決算早期化のメリットは?ボトルネックとなる課題と改善策

決算の時期を早めることには多くのメリットがあるため、“決算早期化”を進める企業は多いのではないでしょうか。
しかし、実現するには業務内容の見直しやプロセスの改善が不可欠であり、一朝一夕にはいきません。
そこで本記事では、ボトルネックとなる課題を一つずつ紹介し、決算早期化を実現するための改善策をお伝えします。
「決算業務を効率化し、生産性を高めたい」とお考えの企業様は参考にしてください。
決算早期化とは
決算早期化とは、企業が決算業務を通常よりも早い時期に完了させ、決算情報を迅速に開示する取り組みを指します。
そもそも決算は、一定期間の収益や費用を集計し、企業の経営成績や財務状況を明らかにする重要な手続きです。
これらの情報が早期に公開されれば、経営層や利害関係者による意思決定のスピード向上につながります。
なお東京証券取引所は、決算発表の集中を避ける観点から、上場企業に対して決算早期化を要請しています。
参照元:株式会社東京証券取引所「決算短信・四半期決算短信 作成要領」
決算早期化のメリット
決算早期化は、単なる業務の効率化にとどまらず、企業の経営において多くのメリットをもたらします。
ここでは、代表的な4つのメリットを解説します。
メリット①経営判断の迅速化
決算早期化による最大のメリットは、経営判断を迅速に行える点です。
企業の意思決定は、正確な財務状況に基づいて行われるため、決算が早期に完了すれば、それだけ経営戦略の立案や方針転換を早めることができます。
特に市場環境の変化が激しい現代では、スピーディーな意思決定が企業の成長に直結するといっても過言ではありません。
経営判断が遅れたことにより、利益を失うことも珍しくないため、売上や利益の正確なデータを早期に把握し、問題の特定や事業戦略の見直しを進めることが求められます。
メリット②決算業務の負担軽減
決算の早期化に伴い、決算業務全体の負担軽減も期待できます。
なぜなら業務プロセスを見直す過程で無駄を省き、効率化を進められるためです。
たとえば、会計処理の自動化やペーパーレス化を推進すれば、作業時間を削減できるだけでなく、ヒューマンエラーの発生リスクも抑えられます。
これにより、担当者の負担が減り、より重要な業務にリソースを割けるようになるというわけです。
メリット③利害関係者からの信頼獲得
決算早期化は、取引先や投資家などの利害関係者からの信頼向上にもつながります。
決算時に作成する決算書は、企業の財務状況を明らかにする重要な資料であり、これを迅速に開示できる企業は、透明性の高い経営を行っていると評価されやすくなるのです。
特に投資家にとって最新の経営状況を早期に把握できることは、投資判断を下すうえでの大きなメリットです。
また、金融機関にとっても融資の可否をスムーズに判断する要素となります。
メリット④人件費の削減
決算早期化に伴う業務の効率化により、従業員の作業時間の短縮が期待できます。
その結果、人件費が削減され、経営コストの最適化にもつながるはずです。
決算期には、多くの企業で経理部門の残業が増加する傾向にありますが、決算早期化に取り組むことで業務のピークを分散し、効率的な運営が可能となります。
従業員にとっても、残業時間の短縮は働きやすい環境づくりにつながり、ワークライフバランスの向上にも寄与するでしょう。
決算早期化のボトルネックとなる問題点
決算早期化によるさまざまな利点については理解できているものの、何かしらの問題点を理由に、なかなか取り組みを進められていない企業も少なくありません。
以下では、企業が決算早期化を推進する際に、ボトルネックとなることが多い問題点を挙げたうえで、それぞれの改善策を紹介します。
問題点①申請プロセスに時間を要している
決算早期化を妨げる要因の一つに、申請プロセスの遅延があります。
特に営業交通費や交際費、出張費などの経費申請がスムーズに進まない場合、経理部門に必要な書類やデータが届くまでに時間を要し、決算処理の遅れにつながります。
たとえば、紙ベースのアナログな申請方法や、会計システムと連携されていない独立した管理方法は、申請が遅れる原因です。
紙の書類を回して承認を得る仕組みでは、担当者全員の承認を得るまでの待ち時間が発生し、手続きが長引いてしまいます。
また、デジタルデータでの申請であっても、会計システムと統合されていなければ、各従業員の情報の手入力や、入力後のデータの確認が必要となり、その分時間を要します。
このような申請プロセスの非効率性を解消するためには、経費申請の電子化やワークフローの最適化が有効です。
申請から承認までのプロセスを迅速化すれば、決算業務の負担を軽減できるでしょう。
問題点②経理部門の人材が不足している
経理部門の人材不足も、決算早期化の大きな障害となります。
そもそも経理業務は専門性が高く、人材の採用や育成が難しいという課題があります。
くわえて、月末月初は通常の経理業務と決算業務が重なり、担当者の負担が増えるため、少人数で対応する体制では決算を早期化する余裕はとてもありません。
また、特定の担当者に業務が集中することで属人化が進み、業務効率の低下を招くケースも少なくないでしょう。
この問題を解決するためには、業務の標準化やマニュアル化を進め、特定の人に依存しない体制を整えることが重要です。
経理業務の一部をアウトソーシングして、人的リソースの不足を補い、決算業務のスムーズな進行を支援することも有効な手段といえます。
問題点③勘定科目の金額確定が遅い
決算を迅速に進めるためには、勘定科目ごとの金額を早めに確定しなければなりません。
しかし、現場の処理が遅れてしまうと、勘定科目の金額確定が先送りになり、決算早期化が遠のきます。
具体的には、他部署からの伝票提出の遅延や、請求書の回収・承認プロセスの長期化によって、経理部門の処理が滞るケースが多くみられます。
また、子会社や関連会社との連携が必要な場合、それぞれの決算スケジュールや処理フローの違いも障害になりえるでしょう。
改善策としては、社内の経理ルールを明確にし、経費精算や請求書提出の締め切りを厳格に設定することが挙げられます。
さらに、経理システムの自動化を進めることで、伝票処理の迅速化を図り、勘定科目の金額をスムーズに確定することが可能になります。
問題点④グループ会社間で会計方針やシステムが違う
グループ会社間で会計方針や仕組みが異なっていると、連結決算の調整に多くの時間と労力を要します。
子会社ごとに勘定科目の名称や書式が異なっていれば、それらを統一するために手作業での修正作業が発生し、決算作業が遅延しやすくなります。
また、異なる会計システムを使用している場合、データの統合や変換作業が必要です。
システム間の互換性が低い場合は、手作業でのデータ入力や確認作業が発生し、業務負担がさらに増大します。
この課題を克服するには、グループ全体で導入する会計システムを統一するのが理想です。
完全な統一が難しい場合でも、データ連携の自動化や標準フォーマットの導入を進めることで、決算業務の効率化を図れます。
関連記事:新しい会計システムに乗り換えるタイミングとポイント
決算早期化を実現するためのポイント
決算早期化を実現するためには、業務の見直しと効率化が欠かせません。
以下の4つのポイントを押さえることで、決算業務のスピードと精度を向上させることが可能です。
ポイント①業務の棚卸を実施する
まずは、決算業務に関わる作業をすべて洗い出し、現状を把握しましょう。
具体的には、誰が・いつ・何をしているのかを整理し、それぞれの作業にかかる時間や負担を確認します。
業務の棚卸を行うことで、無駄なプロセスや非効率な作業を明確にし、改善の方向性を検討しやすくなります。
長年見直されていない業務フローを最適なプロセスへと改善することが、決算早期化を実現する第一歩です。
ポイント②決算プロセスを見直す
棚卸した内容をもとに、決算業務のプロセスを見直し、効率化を図ります。
すべての工程を一度に変更すると混乱を招くため、段階的に見直すことが大切です。
効率化を図る施策には“複数人が関与する業務の流れをシンプルにする”“手作業をデジタル化する”“各部門への情報提供を早める”などの方法があります。
また、変更内容を関係者に事前に周知し、必要に応じて研修を実施することで、スムーズに移行できます。
ポイント③書類の提出期限を早める
決算業務を迅速に進めるためには、経費精算書類や請求書などの提出期限を早めるのが効果的です。
提出期限を早めに設定することで、決算に必要なデータを早期に確定でき、全体のスケジュールを前倒しできます。
ただし、単に締め切りを早めるだけでは、従業員の負担が増え、業務の質が低下する可能性があります。
そのため、書類フォーマットの統一やペーパーレス化、経費精算システムの導入などをあわせて、負担が軽減するよう工夫しましょう。
ポイント④会計システムを導入する
会計システムの導入は、決算業務の効率化に大きく貢献します。
データの自動集計や仕訳の自動化により、手作業を減らして人的ミスを防げます。
また、経費精算システムや請求書管理システムと連携すれば、データの入力作業を削減し、決算業務全体のスピードアップが可能です。
会計システムを選定する際は、操作性や拡張性、セキュリティ面を考慮し、自社の業務に適したものを選ぶことが重要です。
次項では、業務の効率化に役立つおすすめの会計システムを紹介します。
決算早期化に役立つおすすめの会計ソフト
先述の通り、会計システムの導入は業務を効率化し、決算早期化を実現するために欠かせないツールです。
今回は、多くの企業におすすめできる会計ソフトを2つピックアップしました。
マネーフォワード クラウド会計
【マネーフォワード クラウド会計の特徴】
- 最新機能の自動アップデートに対応している
- 2,300を超える金融関連サービスと提携している
- 他社サービスからデータが移行できる
マネーフォワード クラウド会計は、ソフトのインストールが不要なクラウド型の会計ソフトです。
消費税増税や法改正に伴う自動アップデートに対応しているなど、便利な機能を有しているにもかかわらず、初期費用は0円となっています。
「できる限り費用を抑えて会計ソフトを導入したい」とお考えの企業様に最適です。
マネーフォワード クラウド会計の基本情報
料金(月額) |
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契約期間 | 1ヶ月~ |
基本機能
(ビジネスプランの場合) |
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導入事例 |
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freee会計
【freee会計の特徴】
- 1回の入力で請求書発行や仕訳作成が完結できる
- 直感的で使いやすいUIが経理作業をサポートしてくれる
- 最新の法改正に常に対応している
経理業務に不安を感じている場合は、freee会計がおすすめです。
freee会計では、“freee認定アドバイザー”である会計事務所に、業務を相談できる制度が用意されています。
freeeのコーディネーターによって、企業の希望に沿ったアドバイザーを紹介してもらえるため、業務が効率化すること間違いなしです。
freee会計の基本情報
料金(月額) |
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契約期間 | 要問い合わせ |
基本機能
(スタンダードプランの場合) |
※機能に一部制限あり |
導入事例 |
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ボトルネックを解消し決算早期化を実現すれば、多くのメリットがある
本記事では、決算早期化のメリットやボトルネックとなる課題を解説しました。
決算早期化が叶えば、経営判断を迅速に行い、企業の競争力や成長性を高められます。
そのためには課題を一つずつ解消し、決算業務を効率化しなければなりません。
業務の改善方法としては、会計ソフトを導入するのも一つの手です。
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