経理の仕事はAIでなくなる?なくなる業務・残る業務と今すべき対策を解説

「AIの進化で経理の仕事はなくなるのか不安」「AIを導入したら経理担当者は不要になるのか知りたい」
このような疑問を持つ経理担当者や経営者の方は多いのではないでしょうか。
生成AIやクラウド会計の急速な普及により、経理業務の自動化が進む一方で、「自分の仕事がなくなるのでは」という漠然とした不安を抱く方も少なくありません。
実際に、2015年の調査で「経理事務員」が代替可能性の高い職業として挙げられたことも、この不安を後押ししています。
本記事では、AIによってなくなる可能性が高い業務と、AI時代でも人間に残る業務の違いを整理したうえで、経理担当者に求められるスキルや、企業が経理体制を整えるための具体的なステップまでを解説します。
結論:経理の仕事はなくならないが「定型業務」は確実に減る
結論からお伝えすると、経理という職種そのものがAIによって完全になくなる可能性は高くありません。
仕訳入力や請求書処理、経費精算の確認作業といった定型業務は、AIによって自動化が進んでいきます。
これからの経理担当者に求められるのは、「作業をこなす経理」から「判断する経理」への役割転換です。
| 区分 | 具体的な業務 |
|---|---|
| なくなる業務(AIが代替) | 仕訳入力、請求書・領収書のデータ化、経費精算の一次チェック、入金消込、定型レポート作成 |
| 残る業務(人が担う) | 例外取引の判断、税務・会計基準の解釈、内部統制・監査対応、経営層への報告、AI出力の検収 |
「経理はAIでなくなる」と言われる3つの理由
「経理はAIでなくなる」と言われる背景には、主に以下の3つの理由があります。
- 野村総研×オックスフォード大の調査で経理事務員が「代替可能性が高い職業」に
- AI-OCR・自動仕訳・生成AIの急速な普及
- 電子帳簿保存法・インボイス制度でデータ化が加速
野村総研×オックスフォード大の調査で経理事務員が「代替可能性が高い職業」に
2015年、野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究により、国内601職種の代替確率を分析した結果、労働人口の約49%がAIやロボット等で代替可能になるという試算が発表されました。
この調査で「経理事務員」が代替可能性の高い職業として列挙されたことが、「経理はAIでなくなる」という言説が広まった大きなきっかけです。
ただし、この数値はあくまで技術的な代替可能性を示した試算であり、実際の職種消滅を意味するものではありません。
AI-OCR・自動仕訳・生成AIの急速な普及
銀行口座やクレジットカードとの連携による自動仕訳、紙やPDFの証憑をAIが読み取るAI-OCR、ChatGPTなどの生成AIの活用により、これまで人手に頼っていた「入力作業」の多くが自動化できるようになりました。
こうしたツールは会計ソフト各社から相次いでリリースされており、実際に業務効率化を進める企業が増えていることも、経理職の将来に対する不安が広まる一因といえます。
電子帳簿保存法・インボイス制度でデータ化が加速
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が進んだことで、請求書や領収書といった証憑の電子化が加速し、AIが処理しやすいデータが企業内に揃ってきました。
これらの制度対応をきっかけにペーパーレス化やクラウド化が一気に進み、結果としてAI活用のハードルが下がったといえます。
ただし、制度対応そのものは要件の理解や社内フローの整備が必要な、人が担うべき業務である点にも注意が必要です。
データで見る経理職の現状:求人倍率と需要
「経理の仕事がなくなる」という不安に対し、経理の将来性を考えるうえで実際の労働市場データを見てみましょう。
経理事務の有効求人倍率は0.59倍と応募過多の状態にある一方、経理課長クラスは1.57倍と、管理・判断のできる人材は不足しています。
平均年収も経理事務484.6万円に対し経理課長は885.3万円と差が大きく、判断力やマネジメント力を持つ人材の価値が高まっていることを示しています。
※有効求人倍率は厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」、平均年収は厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」をもとにした数値です。
AIによってなくなる(減る)経理業務
技術的な進化により、AIによってなくなる可能性が高い業務として、以下の5つが挙げられます。
いずれもルールが明確で、繰り返し発生する定型的な作業が中心です。
- 仕訳入力・伝票入力
- 請求書・領収書のデータ化(AI-OCR)
- 経費精算の一次チェック
- 入金消込・支払照合
- 定型レポート・月次資料の作成
仕訳入力・伝票入力
銀行口座やクレジットカードの明細をシステムが自動で取り込み、過去の履歴から勘定科目を自動推定する仕組みが普及したことで、仕訳の手入力にかかる工数は大幅に減少しています。
請求書・領収書のデータ化(AI-OCR)
紙やPDFで受け取った請求書・領収書といった証憑を、AI-OCRが自動で読み取り、仕訳・支払データを自動生成する仕組みが一般化しつつあります。
取引先名や金額、日付といった項目を人が転記する必要がなくなるため、証憑の枚数が多い企業ほど、大幅な業務時間の削減効果が期待できます。
経費精算の一次チェック
規程違反や重複申請、領収書の不備といった経費精算の確認作業は、AIによる自動検知が可能になり、これまで担当者が目視で行っていた一次チェックの負担が大きく軽減されつつあります。
今後は、AIが機械的に検知できない例外的なケースのみを人が確認するという役割分担が主流になるでしょう。
入金消込・支払照合
請求データと入金データの突合作業も自動化が進んでおり、大量の取引をシステムが自動で照合できるようになっています。
取引件数が多い企業ほど、消込作業に要していた時間を他の業務に振り向けられるメリットが大きく、導入効果を実感しやすい領域といえるでしょう。
定型レポート・月次資料の作成
試算表や予実対比表といった、決まったフォーマットで作成する定型帳票は、会計システムからの自動出力に置き換わりつつあります。
これまで資料作成に費やしていた時間を、数値の分析や経営層への報告内容の検討に充てられるようになる点も見逃せない変化です。
AI時代でも残る・価値が高まる経理業務
一方で、AI時代でも人間に残り、むしろ価値が高まる業務として、以下の5つが挙げられます。
- 例外取引・イレギュラー対応の判断
- 税務・会計基準の解釈と法改正対応
- 内部統制・監査対応・不正リスクの評価
- 経営層への報告と数字の解釈(管理会計・FP&A)
- AIの出力を検収し、ルールを更新する業務
例外取引・イレギュラー対応の判断
前例のない取引や複雑な契約に伴う会計処理は、AIだけでは正しく判断できません。
取引の背景や過去の経緯、契約書の細かな条件を踏まえたうえで、どのように会計処理すべきかを見極めるには、人による知識と経験に基づく判断が不可欠です。
税務・会計基準の解釈と法改正対応
新しいリース会計基準など、会計や税務のルールが変更された際に、その内容を正しく解釈し、自社の業務やシステムにどのように適用するかを設計するのは、依然として人の役割です。
制度の趣旨を理解し、実務に落とし込む力が求められます。
内部統制・監査対応・不正リスクの評価
責任を伴う承認業務や、監査法人との折衝、不正リスクの評価といった業務は、引き続き人が担う必要があります。
内部統制の仕組みを整備し、不正防止対策を講じることも、企業の信頼性を支えるうえで欠かせない、人にしか担えない重要な業務です。
経営層への報告と数字の解釈(管理会計・FP&A)
会計データという数字を経営の言葉に翻訳し、経営層の意思決定を支援する管理会計・FP&A的な業務は、AIが代替しにくく、むしろ経理担当者の価値がより高まる領域です。
数字の背景にある事業の状況を理解し、次の一手を提案できる人材が求められています。
AIの出力を検収し、ルールを更新する業務
AIが自動で処理した結果を確認・修正し、判断のルールを継続的に更新していく「検収」の役割は、AI活用が進むほど新たに重要性を増していきます。
AIの精度を維持・向上させるためには、誤りを発見して学習ルールにフィードバックする人の関与が欠かせません。
AIエージェントの登場で経理の役割はどう変わるか
経理業務の自動化技術は、決められた手順を実行する「RPA」、データから推定・判断を補助する「AI」、そして指示を受けて複数の工程を自律的に実行する「AIエージェント」へと進化してきました。
今後の経理業務は、AIエージェントが定型処理を実行し、人はその結果を検収・承認する分業モデルへと移行していくと考えられます。
AI時代の経理担当者に求められる5つのスキル
AI時代を生き抜くために、経理担当者には以下の5つのスキルが求められます。
専門知識に加えて、AIを使いこなす力や、人にしかできないコミュニケーション力が重要性を増していきます。
- 会計・税務の専門知識
- データ分析・活用スキル
- AI・ITリテラシー
- 業務プロセス設計力
- 経営視点とコミュニケーション能力
1.会計・税務の専門知識
AIが出した処理結果が正しいかどうかを判断するための土台として、簿記や税務の知識はこれまで以上に重要になります。
AIはあくまで過去のパターンに基づいて処理を行うため、AIの提案をうのみにせず、専門知識に基づいて内容を検証できる力が求められます。
2.データ分析・活用スキル
会計データから経営上の課題を読み取り、改善提案につなげる分析力が求められます。
単に数字を集計するだけでなく、数字の変化の背景を読み解き、次のアクションにつなげる視点が重要になります。
3.AI・ITリテラシー
自社に合ったツールを選定・設定し、使いこなす力に加え、生成AIに対して的確な指示を出し、必要な情報を引き出すスキルも欠かせません。
ツールの仕組みをある程度理解しておくことも重要です。
4.業務プロセス設計力
AIに任せる範囲と人が確認する範囲を明確に切り分け、業務フロー全体を再設計する力が必要になります。
単にツールを導入するだけでなく、運用ルールや承認フローの仕組みそのものを設計する視点が求められます。
5.経営視点とコミュニケーション能力
経営層や他部署、税理士などの専門家と、数字をもとに対話し、意思決定を後押しするコミュニケーション能力が重要です。
経理の視点から経営に提言できる人材が、今後ますます求められるようになります。
企業がAI時代の経理体制を整えるためのステップ
企業がAI時代に対応した経理体制を整えるためには、以下の4つのステップで進めることをおすすめします。
- 業務を「定型」「判断」「例外」に仕分ける
- 件数が多くルール化しやすい業務からAI化する
- AIの結果を確認・検収する体制を決める
- AIだけで難しい部分はBPO・専門家と組み合わせる
業務を「定型」「判断」「例外」に仕分ける
まずは現状の経理業務をひとつずつ棚卸しし、AI化できる定型業務と、人の判断が必要な業務、そして稀に発生する例外対応とを分類することから始めます。
業務全体を可視化することで、どこから着手すべきか、どこは人に残すべきかが明確になります。
件数が多くルール化しやすい業務からAI化する
仕訳入力や経費精算のチェックなど、処理件数が多くルール化しやすい業務から着手すると、投資対効果を実感しやすくなります。
いきなり全業務を対象にするのではなく、小さな成功体験を積み重ねることが、社内でのAI活用を定着させる近道です。
AIの結果を確認・検収する体制を決める
AIの処理は完璧ではないため、誰がどのタイミングで、どのような基準で結果を確認するか、確認担当者とルール更新の運用をあらかじめ決めておくことが重要です。
担当者を明確にしないまま導入すると、確認作業そのものが形骸化してしまうリスクがあります。
AIだけで難しい部分はBPO・専門家と組み合わせる
例外対応や制度変更への対応、専門的な税務判断など、自社だけでの対応が難しい部分については、外部の専門家や経理代行サービスと組み合わせることも有効な選択肢です。
自社リソースと外部の専門性を適切に組み合わせることで、無理なくAI活用を進められます。
経理のAI活用を実現する3つの選択肢を比較
経理業務にAIを取り入れる方法には、大きく3つの選択肢があります。
| 選択肢 | 特徴 |
|---|---|
| 自力でAI導入 | コストは低いが設計・検証・運用を自社で担う必要がある |
| 従来型の経理代行 | 安心感はあるが処理速度やコスト削減効果には限界がある |
| ハイブリッド経理 | AIの速度とプロの検収を組み合わせ、速度と品質を両立できる |
自力でのAI導入は自由度が高い反面、社内に相応の知見が求められます。
従来型の経理代行は安心感がある一方、AI化によるスピードアップは期待しにくいのが実情です。
近年注目されているのが、AIの実行速度とプロの検収を組み合わせたハイブリッド型の経理代行です。
AI実行×プロの検収「ハイブリッド経理」Caster NEO accounting
「AIで経理の仕事がなくなる」のではなく、「AIに定型処理を実行させ、プロが二重検収・判断・例外対応を行うハイブリッド体制」こそが、AI時代の経理における最適解といえます。
Caster NEO accountingは、Slackで指示するだけでAIエージェントが仕訳・請求書処理・経費精算・月次決算を実行し、プロが二重検収を行う「ハイブリッド経理」サービスです。
- 経理体制の立て直し:HR Forceでは、担当者の退職で崩れた体制をクラウド会計freeeへの移行と業務の再設計で立て直し、専任の経理担当者を置かずに運用できる体制を構築。人件費をおよそ1名分削減
- 月次決算の早期化:シー・コネクトでは、経理業務の約8割を委託し、9〜10営業日かかっていた月次決算を2〜3営業日短縮
- 属人化の解消:ウンログでは、経理担当者の急な退職をきっかけに体制を整備し、確認したいときにすぐ月次推移表で財務状況を把握できる状態を実現
- ガバナンス強化:グリーンモンスターでは、マニュアルとワークフローの整備により、少人数体制でもダブルチェックが機能する仕組みを構築
Slackからの指示だけでAIが仕訳や突合を高速実行し、プロが二重検収を行う。
この「実行」と「検収」を分けた設計によって、スピードと品質を両立できる点が、Caster NEO accountingならではの強みです。
経理はなくならず「AIを使いこなす経理」へ進化する
ここまで見てきたように、仕訳入力や請求書処理、経費精算の一次チェックといった定型業務はAIによって着実に減っていく一方、例外取引の判断や税務・会計基準の解釈、経営層への報告といった業務は、むしろ経理担当者の価値が高まる領域です。
経理という職種がなくなるのではなく、「作業をこなす経理」から「AIを使いこなし、判断する経理」へと役割が変化していくと捉えるのが実態に近いでしょう。
自社だけでAI活用の設計・検証・検収まで対応することが難しい場合は、Caster NEO accountingのようなハイブリッド経理サービスの活用も、有力な選択肢のひとつです。
まずは資料をチェックし、自社に合った活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。






