公募や売出しを行う場合、証券取引所に手数料を支払います。

 

手数料は発行する株数に応じて変動し、公募は「公募株式数×公募価格×9/10,000」、売出しは「売出し株式数×売出し価格×1/10,000」で計算することができます。

証券会社の引受手数料

IPOで株式を公募する場合、証券会社がその株式を購入する“引受”を行い、その対価として手数料を支払う必要があります。

引受手数料の目安は、公募総額の5~9%程度です。

 

ただし、公募と発行の価格に差をつけ、その差額を引受手数料とする“スプレッド方式”の場合、企業は引受手数料を拠出せずに済みます。

登録免許税

IPOの実施時には登録免許税を支払う必要があり、計算式は「資本組入額×7/1,000」です。

 

資本組入とは、企業に損失が出た際の備えとして、資本準備金の一部を資本金に組み入れる仕組みのことです。

この資本組入額に応じて、支払う登録免許税が変動します。

IPOの完了後にかかる費用

最後に、IPOの実現後にかかる費用と内容を確認していきます。

【IPOの完了後にかかる費用】

  • 年間上場料(上場維持費)
  • 法定開示書類・適時開示書類の作成にかかる費用
  • 新株の発行や上場などにかかる費用
  • 監査費用
  • 株式事務代行機関への委託費用
  • リーガルチェックにかかる弁護士費用

これら6種類の費用は上場を維持するために毎年必要になるので、ランニングコストとして把握しておきましょう。

年間上場料(上場維持費)

上場企業は、自社が上場している証券取引所に対して年間上場料を毎年支払わなければなりません。

年間上場料は、上場先の市場ならびに上場時価総額によって異なります。

 

年間上場料

上場時価総額  プライム市場  スタンダード市場  グロース市場 
50億円以下  960,000円  720,000円  480,000円 
50億円を超え250億円以下  1,680,000  1,440,000  1,200,000 
250億円を超え500億円以下  2,400,000  2,160,000  1,920,000 
500億円を超え2,500億円以下  3,120,000  2,880,000  2,640,000 
2,500億円を超え5,000億円以下  3,840,000  3,600,000  3,360,000 
5,000億円以上  4,560,000  4,320,000  4,080,000 

上場審査料と新規上場料と同様に、上記の金額には消費税および地方消費税額は含まれていません。

 

参照元:日本取引所グループ

法定開示書類・適時開示書類の作成にかかる費用

法定開示書類の作成には、年間数百万~数千万円程度の費用が発生すると見込んでおきましょう。

これは状況に応じて、書類作成を外部に委託する必要があるためです。

 

IPOの実現後、金融商品取引法24条に基づき、上場企業は“有価証券報告書”や“内部統制報告書”などの法定開示書類を金融庁に毎年提出することが義務づけられます。

 

また証券取引所の上場規則においては、上記とは別に、より充実した情報開示の実施を目的に適時開示書類の提出が求められています。

 

参照元:金融商品取引法 

新株の発行や上場などにかかる費用

上場後、株式の売出しを行う場合や、上場企業が新たに発行する株式を上場する場合にも、費用が必要です。

それぞれの費用は、以下の計算式に基づいて算出されます。

 

新株の発行や上場などに伴う料金の計算式

上場株式等を発行または処分する場合  1株あたりの発行価格×発行または処分する株式数×1/10,000 
新株予約権の対象となる株式が上場株であり、新たな新株予約権を発行する場合  (新株予約権の発行価格×新株予約権の総数+新株予約権の行使に伴う払込金額×新株予約権の対象株式数)×1/10,000 
上場株式等の売出しを行う場合  売出し株数×売出し価格×1/10,000 
新株を上場する場合  1株あたりの発行価格×発行または処分する株式数×8/10,000 

これらの費用は、新株発行を行った日が含まれる月の翌月末日までに支払う必要があります。

監査費用

監査費用は企業の規模によって異なりますが、年間5,000,000~15,000,000円程度がかかると見込んでおきましょう。

 

上場企業は、金融商品取引法第193条の2第1項に基づき、特別な利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けることが義務づけられています。

 

この監査証明は、企業の実績を開示して会社内部の透明性を担保することを目的としています。

 

参照元:金融商品取引法

株式事務代行機関への委託費用

株式事務代行機関に委託する際は、年間4,000,000~20,000,000円程度の費用が必要です。

上場企業は証券取引所の上場規則によって、証券取引所が承認する代行機関に株式事務を委託することが義務づけられています。

 

株式事務とは、株主名簿の管理や書き換え、株主総会招集通知の発送といった株式に関する事務全般のことです。

 

上場企業の株主は多数に及ぶため、株式事務にミスが発生すると影響が大きくなります。

このリスクを回避する目的で、代行機関への株式事務の委託が定められているのです。

リーガルチェックにかかる弁護士費用

相談の頻度やプランなどにもよりますが、上場に関する事務に限定した場合でも、弁護士費用として年間3,000,000~5,000,000円程度を想定しておきましょう。

 

上場企業が金融庁や証券取引所に提出する開示書類は、金融商品取引法や上場規則に照らして、法的な観点から確かめる必要があります。

 

また上場に伴って、クレーム対応の件数も増加することも考えられます。

そのため継続的に相談できるよう、顧問弁護士と契約しておくのが一般的です。

 

スムーズな対応が期待できるため、IPOの準備時と同じ弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

IPOの実現には膨大な費用がかかるため、計画的な準備が欠かせない

今回は、IPOの実現に必要な費用の目安を段階ごとに紹介しました。

IPOの実現には、準備時と実施時だけでなく、完了後も継続的に費用がかかるため、想像以上に多額の費用が必要になる場合があります。

 

しかし、適切なスケジュールを立て、IPOに成功すればコストと手間に見合ったリターンが得られる可能性は大いにあるといえます。

同時に、IPOでは専門的な知識や関連機関との連携が求められるため、自社のみで実現するのは効率的ではありません。

 

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