原価管理システムとは?機能や選び方とともに詳しく解説

「原価管理が難しくて大変……」「どうしても多くの時間がかかってしまう……」と、お悩みではないですか?
原価管理システムを活用すれば、複雑な原価管理を自動化できるため、導入を検討しているご担当者様もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、原価管理システムの機能や選び方を解説します。
システムを活用し、自社の原価管理業務を効率化したいご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
原価管理とは
本題に入る前に、まずは原価管理について整理しておきましょう。
原価管理は、自社商材の製造から販売までにかかる、すべてのコストを管理する業務です。
自社商材の利益や販売するまでにかかるコストの把握だけではなく、損失の改善に向けた施策に必要な情報を扱うため、高い精度と効率性が求められます。
ひと口に原価といっても、その種類は多岐にわたります。
原価には、人件費や光熱費、家賃などのさまざまなコストが含まれるため、管理が重要なのは特定の業種に限りません。
たとえば、材料費が発生しないIT業界や広告業界では、プロジェクト形式で業務を遂行するため、そこで発生する人件費やシステム利用料などを原価として捉えます。
原価管理を正確に行わなければ、販売・提供までのコストや利益を正確に把握できず、損失が生じてしまうかもしれません。
そのため、原価管理は業界・業種を問わず、会社が利益を得るために重要な業務なのです。
原価管理の目的
会社の利益を確保・拡大するために重要な原価管理ですが、その目的を理解することが大切です。
原価管理で得た情報は、利益の獲得に向けた施策に役立てられるだけではなく、経営に関するさまざまな業務と強く結びついています。
以降で、主な4つの目的を紹介しますので、ご参照ください。
利益を把握するため
自社の利益を正確に把握するために、まずは商材を販売するまでにかかるコストを把握しなければなりません。
利益とは、販売価格から製造費や人件費などのコストを差し引いた額のことです。
そのため、自社の商材を販売するまでに、把握している以上のコストがかかっている場合、見えないところで赤字が発生している可能性があります。
このような事態を防ぐためには、原価管理による利益の把握が不可欠です。
利益の最大化を目指すため
無駄なコストの削減は、利益の最大化につながります。
たとえば製造業では、製品の製造にかかるすべての費用をもとに加算した“予定原価”と、実際の製造にかかった費用を比較します。
もし差額が生じた場合は、その原因を究明することで、無駄なコストの削減に向けた体制の見直しや、利益率の高い製品の把握が可能です。
原価管理を適正に行うことで、利益の最大化に向けた施策の立案に役立ちます。
リスクに備えるため
適正に原価を管理することによって、環境の変化に伴う会社への影響を最小限に抑えられます。
たとえば、為替の変動による仕入れ価格の高騰や、自然災害などの環境の変化が生じた際に、利益を確保するためには原価を見直さなければなりません。
日頃の原価管理を徹底して行うことで、環境の変化にスムーズに対応でき、自社への影響を抑える対策を講じられるでしょう。
財務諸表を作成するため
原価管理は、生産や販売だけではなく、経理業務や経営判断にも大きく関わる業務です。
企業は原価管理のデータをもとに、財務諸表を作成します。
この財務諸表は、税務申告やステークホルダーへの情報提供に使用するため、自社の社会的信用を支える重要な資料です。
また、適切な経営判断を下すためにもなくてはならないものです。
このように、経理業務で行われる資料の作成にも、原価管理で得た情報が欠かせません。
原価管理の手順
ここまで、原価管理の重要性と目的について解説しました。
では、実際にどのような手順で行われるのでしょうか。
原価管理の手順
- 標準原価の設定
- 原価計算
- 差異分析
- 改善
上記の差異分析は、事業課題の洗い出しと改善策の立案につながるため、特に重要な工程です。
また、改善策を講じるためには、正確でタイムリーなデータが必要となります。
次項では、原価管理システムの詳細についてついて解説していきます。
原価管理システムとは
前置きが長くなりましたが、ここからは本題である原価管理システムについてお伝えします。
原価管理システムとは、原価に関わる複雑な業務を自動で効率的に実行できるシステムのことです。
複雑な原価計算をはじめ、さまざまな機能で経営をサポートしてくれます。
会社経営に関わる重要な情報を、高い精度で扱うことができるため、多くの企業で採用されています。
次項では、原価管理システムの機能について解説していきます。
原価管理システムの機能
原価管理システムには、経営に役立つさまざまな機能があります。
主な機能として挙げられるのは、以下の3つです。
【原価管理システムの機能】
- 原価計算機能
- データ収集機能
- 分析・シミュレーション機能
では、詳しく見ていきましょう。
原価計算機能
原価管理システムでは、必要な項目を入力するだけで、さまざまな方法の原価計算を自動で行うことが可能です。
たとえば、個々の製品の原価を見る個別原価計算や、製造に関わる原価の一部を計算する部分原価計算などが挙げられます。
原価計算を手作業で行うとなると、ミスを誘発するだけではなく、多くの手間がかかります。
しかし、原価管理システムを活用すれば、複雑な原価計算を自動化できるわけです。
ほかにも、期間原価計算や直接原価計算といった計算方法も搭載されているため、データを多角的に分析して、経営の改善策を講じたい場合にぜひ活用したい機能です。
データ収集機能
原価管理システムを既存のシステムと連携することで、情報共有を行い、業務の効率化を図ることができます。
原価管理をするうえで「別のシステムで原価データを活用したい」「既存システムのデータを原価管理に加えたい」と考えても、データの抽出に手間がかかってしまいます。
原価管理システムを、会計や生産管理などを統合するERPシステムと連携することで、経営情報の一元管理を実現可能です。
データ収集機能は、業務を効率化する際に一役買ってくれる機能です。
分析・シミュレーション機能
分析・シミュレーション機能は、経営戦略を講じるための情報抽出や、リスク管理をサポートする機能です。
たとえば、差異分析を行って、想定していた標準価格よりも実際原価が高い場合、原因を究明したのちに改善が必要です。
その際、原価管理システムを活用することで、各工程のコストを分析し、問題点を見つけることができます。
また、原材料費の高騰や、景気変動などを想定した原価を分析すると、あらかじめ対策を講じるため、用意にリスク管理が可能です。
原価管理システムを導入すべき企業の特徴
前項では、原価管理システムの主な機能について解説しました。
導入を検討しつつも「そもそも自社に導入すべきなのかどうかがわからない」と、お悩みのご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは、原価管理における自社の課題を整理してみましょう。
下記の課題を抱える企業は、原価管理システム導入することで、経営に役立てられるかもしれません。
原価管理システムを導入すべき企業の特徴
- 原価計算が複雑で、業務の負担が大きい
- 原価計算の精度が低い
- 為替をはじめとする原価の変動を考慮したシミュレーションができていない
上記のなかに、自社に該当する課題はありましたか。
先述したように、原価計算は複雑なため、手間がかかるうえ人的ミスを誘発するリスクがあります。
また、経営を安定させるためには、為替変動や原材料費の高騰など、状況に応じて柔軟な対応が必要です。
そのような場合、原価管理システムを活用することで、これらの業務を円滑に進めることができます。
原価管理における課題をいち早く解消するためには、システムを導入するのが近道です。
原価管理システムを導入するメリット
原価管理システムには、複雑な計算やデータ管理を自動で行ってくれること以外にも、さまざまなメリットがあります。
【導入するメリット】
- 人件費を削減できる
- ほかのシステムと連携できる
- 経営判断に活かせる
以下で、各メリットの詳細について解説します。
メリット①人件費を削減できる
原価管理システムを導入する際のメリットとして、人件費の削減が挙げられます。
原価管理は複雑なので、多くの労力を要することとなり、その分人件費もかかります。
また、施策や経営判断に活用するためには、スピードと正確さが求められるため、担当者にとっては大きな負担です。
そうしたときに原価管理システムを活用することで、売り上げや原価を自動集計できるため、管理にかかる手間を大幅に減らせるうえ、人件費の削減にもつながります。
メリット②ほかのシステムと連携できる
原価管理システムを既存の会計システムや販売管理システムと連携させることで、基幹業務を統合するERPのような経営情報の一元管理が可能です。
「既存のシステムが他社製品の場合は連携できないのでは?」と思われがちですが、近年は他社製品とも連携できる原価管理システムも増えています。
原価管理に要する作業を、システムが一挙に引き受けてくれるため、データ管理をはじめとする業務効率化が叶います。
メリット③経営判断に活かせる
原価管理システムを活用すると、データの管理だけではなく、原価のデータをもとにしたシミュレーションが可能です。
原価変動を考慮した予算や、製品価格を算定することで、原材料費の高騰や災害といった不測の事態において、スムーズな経営判断を下す際に役立ちます。
また、システムで算出した数字を分析し、市場に出す商品の数を調整することで、利益の向上を図るためにも活用できます。
原価管理システムを導入するデメリット
前項では、原価管理システムを導入するメリットについて解説しましたが、一方でデメリットもあります。
それは、自社の業務に適したシステムを選定しなければ、業務の効率化を図ることができないことです。
たとえば、既存システムとの連携を前提に導入したものの、うまく連携できないと、システムを単体で運用しなければならず、業務効率化にはつながりません。
また、自社の業務に適したデータ管理ができないといった問題も発生してしまいます。
とはいえ、裏を返せば自社の業務に即した原価管理システムであれば問題ないということなので、選定の際にはこの点に留意することが大切です。
原価管理システムの選び方
原価システムには、各業界に特化したものから、事業規模に即したものまで、豊富な種類があり、また提供形態も異なります。
これらを踏まえたうえで、以下では自社に適した原価管理システムを導入する際の選び方をお伝えします。
自社の課題解決に向けて、システムを導入したいとお考えのご担当者様は、ぜひご覧ください。
自社の業務に適しているか
まずは、原価管理システムに搭載されている機能が、自社の業務に適しているのかどうかを確認しましょう。
原価管理システムのなかには、どのような業界でも使える汎用性の高いものと、特定の業界向けに作られたものがあります。
原価の計算方法は、業界によって異なり、「どの原価管理システムを導入しても問題ない」というわけではないため、自社の原価管理業務に即したシステムを選びましょう。
くわえて、自社の課題や利用目的を明確にすることも重要です。
単純な原価管理だけを目的とするのであれば、多機能な製品を導入しても持て余してしまい、余計に費用がかさむこととなります。
原価管理システムを選定する際は、自社の業界や業務に適していることを確認したうえで、必要な機能を整理しましょう。
既存のシステムと連携できるか
原価データは、決算報告書の作成や、賃借対照表の作成などで使用するため、それに関連するシステムと原価管理システムを連携することで、さらなる効率化に期待できます。
しかし、導入を検討している原価管理システムが、社内のシステム環境に対応していなければ、作業の効率化を図れません。
原価管理システムをうまく活用するためには、既存システムとの連携が可能かどうかを確認する必要があります。
カスタマイズの可否
原価管理システムの導入後、自社に合わせたカスタマイズが可能かどうかも確認しておきたいポイントです。
原価管理システムは、パッケージをそのまま導入しただけでは、実務にマッチしない可能性があるからです。
原価管理システムは、自社の業務やシステム環境に合わせたカスタマイズが必要となります。
必要となる機能や仕様を事前に洗い出しておくことで、導入したシステムをスムーズに活用できます。
原価管理システムの価格相場
原価管理システムの価格相場は、搭載している機能や、導入する企業の規模などによって大きく変わります。
また、サーバーを自社に設置するオンプレミス型や、インターネットを介して利用するクラウド型といった提供形態の違いによっても価格が異なります。
このように、原価管理システムは種類が豊富なため、明確な相場を示すことが難しいのです。
原価管理システムの導入にあたっては、自社での利用目的や課題、予算などと照らし合わせながら比較・検討するとよいでしょう。
原価管理システムを導入することで多方面から経営をサポートできる
今回は、原価管理システムについて解説しました。
原価管理システムは、高い精度と効率が求められる原価管理を自動化し、コストの把握や経営判断など、多方面から企業をサポートします。
また、汎用性の高いものから各業界に特化したものまで豊富な種類があるため、自社の目的や課題を明確にしたうえで選ぶと良いでしょう。
原価管理システムを導入したうえで、さらに経理業務を効率化したいのであれば、外部の業者に委託するのも一つの手です。
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