公開日 2025.03.18更新日 2025.03.19

連結会計システムとは?搭載されている機能や導入のメリット

「連結会計業務の効率が悪い」「連結財務諸表が経営戦略にうまく活用できていない」というのは、多くの企業様に共通する課題でしょう。

こうした悩みを解決してくれるのが、連結会計システムです。

本記事では、連結会計システムの概要を、搭載されている主な機能や導入するメリットなどから解説します。

自社のさらなる成長のために、連結会計システムの導入をお考えの経営者様は、ぜひ最後までご覧ください。

連結会計システムの概要

連結会計システムとは、連結会計をより効率的に行うためのツールのことです。

導入することで、企業グループ全体の財務状況や業績に対する円滑な分析が叶い、経営や投資に必要となる正確な情報が得られるようになります。

従来の連結会計業務では、複数の子会社や関連会社の財務データをすべて手作業で集計する必要があったため、膨大な時間と費用を要しました。

しかし、連結会計システムの登場により、財務データ収集から連結財務諸表の作成までを自動で行えるようになったのです。

連結会計システムを利用すれば、業務の効率化はもちろん、人件費の削減も図れます。

連結会計と個別会計の違い

連結会計以外の会計業務には個別会計がありますが、これらは会計の範囲が異なります。

個別会計は、企業が単体の財務データを算出し、その財務状況や業績を把握する会計業務です。

これに対し、連結会計には、子会社や関連会社など連結対象のすべての企業を含みます。

子会社や関連会社の資産や収益、負債、費用などの財務データが反映され、企業グループ全体としての財務状況、ないし業績が把握できます。

このように個別と連結の2つの会計では、財務データの対象範囲が異なり、連結会計のほうが企業グループ全体の財務状態を表しているといえるのです。

連結会計システムでは、個別会計により算出された財務諸表をもとに連結会計を行います。

連結会計システムの主な機能

連結会計システムには連結決算業務を支援する、いくつもの機能が搭載されています。

【連結会計システムの主な機能】

  • データ収集・統合機能
  • 自動消去処理機能
  • 通貨換算機能
  • 税務計算機能
  • 予測機能

以下では、これら5つの便利機能について解説します。

データ収集・統合機能

連結会計システムのもっとも基本的な機能が、データ収集・統合機能です。

このデータ収集・統合機能により、企業グループ内各社の財務データの収集から、統合までをすべて自動化できるわけです。

その際には、子会社や関連会社によって異なるフォーマットを使用している場合でも、統一のフォーマットに自動で変換してくれます。

これにより、手作業でのデータの入力や変換が必要なくなるため、手間を削減できるとともに入力漏れや誤入力を防げるようになります。

自動消去処理機能

自動消去処理機能は、連結会計では欠かせない相殺処理を行う際に役立つ機能です。

相殺処理とは、企業グループ間の取引による収益や負債の重複計上を取り除く会計処理です。

この機能によって、企業グループの正しい財務状況を反映した連結財務諸表を作成することができます。

この処理は、非常に煩雑かつ専門的な会計知識を要するため、従来の手作業での連結会計ではミスが発生しやすい部分でした。

こういった場面に自動消去処理機能を搭載した連結会計システムを使うことで、この相殺処理の自動化が叶い、処理の正確性や効率の向上が可能になったのです。

通貨換算機能

グローバル企業であれば、連結会計システムに搭載されている通貨換算機能が役立ちます。

通貨換算機能は、海外の子会社や関連会社の財務データを、連結会計で使用する通貨に自動換算してくれる機能です。

これにより各国の現地通貨に基づいて作成された財務諸表を、いちいち本国通貨に換算処理しなくとも管理できるようになります。

また、為替レートの自動取得まで行ってくれるため、為替の変動にも柔軟に対応できます。

税務計算機能

連結会計システムの税務計算機能を活用すれば、税務処理も安心です。

税務計算機能は、連結グループ全体の税務計算を自動で行う機能です。

企業グループ間の取引や配当金の授受なども考慮したうえで、複雑な法人税・地方税の計算を自動で正確に行います。

これにより、税務リスクの管理が徹底され、企業のコンプライアンスを保つことができます。

予測機能

連結会計システムを導入することにより得られる利点は、会計処理の自動化だけではありません。

予測機能を活用して、経営における意思決定の最適化も図れます。

予測機能は、これまでの財務データを参考に、未来の財務状況を予測する機能です。

今後の企業の収益性やキャッシュフローを予測できるので、適切な資源配分や、資金調達・投資の判断などが可能になります。

連結会計システムのなかには、複数の要因を想定してその影響や結果を分析する“シナリオ分析”の機能を搭載しているものもあり、リスクの特定や対策にも生かせます。

連結会計システムを導入すべき企業の特徴

連結会計システムの導入は、子会社や関連会社を複数もつ大企業では特に急がれますが、グローバル企業であれば規模を問わず必要になります。

大企業は、抱えている子会社や関連会社の数が多い分、連結会計業務の作業量は膨大です。

そのため、連結会計システムの導入による業務の効率化の恩恵は、多大なものになるでしょう。

グローバル企業においては先に説明した通貨換算機能が、海外の子会社と連結会計を行う際に役立ちます。

また、もし国際財務報告基準である“IFRS”に対応した連結会計システムを導入し、それを適用した財務諸表を作成すれば、海外からの投資を受けられる可能性も高まります。

連結会計システムを導入するメリット

連結会計システムについて理解を深めてきたところで、ここからは導入のメリットと注意点を解説します。

システムの導入可否を判断するうえでは、享受できる利点と導入にかかわるコストを把握しておく必要があります。

まずはメリットから確認していきましょう。

【連結会計システムを導入するメリット】

  • 連結会計業務の効率化が叶う
  • データの精度向上が図れる
  • 内部統制の強化が期待できる
  • 財務状況を把握しやすくなる

それでは、以下で詳細について解説していきます。

メリット①連結会計業務の効率化が叶う

これまでも触れてきた通り、連結会計システム導入の最大のメリットはやはり、業務の効率化を図れる点でしょう。

連結会計システムの活用により、膨大な財務データの収集や統合の作業が自動化され、連結財務諸表のスムーズな作成が叶います。

経理担当者は手間のかかるこれらの業務から解放され、そのほかの会計業務に注力できるようになります。

また、帳簿の一部ないし大部分を電子化して作業を行えるので、在宅勤務によって進めることも可能です。

メリット②データの精度向上が図れる

コンピュータの自動計算により、データの精度が上がるのも、連結会計システムを導入するメリットです。

連結の対象となる企業のデータを一元管理できるため、データの整合性が保たれます。

さらに、エラー値が出たとしても、連結会計システムであれば発生源をたどることも容易です。

子会社や関連会社への確認・修正依頼といったやりとりも、最小限に抑えられるでしょう。

メリット③内部統制の強化が期待できる

連結会計システムの導入により、内部統制の強化も期待できます。

連結会計システムでは、財務データの入力や承認、修正などの履歴をすべてシステム上で管理します。

これが不正リスクの抑制につながり、より徹底した内部統制を図れるのです。

こうした内部統制の強化は、経営の透明性を高めます。

経営の透明性が高いほど、企業の信用力は向上するため、銀行からの資金調達や投資も受けやすくなるといったメリットも生み出します。

メリット④財務状況を把握しやすくなる

企業グループ全体の財務状況を可視化できるのも、連結会計システムを利用するメリットの一つです。

連結会計システムでは、企業グループ全体の財務データを統合し、一元かつリアルタイムで把握できます。

これにより、親会社だけでなく子会社や関連会社の財務状況の把握が叶い、計画との乖離がある場合には迅速に対策を講じることができるようになります。

新しい技術やビジネスモデルが続々と登場する現代社会において、こうした動きに迅速に対応できる体制が整っていれば、競争力維持に大きな武器となるでしょう。

連結会計システムを導入する注意点

連結会計システムを導入する前に気に留めておきたいのは、以下の2点です。

【連結会計システムを導入する際の注意点】

  • 導入までに期間を要する
  • コストがかかる

詳細を順に確認していきましょう。

注意点①導入までに期間を要する

連結会計システム導入の障壁のひとつは、導入までにある程度期間を要することです。

連結会計システムを導入して、連結会計業務の効率化を図るには、自社内で会計の仕組みが整っていることが大前提です。

連結会計には適切な財務データや複雑な処理が必要なため、それのもととなる会計処理が正確なものでないと連結財務諸表の正確性も損なわれてしまいます。

そのため連結会計システムの導入前には、スムーズな連携が叶うよう、自社の会社システムを整備しておく必要があり、これには多くの時間を要します。

実装に至るまでには、数か月、場合によっては1年以上かかることもあるでしょう。

連結会計システムを導入し、稼働させるには、これくらいの期間を要することを念頭に置きつつ、計画的に会計の仕組みの整備を実施する必要があります。

注意点②コストがかかる

連結会計システムの導入には、まとまった初期費用が必要なので計画的に予算を確保しなければなりません。

一般的に連結会計システム導入の初期費用は、4,000,000~8,000,000円程度と数百万円単位で発生します。

その主な内訳は、セキュリティ対策の整ったシステムの購入費用のほか、ライセンス費用、メンテナンスの保守費用などです。

最近では初期費用を抑えて固定の月額料金のみで使用できるクラウド版の連結会計システムもリリースされていますが、こちらは連結できる会社数が少ない可能性があります。

こうした点も鑑みて、連結会計システムに高い費用対効果が見込めるのか慎重に判断したうえで、導入の必要性を見極めましょう。

連結会計システムの導入から利用までにかかる費用の相場

連結会計システムを導入し、利用していくうえでかかる費用の合計は導入形態や規模、ユーザー数などによって異なるため、一概に相場としてお伝えすることはできません。

具体的な料金を知りたい場合には、連結会計システムを提供する各企業に資料請求や問い合わせを通じて確認する必要があります。


関連記事:会計システムの導入にかかる費用相場とおすすめ会計ソフトを紹介

連結会計システムを選ぶ際のポイント

数ある連結会計システムから、自社に合ったものを選ぶ際には以下のポイントを踏まえて検討してみてください。

【連結会計システムを選ぶ際のポイント】

  • 操作性
  • 機能の充実度
  • サポート体制
  • 導入形態

これらのポイントを参考に、自社に必要なものが揃っている連結会計システムを選べば、業務の円滑化に実際に役立つでしょう。

ポイント①操作性

連結会計システムを選ぶ際にはまず、操作性に注目したいところです。

自動化が進んでいるとはいえ、連結会計は専門的な会計知識が必要な難易度の高い業務です。

そのため、直感的なインターフェースを備え、担当者が使いやすい設計であることが求められます。

操作性を重視するのであれば、入力支援やエラーチェックといった、操作性を向上させる機能の搭載有無を確認するとよいでしょう。

また、チュートリアルやマニュアルが充実していると、学習コストを抑えつつ、短期間で運用まで至れます。

ポイント②機能の充実度

自社に必要な機能を有しているかどうかも、連結会計システムを決めるうえでは重視したいポイントです。

子会社・関連会社の数や業種、経営スタイルなどにより、連結会計で必要な機能は異なります。

たとえば、子会社や関連会社が多い場合には、複数社との連結に対応できる機能が求められます。

海外に拠点があるグローバル企業には、通貨換算機能や多言語に高精度で対応できるハイスペックな機能を望みたいところです。

また、将来的な事業拡大や組織変更なども考慮して、拡張性や柔軟性の高いシステムであるかどうかも確認しておきましょう。

ポイント③サポート体制

連結会計システムを選ぶ際には、サポート体制の充実度のチェックも欠かせません。

連結会計システムには、長期的かつ安定して運用できることが求められます。

そのため、トラブル発生時に、迅速かつ適切に対応してくれるサポート体制が整っているかどうかは重要なポイントです。

専門のサポート担当者の有無や問い合わせの方法、対応可能な時間帯などは必ずチェックしておきましょう。

また連結会計では、関連する法令の改正が頻繁に起こるため、その都度システムのアップデートも行う必要があります。

こうした変化に応じてどのようなサポートが受けられるのかも、あわせて確認しておくことは必須です。

ポイント④導入形態

連結会計システムには、オンプレミス型とクラウド型の2種類の導入形態があります。

オンプレミス型はシステムの稼働に必要なサーバーやネットワーク機器、ソフトウェアを自社で保有し運用する導入形態です。

また、クラウド型はインターネットに接続してシステムやソフトウェアを利用するサービス形式を指します。

この2種類では導入から運用まで異なる部分が多いため、両者の違いを理解したうえで自社に適した形態のシステムを選びたいところです。

オンプレミス型とクラウド型の連結会計システムの違い

 

オンプレミス型

クラウド型

コスト

初期費用が多くかかる

初期費用としての支払い額は少ないが、月額費用がかかる

カスタマイズ

比較的自由にできる

サービスの範囲内に限られる

保守管理

自社で管理する

提供企業が管理する

セキュリティ

高いセキュリティ体制を作れる

提供企業の環境に依存する

オンプレミス型の連結会計システムは、初期費用がある程度高くなっても、将来を想定したカスタマイズ性や高いセキュリティ体制を望む企業様におすすめです。

反対に、初期費用を抑えて、保守管理やセキュリティ管理も委託したいのであればクラウド型のほうが適しています。

このように、導入形態も大きく2つあるので、自社に合った連続会計システムをよく吟味して選択しましょう。

連結会計システムの導入で連結会計業務の自動化・効率化を目指そう

本記事では、連結会計システムについて、主な機能や導入のメリットを解説しました。

連結会計システムとは、親会社と子会社や関連会社の財務諸表を一つに統合する連結会計を行うツールのことです。

財務データを自動で収集・統合してくれる機能をはじめ、通貨換算機能や税務計算機能といった便利機能が多数搭載されています。

こうした機能に魅力を感じ、連結会計業務の効率化を図りたい場合には、連結会計システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、クラウド型連結会計システムの導入の事前準備に不安を抱える企業様は、ぜひオンライン経理のCASTER BIZ accountingの導入支援をご活用ください。

豊富な実績をもつスタッフが、円滑かつ適切な導入をサポートいたします。