スタートアップ企業における経理業務の注意点を解説
会社を設立したばかりのスタートアップ企業においては、事業の成功に大きく影響するバックオフィス業務の整備が不可欠です。
特に、自社の資金管理を担う経理業務は、慎重に遂行していきたいところでしょう。
そこで本記事では、スタートアップ企業の経理担当者が押さえておきたい、経理業務の注意点をお伝えします。
自社のさらなる飛躍を視野に入れつつ、経理業務の地盤をしっかりと固めたいご担当者様はぜひご一読ください。
スタートアップ企業の経理業務の注意点
ではさっそく、スタートアップ企業の経理業務で担当者が注意しておきたいポイントを見ていきましょう。
【スタートアップ企業の経理業務の注意点】
- 仕訳作業はこまめに行う
- 現金の利用履歴を残しておく
- 給与の支払いは正確に行う
以下でお伝えするのは経理業務の基本とも言える内容ですが、スタートアップ企業においては決して軽視できません。
ここで改めて確認していただき、堅固な経理業務の基盤を築くためにお役立てください。
注意点①仕訳作業はこまめに行う
スタートアップ企業の経理業務では、仕訳作業をできるだけこまめに行い、正確な数字を記録していくことが大切です。
売上を伸ばすための活動に注力しがちなスタートアップ企業だからこそ、経営状況の見通しを良くする意味でも定期的な仕訳を心がけましょう。
仕訳作業では、企業活動で生じた取引を、資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループに分けて記録します。
仕訳によって処理された取引は、損益計算書や貸借対照表などの決算書にまとめられるため、仕訳作業は企業運営の要ともいえるわけです。
この仕訳を定期的に行わずに時間が経過すると、そのぶん取引伝票が溜まってしまうので、これを分けるのに手間がかかるのは自明でしょう。
また、それぞれの詳細を調べ直すのにも相応の時間を要しますし、ミスを誘発するリスクも高まります。
これらを踏まえると、自社の経理の実態を見失わないためには、定期的な仕訳作業が欠かせないのです。
注意点②現金の利用履歴を残しておく
自社の銀行口座から現金を引き出して使用した場合、その利用履歴は必ず提出するよう社内に周知しておかねばなりません。
支出したお金の使用用途や金額などの具体的な内容が確定しなければ、経費として認められないためです。
現金の使い道が不明、つまり勘定科目でいうところの“仮払金”の状態だと、会社の資産として計上することとなります。
しかしこれは一時的なもので、決算までに内容を確定させて、しかるべき勘定科目に振り分けて計上する必要があります。
つまり、仮払金のまま残しておくことはできないのです。
現金の利用履歴が確認できる書類やデータを用意したうえで、用途に応じた適切な勘定科目に振り分けることを忘れないようにしましょう。
注意点③給与の支払いは正確に行う
従業員の給与は、所得税および復興特別所得税を差し引いてから、正確な額を支払ってください。
所得税とは、個人が得た所得に課される税金のことを指します。
一方の復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源に充てるため、2013年1月1日~2037年12月31日まで、所得税に上乗せして徴収される特別税です。
これらの税金は、従業員個人が納めるのではなく、給料を支払う企業が個々の給与から天引きして、代わりに国に納める必要があります。
正確な給与を支給するためには、このような税金の対応も必須というわけです。
関連記事:給与計算アウトソーシングの費用詳細・料金を抑えるポイント
スタートアップ企業における経理業務の選択肢
スタートアップ企業の経理業務を行う際の注意点は、把握できましたか?
ここからは、実際に経理業務を進める際の選択肢をお伝えします。
スタートアップ企業においては、すべての経理業務を自社で担うのか、税理士や外部の業者に任せるのかといった点を考慮して、適した方法を選ぶ必要があります。
【スタートアップ企業における経理業務の選択肢】
- 記帳・税務申告ともに自社で行う
- 記帳は自社で行い、税務申告は税理士に依頼する
- 記帳・税務申告ともに外部の業者に委託する
詳細な内容は、以下をご確認ください。
記帳・税務申告ともに自社で行う
経営者や従業員に十分な経理処理能力がある場合や、まだ売上規模が小さい会社であれば、記帳・税務申告ともに会計ソフトを使って自社で行うのが有効です。
会計ソフトとは、企業のお金の流れを管理するツールのことです。
これを使用すれば収入や支出の記録が容易になり、正確な財務状況を把握する際に役立ちます。
自社で経理業務を完結するのであれば、複雑な処理も効率的かつ正確に進められる会計ソフトは必須アイテムといえるでしょう。
税務申告の際にも、会計ソフトを使用することで多くのデータ入力を自動化できるので、ミスを減らして不備のない申告書類の作成が叶います。
なお、より詳細な会計ソフトのメリット・デメリットについては後述します。
関連記事:会計システムとは?具体的な機能や導入するメリットも解説
記帳は自社で行い、税務申告は税理士に依頼する
スタートアップ企業には、日常的な記帳は自社で行い、税務申告のみを税理士に依頼するという選択肢もあります。
煩雑な税務申告を、その道の専門家である税理士に委託することで、経理業務の負担を大幅に軽減できます。
経理業務のすべてを委託するわけではないので、費用もある程度抑えられるはずです。
「税理士のアドバイスのもと、合法的に節税対策を講じたい」「複雑な業務を任せてコア業務に集中したい」とお考えのスタートアップ企業には、うってつけの方法でしょう。
関連記事:税理士に依頼する際の費用相場は?費用が変動する要因も解説
記帳・税務申告ともに外部の業者に委託する
今後の事業成長を目指すスタートアップ企業の場合、会社の運営に関わる経理業務のすべてを外部の業者に委託する方法も選択肢に含まれます。
税理士に依頼するのも一案ですが、企業の経理業務を代行する目的の職業ではないため、せっかくなら経理のプロであるアウトソーシング業者への委託も検討してみてください。
経理業務に関わる豊富な知識を有するアウトソーシング業者に自社の業務を任せることで、業務の効率化を図れるだけではなく、生産性の向上にも寄与します。
スタートアップ企業だからこそ、プロの手を借りて自社の財務状況を整理すれば、正確な経営判断を下せるわけです。
ただし、税務申告には税理士が介入する必要があるので、経理業務のすべてを委託したい場合、税理士と提携しているアウトソーシング業者を選ぶのがおすすめです。
関連記事:記帳代行サービスに依頼できる業務は?おすすめの業者も紹介
スタートアップ企業が会計ソフトを利用する際のメリット・デメリット
先述したように、スタートアップ企業で盤石な経理体制を敷くためには、会計ソフトの使用が不可欠です。
起業直後は複雑な会計処理が発生しますし、会計ソフトは事業が軌道に乗ったあとにも役立つツールですので、導入を検討しているご担当者様もいらっしゃるでしょう。
そんなスタートアップ企業のご担当者様に向けて、ここからは会計ソフトを使用する際のメリット・デメリットをお伝えします。
会計ソフトへの理解をより深めるために、以下の内容をご一読ください。
会計ソフトを利用する際のメリット
会計ソフトを使用して記帳するだけで、専門的な知識がなくても損益計算書や貸借対照表などを簡単に作成できる点は大きなメリットです。
自動で集計されるため、経理業務の効率化につながるだけではなく、手入力で発生しがちな計算ミスや入力ミスを誘発するリスクも回避できます。
また、税理士に業務を依頼する場合と比べて、費用を安く抑えられるのもうれしいポイントです。
スタートアップ企業は特に、コスト面にシビアにならざるを得ませんから、少ない費用で大きな効果を得られる会計ソフトは導入する価値ありです。
関連記事:会計システムの導入にかかる費用相場とおすすめ会計ソフトを紹介
会計ソフトを利用する際のデメリット
事業運営において非常に有用な会計ソフトですが、その操作に慣れないと使いこなせない点はデメリットといえるかもしれません。
スタートアップ企業では、他部署の方が経理業務を兼任するケースが珍しくなく、専門的な知識を有していないこともあるでしょう。
そうした場合、せっかく会計ソフトを導入しても入力箇所を間違えることも考えられるため、訂正作業に時間をとられて業務効率が悪化してしまう可能性もあります。
とはいえ、なかには初心者でも直感的に操作できるインターフェースを採用し、見やすいレイアウトを組んでいる会計ソフトもあるので心配は無用です。
使いやすさに重点を置いて会計ソフトを選ぶことで、将来的に長く使用できるものが見つかるはずです。
スタートアップ企業の経理業務とキャッシュフローの関係性
経理業務とキャッシュフローの関係性は深く、特にスタートアップ企業では重要な事項でもありますので、ここで詳しくお伝えします。
事業の拡大を目指すスタートアップ企業では、資金ショートに注意しながら会社を運営していく必要があります。
日々の支払いに充てる資金が尽きれば会社は倒産してしまうので、事業者からすると一番の懸念材料といえるかもしれません。
とはいえ、今後の自社の成長、ひいては将来の大きな利益のためには、多額の投資もやむを得ない状況になる場合もあることでしょう。
一見矛盾しているようにも思えますが、これは経理業務の適切な遂行によって成り立っているのです。
投資を続けて一時的に赤字となっても、経理業務を正確に進めていけば、自社の資金のボーダーラインが見えてくるはずです。
これに沿って計画的に資金を調達することで、無理のないキャッシュフローを確保できます。
スタートアップ企業の経理業務では、こまめな仕訳と適正な現金管理を心がけよう!
今回は、スタートアップ企業における経理業務の注意点をお伝えしました。
スタートアップ企業の経理業務においては、こまめな仕訳の徹底や適正な現金管理、従業員への正確な給与の支払いを、不備なく遂行するよう心がけてください。
また、経理業務を効率的に進めるためには、会計ソフトを使用するのが有効です。
複雑な経理業務でも正確に行えるので、起業したばかりの会社であればなおのこと、導入しない手はありません。
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