公開日 2026.10.02更新日 2026.10.02

社会福祉法人会計基準とは?計算書類・企業会計との違い・最新の改正動向を解説

「社会福祉法人の経理を担当することになったが、会計基準が難しい」「企業会計との違いや最新の改正内容を知りたい」

このような悩みを抱える社会福祉法人の経理担当者・事務長の方は多いのではないでしょうか。

社会福祉法人会計基準は、一般企業の会計とは目的も仕組みも大きく異なるため、初めて担当する方にとってはとっつきにくく感じられるかもしれません。

本記事では、社会福祉法人会計基準の基本的な仕組みから、企業会計との違い、作成が必要な計算書類、実務で押さえておきたい特有の勘定科目、会計監査人の設置基準、そして2026年時点の最新の改正動向までを体系的に解説します。

経理体制を整えるためのポイントも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

社会福祉法人会計基準とは?基本情報

社会福祉法人会計基準とは、すべての社会福祉法人が従うべき会計処理のルールを定めたものです。

基本情報として、以下の3点を押さえておきましょう。

  • 法的根拠(社会福祉法第45条の23、平成28年厚生労働省令第79号)
  • 会計基準省令・運用上の取扱い・運用上の留意事項の3層構造
  • 制定・改正の沿革

法的根拠(社会福祉法第45条の23、平成28年厚生労働省令第79号)

すべての社会福祉法人は、社会福祉法第45条の23の規定に基づき、厚生労働省令である「社会福祉法人会計基準」(平成28年3月31日厚生労働省令第79号)に従って会計処理を行うことが法律上義務付けられています。

この会計基準は、法人全体の財務状況を明らかにし、経営分析や外部への情報公開を可能にすることを目的としています。

なお、社会福祉法人の会計年度は、原則として4月1日から翌年3月31日までの1年間と定められています。

会計基準省令・運用上の取扱い・運用上の留意事項の3層構造

社会福祉法人会計基準は、3つの階層からなる文書体系によって運用されています。

土台となる「社会福祉法人会計基準省令」には、基準の本文・勘定科目・計算書類の様式が定められています。

次に「運用上の取扱い」(局長通知)があり、附属明細書や財産目録の様式など実務的な作成要領が示されています。

さらに「運用上の留意事項」(課長通知)では、勘定科目ごとの説明や減価償却の償却率表など細部の運用ルールが定められています。

この3層構造を理解しておくと、疑問点をどの文書で確認すればよいか判断しやすくなります。

制定・改正の沿革

現行の会計基準に至るまでには、段階的な改正の歴史があります。

平成12年に旧社会福祉法人会計基準が制定された後、平成23年に新会計基準が策定され、平成24年4月から適用が始まりました。

平成27年度には全法人への完全移行が図られ、平成28年3月に省令として位置づけられています。

直近では令和3年11月に改正が行われ、令和4年4月から施行されました。

社会福祉法人会計と企業会計の違い

社会福祉法人会計は、株式会社などの企業会計とは根本的な目的が異なります。

主な違いは以下の3点です。

  • 「利益」ではなく「増減差額」、配当ではなく内部留保
  • 一取引二仕訳(資金収支と事業活動の2つの計算書に反映)
  • 会計単位が法人全体+拠点区分で、内部取引を相殺消去する

「利益」ではなく「増減差額」、配当ではなく内部留保

株式会社の会計は、利益を獲得し株主に配当することを前提としています。

一方、社会福祉法人には出資者持分という概念がなく、剰余金を配当することもありません。

そのため、企業会計における損益計算書に相当する書類として「事業活動計算書」が用いられ、そこでは利益ではなく「サービス活動増減差額」という表現が使われます。

生み出された増減差額は配当されることなく、法人内部に留保され、将来の福祉サービスの継続や充実のために活用されます。

一取引二仕訳(資金収支と事業活動の2つの計算書に反映)

社会福祉法人の会計処理で特徴的なのが「一取引二仕訳」という考え方です。

これは、支払資金の増減を伴う1つの取引を、資金収支計算書と事業活動計算書という2つの計算書類の両方に反映させるために、それぞれ別の仕訳を起こす仕組みです。

例えば、現金による経費の支払いが発生した場合、資金収支計算書側では支払資金の減少として、事業活動計算書側では費用の発生として、それぞれ独立した形で記帳します。

企業会計の複式簿記に慣れている方ほど戸惑いやすいポイントであるため、具体例とあわせて仕組みを理解しておくことが重要です。

会計単位が法人全体+拠点区分で、内部取引を相殺消去する

企業会計では基本的に法人全体を1つの単位として計算書類を作成しますが、社会福祉法人会計では、法人全体に加えて「拠点区分」ごとにも計算書類を作成する必要があります。

複数の施設や事業所を運営している法人では、拠点ごとの経営状況を把握できるようにするためです。

そのため、拠点区分間で資金や物品のやり取りがあった場合には、法人全体で集計する際にその内部取引を相殺消去する処理が必要になります。

社会福祉法人が作成する計算書類

社会福祉法人が決算時に作成しなければならない計算書類は、大きく以下の4つに分類されます。

それぞれ様式番号(第一号第一様式など)に基づいた体系で整理されており、役割が明確に分かれています。

  • 資金収支計算書
  • 事業活動計算書
  • 貸借対照表
  • 財産目録・附属明細書・注記(16項目)

資金収支計算書

資金収支計算書は、当該会計年度における支払資金の増加および減少の状況を明らかにする書類です。

予算との対比が求められる点が特徴で、事業活動による収支、施設整備等による収支、その他の活動による収支という3つの区分で表示されます。

企業会計のキャッシュフロー計算書と似た性質を持ちますが、対象とする資金の範囲や作成の目的が異なります。

事業活動計算書

事業活動計算書は、企業会計における損益計算書に相当する書類です。

当該会計年度における全ての純資産の増減内容を明らかにすることを目的としており、サービス活動増減の部、サービス活動外増減の部、特別増減の部という3つの区分で構成されています。

最終的な結果は「当期活動増減差額」として表示され、利益という概念は使用されません。

貸借対照表

貸借対照表は、当該会計年度末現在における全ての資産、負債および純資産の状態を明らかにする書類です。

企業会計の貸借対照表と似た構造を持ちますが、純資産の部が「基本金」「国庫補助金等特別積立金」「その他の積立金」「次期繰越活動増減差額」という社会福祉法人特有の項目で構成されている点が大きな違いです。

財産目録・附属明細書・注記(16項目)

3つの計算書類に加えて、財産目録や附属明細書(別紙3)の作成も義務付けられています。

附属明細書には拠点区分資金収支明細書や借入金明細書など複数の種類があり、法人の規模や拠点数に応じて必要な書類が定められています。

また、計算書類には継続事業の前提に関する注記や重要な会計方針の注記など、合計16項目にわたる注記事項の記載が求められます。

なお、一部の項目については拠点区分の計算書類において省略が認められる場合もあるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。

事業区分・拠点区分・サービス区分の3階層

社会福祉法人会計基準では、会計単位を「事業区分」「拠点区分」「サービス区分」という3つの階層で管理します。

事業区分は社会福祉事業・公益事業・収益事業という事業の種類、拠点区分は施設・事業所という場所を単位とし、予算管理の基本単位としても機能します。

サービス区分は介護保険法などの制度・法令上のサービス種類による区分です。

この3階層に対応して、法人全体・事業区分別・拠点区分別ごとに計算書類の様式(第一号〜第四号様式)が定められており、区分間の内部取引は法人全体での集計時に相殺消去されます。

社会福祉法人会計基準の特有項目

社会福祉法人会計基準には、企業会計にはない独自の勘定科目や処理ルールが数多く存在します。

実務上とくに押さえておきたい項目は以下の5点です。

  • 支払資金
  • 基本金(第1号〜第3号)
  • 国庫補助金等特別積立金
  • 基本財産とその他の固定資産
  • 引当金(徴収不能・賞与・退職給付)とリース・減価償却

支払資金

支払資金とは、流動資産と流動負債の差額(一部の項目は除外されます)を指す概念で、資金収支計算書の基礎となるものです。

企業会計における現金預金の概念とは範囲が異なるため、どの科目が支払資金に含まれ、どの科目が除外されるのかを正しく理解しておく必要があります。

基本金(第1号〜第3号)

基本金は、社会福祉法人特有の純資産項目で、寄附金の性質に応じて第1号から第3号に分類されます。

第1号基本金は基本財産を取得するための寄附金、第2号基本金は借入金の返済に充てるための寄附金、第3号基本金は法人設立時の運転資金等に充てるための寄附金です。

それぞれ組入れや取崩しに関するルールが定められているため、寄附金を受け入れる際には目的に応じた適切な分類が求められます。

国庫補助金等特別積立金

国庫補助金等特別積立金は、施設整備のために国や地方公共団体から交付された補助金等を積み立てる科目です。

補助金で取得した固定資産の減価償却が進むにつれて、その進捗に応じて積立金を取り崩していく仕組みになっています。

補助金の交付と資産の減価償却を対応させるための重要な処理といえます。

基本財産とその他の固定資産

社会福祉法人の固定資産は、定款に定められた「基本財産」と、それ以外の「その他の固定資産」に区分されます。

基本財産は法人の事業運営の基盤となる重要な資産と位置づけられており、処分や担保提供を行う際には所轄庁の承認が必要になる点に注意が必要です。

引当金(徴収不能・賞与・退職給付)とリース・減価償却

社会福祉法人会計基準で認められている引当金は、徴収不能引当金、賞与引当金、退職給付引当金の3種類に限定されています。

また、リース取引については、リース料総額が300万円以下、またはリース期間が1年以内の場合に通常の賃貸借処理を認める少額特例が設けられています。

減価償却についても、厚生労働省が示す償却率表に基づいて処理を行う考え方が採用されています。

間違いやすい勘定科目と決算時の整合性チェック

実務では、似た名称の勘定科目を混同しやすい傾向があります。

例えば「事業未収金」と「未収金」「未収補助金」、「事業未払金」と「未払金」、「事業費」と「事務費」の区分は誤りやすいポイントです。

決算時には、これらの区分に加え、前期末支払資金残高が資金収支計算書と一致しているか、積立金と積立資産の残高が整合しているか、国庫補助金等特別積立金の残高が対象固定資産の帳簿価額と対応しているかを、チェックリストで確認することが望まれます。

会計監査人の設置基準と指導監査

一定規模以上の社会福祉法人には、外部専門家による法定監査が義務付けられています。

前年度の収益が30億円超、または負債が60億円超の法人は「特定社会福祉法人」として、社会福祉法第37条・同法施行令第13条の3に基づき、公認会計士または監査法人による会計監査人の設置が義務化されています。

対象法人の規模基準を段階的に引き下げる方針が示されていましたが、2018年の事務連絡で当面延期とされ、時期は本記事執筆時点で未定です。

会計監査人による法定監査は、所轄庁が実施する指導監査とは目的・実施主体が異なるため、両者の違いを理解しておくことが重要です。

社会福祉法人会計基準の最新改正動向(2026年)

社会福祉法人会計基準は、社会情勢や関連制度の変化にあわせて継続的に見直されています。

直近の省令改正は令和3年11月12日、施行は令和4年4月1日です。

令和5年3月には、他の法人形態の会計処理適用に関するQ&Aが厚生労働省から発出されました。

さらに令和8年7月には第4回「社会福祉法人会計基準等検討会」が開催され、社会福祉連携推進法人制度の見直しや、企業会計の新リース会計基準(2027年4月適用予定)への対応が検討されています。

この議論を踏まえ、2026年秋頃には改正素案が示される見通しです。

記事公開のタイミングによっては素案がすでに公表されている可能性があるため、公開直前に厚生労働省の検討会ページで最新状況をご確認ください。

社会福祉法人の経理体制を整えるポイント

複雑な会計基準に対応しながら安定した経理体制を維持するためには、以下の3点がポイントになります。

  • 社会福祉法人会計に対応した会計ソフトを導入する
  • 経理規程を整備し、担当者の属人化を防ぐ
  • 社会福祉法人会計に詳しい専門家・経理代行を活用する

社会福祉法人会計に対応した会計ソフトを導入する

一取引二仕訳や拠点区分別の計算書類作成といった特有の処理は、手作業では大きな負担となります。

社会福祉法人会計基準に対応した専用の会計ソフトを導入することで、仕訳の自動反映や様式に沿った書類出力が可能になり、業務効率化とミスの削減につながります。

会計ソフトの選び方やクラウド会計が求められる理由もあわせて参考にしてみてください。

経理規程を整備し、担当者の属人化を防ぐ

会計処理のルールが複雑であるがゆえに、特定の担当者に業務が集中しやすいという課題もあります。

厚生労働省が公表している「小規模社会福祉法人向け経理規程例」などを参考に自法人の経理規程を整備し、誰が対応してもルールに沿った処理ができる体制をつくることが、担当者の急な退職や経理の属人化によるリスクを減らすことにつながります。

社会福祉法人会計に詳しい専門家・経理代行を活用する

会計基準の改正への対応や決算業務には専門的な知識が求められます。

社内のリソースだけで対応することが難しい場合には、福祉業界の会計に精通した税理士や、社会福祉法人会計に対応できる経理代行サービスを活用することも有効な選択肢です。

経理代行サービスの比較や経理BPOとは何かもあわせてご覧ください。

専門家の知見を取り入れることで、コンプライアンスを維持しながら経理業務の負担を軽減できます。

社会福祉法人の経理課題(属人化・拠点管理・複雑な仕訳)を解決するCASTER BIZ accounting

社会福祉法人会計基準に基づく一取引二仕訳や拠点区分会計は専門性が高く、特定の担当者に業務が属人化しやすい傾向があります。

経理アウトソーシングサービスのCASTER BIZ accountingは、採用率1%のプロ経理チームが複数名体制でバックアップし、突発的な離職やブラックボックス化を防ぎます。

実際の事例として、経理担当者の突発的な離職が課題だったPRONI株式会社では、業務のクラウド化とマニュアル化により、担当者に依存しない体制を構築しました。

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会計基準の改正や指導監査にも柔軟に対応できるチーム体制により、社会福祉法人の法制度対応と業務効率化を同時に実現します。

委託範囲や費用の目安は料金プランをご確認ください。

社会福祉法人会計基準を理解し、改正に対応できる経理体制を整えよう

社会福祉法人会計基準は、法人の非営利性・公益性を前提とした独自の考え方に基づいて構築されており、3層構造の通知体系、企業会計との違い、3つの計算書類、拠点区分などの階層構造、一取引二仕訳や基本金といった特有の勘定科目まで、押さえるべきポイントは多岐にわたります。

会計監査人の設置基準や継続的な省令改正への対応も欠かせません。

まずは自法人の経理体制が基準に沿って整備されているかを点検してみることをおすすめします。

会計ソフトの導入や経理規程の整備、専門家の活用を組み合わせることで、複雑な会計基準にも安定して対応できる体制を構築できます。

属人化や拠点管理、法改正対応といった課題を自社だけで解決することが難しい場合は、CASTER BIZ accountingのような経理代行サービスの活用もあわせて検討してみてはいかがでしょうか。